モーサイダー!~Motorcycle Diary~Episode of Autumn II~

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IngaDo type-RR @mor_cy_dar

モーターサイクルダイアリー~Episode of Autumn II~ #mor_cy_dar

2013-10-19 21:37:08
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「それで? 結局今日はどうしてそんなに寝ぼけていますの?」 「ただの寝不足だよ。いつものことだろ」 「たしかに週の後半は眠そうにしていますけれど」 #mor_cy_dar

2013-10-19 21:37:28
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

 10月の初旬。  中間テストを翌週にひかえた昼休みの屋上は、心なしか参考書を広げている学生が多いように見えた。 #mor_cy_dar

2013-10-19 21:37:38
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「今日は日差しも柔らかいですし、最高の天気ですわね」 「夕方から崩れるみたいだけど、今はいい感じだよな」 #mor_cy_dar

2013-10-19 21:38:14
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

 ビニールシートを広げ、三鳥栖の兄妹と日原院の姉弟が四人で集まっている光景はいつものことである。  冬には耐えかねるほどの寒風が吹き付けるこの屋上も、今の季節は程よい涼しさに満ちている。 #mor_cy_dar

2013-10-19 21:38:23
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

(しかし、勉強しながらメシ食ってる奴が多いけど、集中できるもんなのかな……)   志智の疑問には理由がある。 #mor_cy_dar

2013-10-19 21:38:34
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「もぐもぐ……うわー、ここの代数よくわからないなあ」 「あ、これはね。あのね、こっち見て。こうするとね━━」 「そ、そうなんだ。やっぱり千歳ちゃんに教えてもらうと分かりやすいなあ!」 #mor_cy_dar

2013-10-19 21:39:16
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「………………」  目の前にサンプルが一人いるのだ。どう見ても集中できていない例が一つあるのだ。 #mor_cy_dar

2013-10-19 21:39:26
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「なあ、亞璃須(ありす)。お前の弟、成績悪かったっけ?」 「不肖の弟ですけれど、頭だけはいいですわよ。  南田磨にその制度があれば、飛び級してもいいくらいですけれど」 「ま~……そうだよなぁ」  #mor_cy_dar

2013-10-19 21:39:45
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

 ここを見ればよいと、千歳(ちとせ)が参考書のページへ指を伸ばす際に、すこし密着しすぎではないかと思う。  せっかく教えてもらっているのに、ティックの視線が千歳の横顔や胸元ばかりに向いているのも、大変気に入らない。 #mor_cy_dar

2013-10-19 21:40:05
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「うーん……でもここからあいつに水ぶっかけると、千歳にも被害が及ぶからなあ」 「……何を考えているのかは、なんとなく分かりますけれど。  志智こそ勉強はしっかり出来ています?」 #mor_cy_dar

2013-10-19 21:40:23
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「なんならわたくしが付きっきりで! そう、必要ならばあなたの部屋に泊まり込んで!━━手取り足取り教えてさしあげてもいいのですけれど?」 「思考が邪なのは姉弟いっしょらしいが、あにいくウチに三人で寝泊まりできるようなスペースはないぞ」 #mor_cy_dar

2013-10-19 21:40:35
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「あら残念。一度、志智の自宅は訪問してみたいのですけれど」 「何にもないし、何も出ないからな。言っとくけど」  念押しするように、人差し指を立てると、志智の脳裏には一つのイメージが浮かぶ。 #mor_cy_dar

2013-10-19 21:40:54
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

 それは亞璃須が、狭い我が家の玄関に立っている姿だ。  きっと空気も読まずにゴスロリでやって来るに違いない。 #mor_cy_dar

2013-10-19 21:41:11
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

 千歳だけは本当に喜んで、ささやかな手料理でも振る舞うのだろうが、そもそもテーブルに三人で座る方法がないので、志智だけが隅っこで立ち食いする羽目に陥ることは必然だ。 #mor_cy_dar

2013-10-19 21:41:23
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

 その後もすれ違うたびに苦労したり、部屋に押しかけられて勝手に片付けを始められたりするだろう……。 #mor_cy_dar

2013-10-19 21:41:28
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「……うーん、災害だ……」 「何を真剣に困ったような顔をしてるんです、志智?  いくらわたくしとあなたが運命の絆で結ばれているからといって、衣服や枕を勝手に持って帰ったりはしませんわ」 #mor_cy_dar

2013-10-19 21:41:42
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「スペアとかろくにないんだから、本気でやめてほしいな、それは」 「━━えっ? あの、亞璃須さん、ウチに来るんですか?」  中間テストのアドバイスタイムは終わっていたのだろうか、気がづくと不思議そうな顔でこちらを見ている千歳がいた。 #mor_cy_dar

2013-10-19 21:42:04
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

 ティックはなぜか赤面して、鼻息をはふんはふんとさせているが、無視していいだろう。 #mor_cy_dar

2013-10-19 21:42:13
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「いいえ、『もし』の話ですわ。志智からつれない返事をもらったところです」 「ううう、ごめんなさい。  ウチってすごく狭いから……お客さんを呼ぶとなると、誰か出ていないといけないんですよね……」 #mor_cy_dar

2013-10-19 21:42:35
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「亞璃須さんが来るなら、わたしが出かけていれば……あ、あのっ!  でもでも、おにいちゃんとそういうことは……ま、まだ早いと思うんです! わたしだって━━」 「それはない」 「それはいいですわね」 #mor_cy_dar

2013-10-19 21:42:50
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「ち、千歳ちゃんのウチに行けば二人っきり……そ、その手があったなんて……!!」  いくつかの声が交錯する。ヒヨドリがぴぃーよと鳴き、風に揺られたフェンスが軋む。 #mor_cy_dar

2013-10-19 21:43:02
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

 そこには、困ったように恥じらう少女が一人。とりつく島もない仏頂面で否定する兄が一人。  にんまりと微笑む姉が一人。そして、勝手に暴走する妄想にひたる少年が一人いた。 #mor_cy_dar

2013-10-19 21:43:24
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「まあ、それはそれとして。  志智の寝不足は何とかしないといけませんわね」 「混ぜっ返すなよ。別にいいだろ。今もなんとかなってるんだからさ」 #mor_cy_dar

2013-10-19 21:43:41
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「確かにそうですけれど、もうすぐ中間テストでしょう?  赤点連発で留年でもされたら、あなたの伴侶となるわたくしとしては困ります」 「なんでそういう話になるんだよ……」  ジト目で志智が睨んでも、亞璃須はなぜかドヤ顔で平らな飛行甲板を反り返らすだけだった。 #mor_cy_dar

2013-10-19 21:43:54