戦場のFrohe Weihnachten.(英×独)

季節外れで10月の投稿ですが、ずっと書きたかったアサルークリスマスネタです。
0
ツイ引退しました @artlu819

ある年の12月24日、戦場にて  独「今年も戦場でクリスマスか…寂しいものだな。」 「おい、クラ…いけね、ラディック!何もしねーから顔出せ!」突如、呟くルートヴィッヒの背後から戦場では聞き覚えのある男の声が聞こえる。 独「何だっ!」ルートヴィッヒは、銃を声の主へ突きつける。

2013-10-09 20:50:58
ツイ引退しました @artlu819

英「お前物騒だな…銃を下ろせ!今日だけは戦うのやめねぇか?」銃を突き付けられた主は、両手を挙げて応答する。 独「カークランドか…全く、何を企んでいるのだか。」彼が何も持っていないことを確認すると、渋々と持っていた銃を下ろす。 英「よし、良い子だな。」

2013-10-09 20:55:16
ツイ引退しました @artlu819

すると、カークランドと呼ばれた男はすぐ傍にある茂みを足で探り始めた。…そして。 『ゴッ!』 独「…痛っ、貴様…何をする!やっぱりそれを企んで…」 英「だから企んでねーっての!…その、今日はクリスマスだろ。戦場だってそれは同じだ…まーなんだ、ここにサッカーボールが一つあるんだよな」

2013-10-09 21:00:24
ツイ引退しました @artlu819

ルートヴィッヒは懐から懐中時計を取り出し、時間を確認する。…時刻は0時を1分程回ったところだ。 独「お前…まさか、この時間をずっと待っていたのか?」 英「! いや…ま、まあ…その通りだ。お前にサプライズだと思ってだな…その、やんのかやらねーのかどっちだ?答えろよ。」

2013-10-09 21:05:13
ツイ引退しました @artlu819

カークランドからの言葉を受けて、ルートヴィッヒは不敵な笑みを浮かべる。そして、自分の足元に落ちたボールを拾い… 『ドゴッ!』 英「い゛でっ!?…おい、今のはやりすぎだろ!バカッッ!!」 独「さっき俺にも顔面にボールを当てただろう、その仕返しだ。」 英「あれは積年の恨みだ!」

2013-10-09 21:10:06
ツイ引退しました @artlu819

独「なんだ、誘っておいてもう終わりか?早くボールを返してくれ。」 遊ぶことにノリ気になったルートヴィッヒを見て、カークランドは安堵の表情を浮かべる。 英「ばーか、これはサッカーだぞ。返してほしけりゃ俺から奪え!」 独「…望むところだ。」 そして二人は戦場を走り出す。

2013-10-09 21:15:20
ツイ引退しました @artlu819

英「なぁ、サッカーやりながら少しお互いの話でもしよーぜ!」 カークランドは、ボールを膝に乗せながら話し出す。 英「あと、今日だけは俺達は友達だ!いい加減ファミリーネームで呼ぶのはやめろよな。」 独「分かった…アーサー。出来れば俺の方も呼び方を変えてくれると嬉しい。」

2013-10-09 21:19:07
ツイ引退しました @artlu819

英「…そーいや、お前ってそっちでは何て名前だったか?」 独「"ルートヴィッヒ"だ。」アーサーに追いつき、ボールを狙いながら答える。 英「…おっと、それじゃあ今日だけ、お前の呼び名は"ルイス"で決定だな。…ははっ」 "ルイス"と分かり合えた喜びにアーサーは自然と素直に笑う。

2013-10-09 21:23:54
ツイ引退しました @artlu819

英「…あっ、くそ…とられたか!」 ルイスは、アーサーが油断した一瞬の隙をついてそのボールを奪い取る。 独「どうやら、今度は俺の番のようだな。」形勢が逆転し、二人はまた反対方向に走り出す。

2013-10-09 21:26:21
ツイ引退しました @artlu819

英「…はっ…、そういや、お前の所の料理って結構うめぇのか?ソーセージとキャベツの漬物があるんだっけか。お前んちで食べたことないから気になっててな。」 これまでに何度もアーサーは"クラウツ"という蔑称を使ってきたが、そういえば実際には食べたことがないのだという事を思い出す。

2013-10-09 21:31:09
ツイ引退しました @artlu819

独「ああ、ビールとは特に相性がいいぞ。…そういうお前の所の料理は何かあるのか?」 逆に質問を返されたアーサーは早速返事を考える。…しかし、次の瞬間に彼は少し浮かない気持ちになる。 独「?…どうした?」 英「…あ、ああ…フィッシュアンドチップスならエールにぴったりだぞ……」

2013-10-09 21:36:08
ツイ引退しました @artlu819

アーサーはこの質問をした事を少し後悔し始める。この流れなら、他の料理の話題にもなるだろう。しかし、アーサーには致命的にそのレパートリーがないのだ。本人ですら、他に腕に自信のある料理と言えば「カレー」ぐらいである。 独「なんだか顔色が優れないぞ?」 英「エールは…うめぇよな…?」

2013-10-09 21:39:57
ツイ引退しました @artlu819

変な調子で話を続けるアーサーに、ルイスは少し戸惑うが、「そうだな…俺もビールは家ではよく飲む方だ」とボールを足で蹴りながら受け答えをする。 英「それなら今度一緒に飲めそうだな!…あ、けどこの前アルフレッドに注意されたんだっけか…」 墓穴その2である。

2013-10-09 21:44:43
ツイ引退しました @artlu819

アーサーの走るペースが下がり、二人の距離は徐々に大きくなる。 独「その…お前も、酒癖とか…悪いのか?…俺もそうらしいのだが。」 ルイスは仕方なくアーサーの目の前に戻り、話を合わせようとする。 英「え…おい、お前もだったのか…?」 独「あー…大体俺はよく覚えていないのだが。」

2013-10-09 21:49:07
ツイ引退しました @artlu819

突如、アーサーは顔を上げ、軽やかになった動きで目の前のボールを奪い取る。 独「…あ…」 英「ははははっ、マジかよ!お前が酔いどれた姿とか全く想像できねーだろ!」 そして逆方向に走り、アーサーは得意げな顔でこちらへ向き直る。 英「だったら、尚更飲みにいかねーとな。」

2013-10-09 21:52:58
ツイ引退しました @artlu819

ようやく話が弾むようになった二人は、当たり障りのないように気を付けながらお互いの話を交換する。休日になるとお菓子を作る事、裁縫をする事、庭に草木や花を植えてそこでのティータイムは最高だという事…お互いに趣味を理解することがこの上なく楽しく、気づいた時には空には日が昇り始めている。

2013-10-09 21:58:43
ツイ引退しました @artlu819

英「…はあっ…ふー、お前ってイカついだけの奴だと思ってたが、意外と可愛いところもあんだな。」 独「…お前こそ、暗くて湿気たイメージが強かったが、楽しそうな趣味を持っていて…とても興味深い。」 英「…ったく、暗くてじめじめは余計だっての、ばかぁ。」 

2013-10-09 22:02:39
ツイ引退しました @artlu819

体を動かすことに疲労を溜めたアーサーは、そのまま草原の上で仰向けに倒れ込む。 英「あ――ちっきしょ~お前なんかには絶対負けねぇのに!」 クリスマスサッカー試合の結果はアーサー側の惨敗だった。 独「スタミナの温存は基本の事だろう。」息の上がったルイスは、困り顔で見つめてくる。

2013-10-09 22:07:58
ツイ引退しました @artlu819

英「来年の俺達は、どんな馬鹿な事をやってんだろうな…」 アーサーは、心配そうに見つめてくる彼に対し、大丈夫だという清々しい笑顔を見せる。 独「ふむ、来年か…おそらく、フェリシアーノの世話だろうな。」 英「こんな時でもあいつの話題かよ…お前ら熱々だな。」

2013-10-09 22:12:31
ツイ引退しました @artlu819

独「…一応言っておくが、俺とあいつはそういう仲ではないぞ……時々それが理解できないこともあるが。」 そう言うと、ルイスは伏し目がちになり、照れたような顔をする。 英(チッ、そういえばこいつってあのヘタレの話をする時だけはこんな顔するよな…)「ああ、そうかよ…馬鹿。」

2013-10-09 22:16:41
ツイ引退しました @artlu819

ふとアーサーの脳裏には、この戦が始まる少し前の記憶が蘇る。 英(そういえば、こいつは…俺の自慢の花束を受け取ってはくれなかったんだよな…) 仲良くなりたい、そんなありったけの気持ちを込めて厳選して包み込んだ、自慢の薔薇の花束…諦めずに何度も挑戦すれば、貰ってくれたのだろうか。

2013-10-09 22:21:08
ツイ引退しました @artlu819

思えば、この花束を断られたときからこいつの事が気になっていたのかもしれない。…今のような照れた柔らかいその表情で受け取って欲しかった、喜んでもらいたかった…。思えば、今日このサプライズを仕掛けたのも、そんなルイスに近づきたかったからなのだ。

2013-10-09 22:24:39
ツイ引退しました @artlu819

けれど、まだいがみ合いの少なかったあの頃と、今は全く違う。たとえ、この時間で仲良くなれたとしても、明日にはまたお互いに憎しみ合う日々が続くのだ。今のルイスの隣には、あのヘタレ野郎しかいない。きっと、自分には彼の隣にいられるチャンスなど永遠に回ってこないのだ。

2013-10-09 22:28:46
ツイ引退しました @artlu819

ふと、そんな大きな悔しさがアーサーを襲い、目から涙がこぼれ出す。 独「…アーサー?何故泣いているのだ…?」 英「っ、ちげ…泣いてなんかいねーよ。…これは疲れで目から汗が出てきただけだ…バカ。」 アーサーは零れてくる涙を見せないように顔を反らし、服の袖でそれを拭い取る。

2013-10-09 22:32:55
ツイ引退しました @artlu819

英「その、だな……今日のせいで気づいちまったんだよ…俺は、ただお前の傍にいたかったんだ…今の俺にはそんな権利がないことぐらい、分かってんのにな。」 普段は物事を素直に伝えられないアーサーだったが、この時だけは何でも言える気がした。アーサーは振り返り、ルイスの頬を下から触る。

2013-10-09 22:37:21