「うそつきパラドクス」担当編集者によるおもいで話

白泉社マンガ編集O野木 @ya_onogi

【うそパラ第1話おもいで①】あいらんど誌読切で好評を得てYA本誌連載へ向けネーム打合せ。ネーム第1稿は掲載のものとほぼ同じだったと思うが、最初に拝見した印象はちょっと暗い？重い？感じだったと記憶。当時はそれが何でなのか自分でもわからず、やたらめったら思うことばかり先生方に伝えた。

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【うそパラ第1話おもいで②】具体的な指示が全くできなかったと記憶。その無闇やたらな僕の話をただ聞く先生方。数日後、直しネームはとてもエッチでどきどきしてしまいながら切なくてぎゅうっとなるものになっていた。大きな変更は1つだけ。栖佑さん「でもエッチしちゃったら壊れちゃう」の大ゴマ。

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【うそパラ第1話おもいで③】栖佑さん「でもエッチ――」のコマははじめ、セリフは全く同じだけど、栖佑さんと八日堂が体を起こしながら向かい合ってるちょっとロングのツーショット。でもふたりはシルエットっぽくなってて、別れ・繋がれない・断絶といった印象だった。それが前述の暗さ重さだった。

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【うそパラ第1話おもいで④】それを栖佑さんのあお向け開放OP挿入直前風赤面伏し目がち困り顔だけど本音は私もこのまましちゃいたいという気持ちが見える絵に変更されていた。たったそれだけ、たったそれだけで、印象はガラリ、だった。あの僕の話から要点と解決策を導き出す先生方の力にバビった。

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【うそパラ第1話おもいで⑤】あとカラー原稿を頂いた時、ああいう加工の背景絵を全くイメージしておらず、もっと「普通」の背景がいいと思ってしまった僕は、「もっと普通の絵にして下さい！」と言った。あれは言いながら自分で「普通って何だ…」と思った。そして作家さんを大変嫌がらせた言葉だ。

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【うそパラ第1話おもいで⑥】カラー、今では大好きです。たぶん当時も好きだったんだけど、想定してなかったからびっくりしてうろたえたんだと思う。おろか…。第1話、好きな1コマは序盤の八日堂がちくちく栖佑さんを責める所と栖佑さん「ヘンなの」とラストのエレベータ内の一連のシーン。

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【うそパラ時間外１おもいで⑦】そういえば、単行本のオビの折返し部分（表4側）にその巻の1シーンを載せてるんですが、あれはその巻の中で僕が一番好きなコマです（笑）

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【うそパラ第2話おもいで①】冒頭、丸悦さんとの会話が大変秀逸な回。丸悦さんの発言は全て真っ当なのに対して、八日堂の発言は全て栖佑さん向けなのに、全て丸悦さん向けと取れるのが素晴らしい。いま気付いたけど、発言だけじゃなく八日堂の表情も両方に取れる(いま気付いたのかよ)。

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【うそパラ第2話おもいで②】例えば会話「別にたいして意味なんか～へぇ～考え込む」栖佑さん向け→栖佑さんの週末を確認する不安な八日堂～やっぱりウソだった「へぇ」～ショック。丸悦さん向け→デート誘おうと緊張してぶっきらぼう～予定ないんだよし！「へぇ」～デート誘うの緊張で躊躇う。とか。

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【うそパラ第3話おもいで③】部屋着だから絶対来ないでといいながら、八日堂の家の近くのビデオ屋にいることを色んな理由つけてわざわざ電話する栖佑さんが果てしなくかわいい。

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【うそパラ第3話おもいで④】ほんとに自分の近所のビデオ屋にそのソフトなかったのかも怪しいし、だったら隣駅ぐらいの店行けばいいし、八日堂の家近くまで来る意味がない。しかし部屋着で七本木駅まで来るとは豪気な栖佑さん。実は着替えた外出着を駅のロッカーに保管したと予測。

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【うそパラ第3話おもいで⑤】AVコーナーでの栖佑さんのリアクションがまた素晴らしい。AVコーナーにいることやAVを選ぶことへの恥ずかしさより、やっぱり来ちゃった(しかも多分かなりすぐに)八日堂への恥ずかしさが圧倒的に上だと推測。

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【うそパラ第3話おもいで⑥】また八日堂が見せたAVのコが全く可愛くなくほんとに栖佑さんに似てないし八日堂の趣味っぽくない。タイトルも含め(笑)。しかし胸がほんとに似てるというから八日堂お前この女優のAV3～4本持ってて全部栖佑さん変換して見てるだろ好きになった3年前から！

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【うそパラ第3話おもいで⑦】栖佑さんの胸ちゃんと見たのこないだなのに想像で近似胸当てるとか怖いよ八日堂。そしてまた八日堂の妄想膨らむAV借りちゃう栖佑さん天才。好きな１コマは八日堂「マジすか!?」と後半「きっ！」となったサメみたいな栖佑さん。

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【うそパラ第3話おもいで⑧】しかし連載2話目で当て馬の丸悦さんとフラグ立てさせるのは大変スピーディで驚いた記憶。それがうまく展開と絡んでいる(八日堂が栖佑さんへの想いを募らせる装置になっている)ので唐突感なく読めるのですね。装置扱いの丸悦さんナイスです。

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【うそパラ第3話おもいで①】第2話で八日堂を盛り上げる装置として活躍した丸悦さんが、今度は栖佑さんを盛り上げる回。丸悦さんの装置ぶりがまたいかんなく発揮されていてとても楽しい。また大栄さんに秘密がバレるという展開が「どうなるんだ！？」という気持ちをくすぐる。

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【うそパラ第3話おもいで②】秘密を知った大栄さんのリアクションが非常に大人。大栄さんは出番こそ少ないが、この後もすごくいい役割を果たし続けてくれる。「うそパラ」の世界の幅を広げてくれた人だと思う。

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【うそパラ第3話おもいで③】第3話にして栖佑さんの手コキ発動。この回を読んで「この漫画……ちょっと目が離せないぞ。雑誌で連載追いたい」と思ってくれたのではないだろうか。僕も大変衝撃的だったし特に大好きな回のひとつです。

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【うそパラ第3話おもいで④】手を洗ってる栖佑さんに、現実の生々しさと漫画のフィクション感の両方を感じて、どんどん栖佑さんのことがわからなくなりながら、もっと知りたくなる。普通は逆なのに、知れば知るほどわからなくなるキャラになった。これが、本気の恋愛と同じ感覚のような気がした。

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【うそパラ第3話おもいで⑤】この回、僕らは見事に栖佑さんにハマったのだと思う。手コキで捕まれた僕らの恋心……嗚呼。夢を見始めてる自分に怖くなる。

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【うそパラ第4話おもいで①】『うそつきパラドクス』において実は最も重大なターニングポイントだった回で、思い出深いです。第3話で八日堂と栖佑のつながりを知った大栄が、栖佑をスパ（お風呂）に誘って根掘り葉掘り聞く話。当初、このネームは大栄「ちがわないって」以降、全然違うものでした。

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【うそパラ第4話おもいで②】連載を始める前、うそパラは「栖佑さんを中心に色んな女の子の見た目ではわからなかった彼女たちの恋愛シーンを織り交ぜながら展開しよう」と考えていました。

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【うそパラ第4話おもいで③】つまり、八日堂と栖佑の仲が色んなことになるにつれ、それについて相談を受けた周りの女の子が「そうなんだ。私は今ね、実はこういう恋をしてて…」Oo。(￣_￣)ﾌｧﾝﾌｧﾝﾌｧ〰ﾝ...となるという、第4話でいえば、大栄「ちがわないって」の後からの展開は、

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【うそパラ第4話おもいで④】大栄「私だって昨日ね…」と語り出し、今カレ（役者志望・無職・ヒモ）とのずぶずぶの恋人関係を告白し、「大人になっても恋愛って難しいんだから、アンタも悩めばいいよ」みたいな感じになって終わる？　いや、そこは八日堂に電話をかけるまで行ったのかな？　…でした。

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【うそパラ第4話おもいで⑤】当時、編集長には第3話までネームを出していて、その後は僕に任せると言われていたのですが、連載を起こしたのは初めてだったので、一応この第4話も出したのです。そうしたら編集長から「なんか、俺が見たい方向と違うなあ」と言われたのでした。