ヒッグス場とは結局何なのか

ヒッグス粒子関係の解説を備忘録的にまとめました
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まずはよくまとまっている解説ページの紹介

シータ @Perfect_Insider

「ヒッグス粒子に出来ないこと」http://t.co/tOqAN5LREu ヒッグス粒子関係の「ありがちな誤解」に応える記事。また、場の量子論とヒッグス場の役割を数式なしで解説したページとしてはhttp://t.co/A1Xv7eBizhが分かりやすい。

2013-10-08 20:02:49
シータ @Perfect_Insider

ある程度物理の分かっている人向けには、ヒッグス機構や質量の話はこのスライドhttp://t.co/ARQMIp3W や解説http://t.co/61bdXX1q はわりとコンパクトにまとまっていると思う。

2012-07-21 23:27:02

ノーベル賞直後の解説

シータ @Perfect_Insider

「粒子は場である」という説明は、イメージとしては糸電話を考えると分かりやすい。片側から「ア!」と叫ぶと、糸が振動して反対側に伝わる。音の伝達には時間がかかるので「今、糸のどの位置に『ア』の振動があるか」を考えることが出来る。糸が場に、「ア」の振動が粒子に対応する。

2013-10-08 22:03:43
シータ @Perfect_Insider

糸(場)がなければ「ア」という音(粒子)は存在しえない。しかし、「ア」という音(粒子)を入れなくても静止した糸(場)だけは空間中に常に存在している。これが「ヒッグス粒子は至る所に存在する」で言いたかったことだと思う。でもこれは不正確で、正しくは「ヒッグス場は空間に広がっている」

2013-10-08 22:08:33
シータ @Perfect_Insider

では糸(場)の存在を確証したければどうすればいいか。音(粒子)を観測すれば「背景に糸(場)があること」が分かる。だから糸(場)をはじいて(加速器で巨大なエネルギーを加えて)、糸に音の振動をさせ(場に粒子を発生させ)ればよい。これがCERNでやっていたこと。

2013-10-08 22:12:07
シータ @Perfect_Insider

ヒッグスで言われている「質量」というのは、あくまでも「慣性質量」のことであって「重力質量」とは別物。「慣性質量」とは「運動の変化させにくさ」を表す量。例えばボーリングの球は重いほどスピードを出しにくい。これは(横向きの運動だから)重力は関係なく、慣性質量の問題になる。

2013-10-08 22:56:09
シータ @Perfect_Insider

一方、「重力質量」というのは「重力(万有引力)を作りだす能力」のこと。月の引力が地球より弱いのは、月の質量が小さいから。例えば「(電磁石の)磁力」の場合、流した電流が大きいほど、磁力が強くなる。万有引力の場合、質量が大きいほど、万有引力は強くなる。

2013-10-08 22:58:23
シータ @Perfect_Insider

そして「なぜか」、実験的に測ってみると、慣性質量と重力質量の値は一致している。この理由は現在の理論では不明。でも深い理由はあるのかもしれないが、ひとまず概念としては別。

2013-10-08 22:59:57
シータ @Perfect_Insider

「ヒッグスが質量を作った」というと、いかにもヒッグス場によって物質の質量はすべて与えられたかのように思えてしまうが、実際には電子やクォークなどのごくわずかな質量しか作っておらず、身近な物質の質量の95%以上ははQCD効果によって作られている。

2013-10-08 23:14:43
シータ @Perfect_Insider

ニュースや解説記事だけ見ると「ヒッグスがワインボトルの底のような、対称性を破る仕掛けを考えついた」かのように思えてしまうけど、そうではない。ワインボトルの底による対称性の破れの議論は、少なくとも南部さん(数年前のノーベル賞)の時点で議論されている話。

2013-10-08 23:38:20
シータ @Perfect_Insider

ワインボトルの中心にビー玉を置くと、底のどこかに転がり落ちる。そうすると、底の円に沿った方向にビー玉を押すと、どんなに弱く押してもビー玉は動きだす。これは素粒子の現象としては「質量ゼロの粒子が現れる」ことに相当する。ここまでは南部さん(とゴールドストン)によって分かっていたこと

2013-10-08 23:41:07
シータ @Perfect_Insider

しかし、実際の宇宙には、この機構で予言されるような「新たな質量ゼロの粒子」は存在しない。だからこの「ワインボトルの底」の議論は役立たずだろうと思われていた。ところがヒッグスは、この議論の設定を少し変えて、質量ゼロの粒子が現れないように出来た。これが「ヒッグス機構」。

2013-10-08 23:43:27

ここから過去のtweet

シータ @Perfect_Insider

ワインボトルの底のような形のポテンシャルを持つ自然なラグランジアンに対し、大域的ゲージ対称性を課すと質量ゼロの南部・ゴールドストンモードが出てきてこれは観察事実とあわない。しかし、局所的ゲージ対称性を課すと質量項を持つ方程式が得られる。これがヒッグス機構。

2012-07-07 19:48:20
シータ @Perfect_Insider

素粒子物理学のルールは「対称性のある(自然な)自由粒子ラグランジアンを考える」「微分は局所ゲージ対称性を満たすような共変微分に設定する」「共変微分に伴って自動的に出てくる場で、相互作用を決める」というもの。ヒッグス場は、この最初のラグランジアンのポテンシャルを工夫している。

2012-07-07 19:53:51
シータ @Perfect_Insider

ちなみにここで言っている「対称性」は空間の対称性ではなく内部対称性。イメージとしては「スピン」を考えればいい。あれも実際に何かが回っているわけではなくて、相互作用や交換の関係から定められているもの。スピンだと「上」や「下」があるが、これに「陽子」や「中性子」が対応する。

2012-07-07 19:57:16
シータ @Perfect_Insider

「質量を与える」というのは、あくまでも「質量項を持つラグランジアンを得る」ということ。最初から質量項があるとゲージ不変ではないので、ヒッグス機構が必要となる。質量項がないとポアソン方程式→クーロンポテンシャルしか出ないので、クライン・ゴルドン方程式→湯川ポテンシャルが出せない。

2012-07-07 19:59:33