高３有志一同が行う「One for All」

よんてんごP @yontengoP

朝の高校生版半沢直樹の文化祭演劇に絡んで思い出したので。 前職の仕事柄、各校の文化祭とかには行くんだけど、ある高校の文化祭で見た演劇は強く記憶に残ってる。 タイトルは「One for All」。 行うのは「高３有志一同」。

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有志だし高３の受験受かった連中がﾃｷﾄｰにやるのかとおもいきや、何と驚きの参加者100数余名。おそらく学年のほとんどが参加している人数だった。 しかし、演劇が始まって舞台に立っているのは、1人。最初から最後まで、たったの1人。

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演劇のあらすじはタイトルにふさわしく、「一人の青年が一人では解決出来ない問題に仲間とともに打ち勝っていく」という筋。 しかし百数余名はどこへいったのか、と訝しむ私の前で、舞台は無事終幕を迎えた。 しばらくして、再び幕が上がった。

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先ほどまで舞台の脇を隠していたベニヤ板が外された。 そこに、かの百余名たちは立っていた。声を潜めて。 その舞台は、一人の役者と、百数余名の裏方による舞台だったのだ。 目を見張る私の前で、舞台の上のたった一人の役者は「もう一度やります、ご覧ください」と告げた。

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ベニヤの仕切りがなくなり、裏方たちを照らすスポットライト。 主役が舞台袖にはける度に、ある生徒は彼の衣装を外し他の生徒が次の衣装を着せ、さらに他の生徒が次の小道具と大道具を並べ直しその間に誰もいない舞台に空の背景が用意され、鳥の人形が飛び回る。 裏方たちは必死で舞台を支えていた。

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それはまさしく「One for All」であった。 高校生の、それも素人の文化祭演劇でここまでの意欲的なものが見られるとは、私は期待もしていなかった。

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きっと反対する先生もいただろうし、我が子の晴れ姿を見に来た保護者にとってはあまり面白い舞台では無かっただろう。 それでも、あの舞台を見て「一人は皆のために」というテーマは最大限私を含めた観客の心に響いた。 裏方と主役が精一杯を出しきった本日二度目の舞台は喝采のうちに幕を下ろした。

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最後、カーテンコールの中で、裏方たちと役者が全員舞台に出てきて一列でお礼を述べていた。全員が主役の顔をしていた。本当に、いまだにその興奮を覚えている、そんな素晴らしい舞台であった。

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僕があの学校の後輩だったら翌年に「All for One」っていう百数余名が舞台に役者として出るのに裏方が一人しかいなくてついにキレて本番当日にいなくなって、役者たちはようやく裏方の大切さを知る、とかって言う柳の下のどじょうを当て込んだ劇やっちゃうなぁ。