大川小学校 検証委員会の問題点

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林 衛 @SciCom_hayashi

大川小学校被災は,日本教育史上最悪の学校管理下の多数死亡事故だった。二度とこのような事態を繰り返してはならない,強い思いで検証を進めるべきだろう。以下ポイントメモ。 1)公正中立問題:教育委員会と住民とのあいだになにか対立があるから,その仲裁するかのような公正中立ではないだろう。

2013-10-20 21:16:47
林 衛 @SciCom_hayashi

1)公正中立問題(続き):子どもも先生も,少しでも早く逃げていたらみな助かった。「怖いから山さ逃げよ」と訴えた子どもたちもいたし,裏山への避難を提案した先生もいたが,結局,子どもたちをいさめて避難時期が遅れてしまったのだ。(続く)

2013-10-20 21:20:24
林 衛 @SciCom_hayashi

続き)「どうしていっしょに逃げてくれなかったんだ」との子どもたちの無念の思い,先生たちも「ごめんよ」と,もしも天国があればそう悔しい気持ちでいるにちがいない。ここにこそ「公正中立」の基準がある。その遺志をついで,聞き取りや情報収集を進めているのが遺族なのだ。

2013-10-20 21:24:20
林 衛 @SciCom_hayashi

2)検証委員会の調査の進み方:遺族が調べてきた域にまだまだ達していない。ひいき目にみても5,6割といってよい。真実を知りたいと知縁,土地勘をもって集めた情報に耳を傾ければよいのに,「遺族に寄り添う」といいながら,遠回りの調査をしているから,検証委員会は遺族に追いつけないまま。

2013-10-20 21:27:21
林 衛 @SciCom_hayashi

3)マスコミ,記者によるウォッチング:検証委員会ができる以前から追いかけてきているメディア関係者は,検証委員会の至らなさに気づいている。本日の委員会終了後の記者会見でも,鋭い質問が飛んだ。ただし,子どもたちの証言を事実認定しようとしない(遅れている?)など検証以前の疑問ばかり。

2013-10-20 21:30:13
林 衛 @SciCom_hayashi

4)自然災害の人災的側面:阪神・淡路大震災のときに,関西被災地の研究者とともに『科学』特集や連載,関連書籍づくりをしながら,たどり着いた概念が,室崎益輝委員長の口からでた。「自然災害なのか人災なのか」との数見委員の発言に対し,人災的側面を明らかにするのが重要なのだと。

2013-10-20 21:32:46
林 衛 @SciCom_hayashi

自然災害の「人災的側面」(あるいは人間・社会的条件)を,どうやって明らかにするのか。まずは,後知恵,結果論でもよいので,できたはずなのにできなかった内容を洗い出して,ほんとうにできなかったのか,それはなぜなのか,検証するのが重要だろう。その一つが,歴史津波を生かせなかった点。

2013-10-20 21:35:44
林 衛 @SciCom_hayashi

5)歴史津波の教訓:住民の意識が低かったので,被災は仕方なかったかのように事実を選んだ報告が本日検討された。どの地域でも,急ぎ逃げた人もいれば,逃げるのが遅れた人もいた。そのちがいの原因はなにか。歴史津波を見誤った要因は大きい。それを住民のせいにしてしまうのは,無責任極まりない。

2013-10-20 21:38:01
林 衛 @SciCom_hayashi

明治三陸のときの記録が限られ,被災家屋が少ないとか,当時の地形図上に示された浸水域が限られているなどとあるが,ほんとうにそうか。今回の解析によると,北上川沿いの細い奥まった地形の効果で津波のエネルギーが集まる場所に大川小学校があったという。(続く)

2013-10-20 21:41:26
林 衛 @SciCom_hayashi

当時の地形図上に示された浸水域をその目で見直してみたら,浸水域の記入は沿岸沿いに確かめた範囲だけを記入していることにきづく。ほとんど平らな地形で,明治三陸の津波の進行がぱっと止まるわけがない。証拠が記録されていない=津波がこなかった,ではないのだ。そこを見誤っていたのだ。(続く)

2013-10-20 21:44:00
林 衛 @SciCom_hayashi

氾濫原の沖積平野に,過去に洪水や高潮や津波が到達していないと考えるほうがおかしい。むしろ,そういう場所なので,土地利用が遅れ,記録が限られているとみるべきだ。そうすると今回の解析結果がうまく説明できる。つまり住民の意識の低さに要因を求めるならば,おおもとは津波予測の失敗なのだ。

2013-10-20 21:46:45
林 衛 @SciCom_hayashi

見落としがちなところで見落としてしまったのだからこそ,教訓とすべきだろう。もしも,検証委員会に津波専門家が参加して,ただたんに住民の意識の低さのせいにするのであれば,それは自己弁護,無責任のための参加だというしかない。専門性を生かしながら,きちんと検証していくポイントだろう。

2013-10-20 21:49:21
林 衛 @SciCom_hayashi

6)あいまいな証言記憶とケアの問題:ここも,いいわけのためではなく,教訓・検証の,真実性,信頼性(検証可能性)の両立,生活復興(PTSDからの回復,地域の分断解消含む)のために専門性を活用する重要なポイントだろう。 もうじき富山に戻る夜行バスの時間なので,いずれまた。

2013-10-20 21:52:52
林 衛 @SciCom_hayashi

大川小学校検証委員会,匿名性の扱い方も問題が大きい。名取市の閖上の検証委員会と比べても,何もかも匿名。その結果,1)誰の証言なのかだけでなく,どのように誰が集めた情報なのかが不明,2)情報の取捨選択がすべて検証委員会に任され,その基準も不明,そのため,(続く)

2013-10-20 22:17:04
林 衛 @SciCom_hayashi

続き)そのため,3)検証の信頼度が落ちる,4)証言したのに採用されなかった当事者への心的被害の可能性(PTSD悪化)といった問題が生じる。 同じような事態(いってみれば,匿名性を盾に被害者を守る)は,大学のハラスメント防止委員会とか情報公開でもみられる。(続く)

2013-10-20 22:20:06
林 衛 @SciCom_hayashi

続き)そうなる理由は,誰のため,何のための検証なのか,すなわち最初に述べた,公正中立問題に端を発している。 公開を望む証言者,専門性に責任をもつための専門家など,実名にしたほうがよいところは,検証の真実性,信頼性,ケアのためにも実名にできるようにすべきだろう。

2013-10-20 22:23:01
林 衛 @SciCom_hayashi

歴史性をもった地学現象の解明はつねに発展途上。最大級の津波,地震像の復元は,必然的に過小評価になりやすい。ていねいに調べても,取りこぼしがありうることを肝に命じないと。低線量被曝も似ている。「みつかっていない」からといって,「ない」と決めるつけるのは早すぎないかどうか要注意。

2013-10-20 22:27:33
林 衛 @SciCom_hayashi

@tigercatver2 今日傍聴してきた検証委員会も,なんだかそんな感じです。ずーっと追いかけ続けてきた記者さんやご遺族からみたら,みえみえの誘導論理に沿って,都合よく事実が集められている,匿名性が悪用されているとしか思えないのですよね。まずいと気づいている委員もいるはず。

2013-10-20 22:35:20
@tigercatver2

@SciCom_hayashi 大川小ですね。連ツイ拝読させて頂きます。

2013-10-20 22:38:51
林 衛 @SciCom_hayashi

@tigercatver2 人間って,意見の対立をみたらバランス感覚とか,権威とか感情的かどうかとか,簡便な方法でなかとりがちなようです。だから,大川小の検証の問題点もぱっとみわからないまま,「なんかもめてる」と思ってしまう人も多い。

2013-10-20 22:48:31
林 衛 @SciCom_hayashi

@tigercatver2  私の場合,「倒木で山に登れなかった」と聞いていたが現地でみたら木はとくに倒れてないぞ,なんか変だぞと気づけた。その後,加藤順子さん,池上正樹さんのお仕事で,問題点を知り,現地でご遺族のお話を聴いて,くわしくかつ筋が通っているのを確認。

2013-10-20 22:50:56
林 衛 @SciCom_hayashi

@tigercatver2 検証委員会を傍聴してみたら,おかしさがどんどんみえてくる。委員長の室崎さんとは『科学』でいっしょに阪神・淡路大震災の教訓を引き出す取り組みをした。その方が,苦戦しているというか,はまってしまっているのをみて…。という流れで,実態を把握できました。

2013-10-20 23:00:48
林 衛 @SciCom_hayashi

@tigercatver2 その一方で,大学で教員養成にかかわっていると,学校教育界における形式主義の強まりが実感できて,これじゃこうなるよなあと,つながってみえてしまう。説明不足で申し訳ありませんが,ちょっと絶望的なのです。ご遺族や記者さんたちの頑張りに勇気づけられてます。

2013-10-20 23:04:35
リンク JBpress(日本ビジネスプレス) 科学研究の問題点:科学はどこで間違えるのか:JBpress(日本ビジネスプレス) 科学を支えているのは、「信用せよ、だが検証せよ」というシンプルな考え方だ。研究結果は、常に実験による検証を受けなくてはならない。そのシンプルだが強力な考え方が、膨大な量の知識を生み出してきた。17世紀に登場してからというもの、現代科学はこの世界を見分けがつかないほど、しかも圧倒的に良い方向に変えてきた。
林 衛 @SciCom_hayashi

「成功は時に自己満足を生む。現代の科学者は、過剰に信用しすぎる一方で、検証作業は十分に行わない。それが科学全体に、そして人類全体に損失をもたらしている。」 科学研究の問題点:科学はどこで間違えるのか http://t.co/LHnGFxt1xP

2013-10-21 05:36:51