グッド・タイムズ・アー・ソー・ハード・トゥ・ファインド #7

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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【グッド・タイムズ・アー・ソー・ハード・トゥ・ファインド】 #7

2013-10-21 16:37:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ムウウウーッ……」「ドッソイ……」セデムシ・ヤタマは舵めいたホイールを仲間であるスモトリ崩れのミベダと二人掛かりで回し、青銅の扉を開いた。扉にはシメナワが施され、「ご無償」と書かれた巨大なオフダ群とともに、この場所の神聖性を自ずから語っている。 1

2013-10-21 16:43:59
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カビと土の匂いが彼らの鼻腔をくすぐる。セデムシは震えた。当然、ミベダもだ。そしてミベダが居ていいのはここまでだ。セデムシだけが入場を許される。とにかくモータルには畏れ多い場所だ。儀式の直前に入場し、呼吸を最小限に、最短時間で準備を整え、できる限り速く退出せねばならない。 2

2013-10-21 16:48:03
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

扉の先、数十メートルの通路を進むと、そこは厳めしい玄室である。広い。セデムシはローマの地下納骨堂を連想する。勿論そんな所を実際に訪れた事は無いが。中央部は段差が設けられている。そこには石の台がある。台の上にはなにもない。ひどく汚れている。台の真上の天井には四角い穴が空いている。3

2013-10-21 17:01:38
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セデムシは手にしたランプをかざした。闇の奥は見ないようにする。壁を這う木の根めいたもの、その他のものは。それをあえて理解する事は精神に有害だと、彼は長年の執事生活の中で理解している。彼はランプの覆いを開けてロウソクを取り、祭壇じみた台の周囲のロウソクに火を移していく。 4

2013-10-21 17:08:37
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ロウソクには香が練り込まれており、火が移ることで、玄室は刺激性の強い匂いに満たされた。セデムシはシャツの胸のあたりを掴み、深呼吸を……する事は畏れ多いゆえ、目を閉じてゆっくり頭上を仰ぎ、緊張した全身の力を抜いた。そして懐からオートマチック・ピストルを取り出し、安全装置を外した。5

2013-10-21 17:13:41
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セデムシに課されているのは、儀式の進行を滞りなく行わしめること……。銃はまさかの事態に備え渡されているのだ。つまり……「ああ、いけない」セデムシは呟き、玄室入口そばのバッテリーを作動させる。ドルルルル……振動音が腹の底に響く。彼はバッテリーの横、壁のレバーを引き下ろす。パボッ。6

2013-10-21 17:19:44
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特徴的なサウンドを発し、壁かけ式のUNIXモニタが起動する。儀式は既に始まっている。この場への入場は常にギリギリなのだ。セデムシは額の汗を拭う。彼の勤めは長い。長いが、慣れない。銃の用途は、つまり……「アイエエエエ……」悲鳴が降ってくる。セデムシは歯を食いしばる。 7

2013-10-21 17:51:54
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ボン、という嫌な音がして、埃が待い、ロウソクの火が揺れた。セデムシは目を凝らした。そして胸を撫で下ろした。殆どの犠牲者はこのようにして落下の衝撃で死に至るか、動けなくなる。で、なくば……万一、「根」の手に負えないほどにその者が無事で、抵抗する場合は……彼が手を汚さねばならない。8

2013-10-21 18:09:49
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セデムシが震えを堪えて見守る中、闇の中をシュルシュルと影が這い、台の上で動かなくなったものを……生徒を捉えた。影……すなわち、壁を覆う「根」の一部は、生徒をひょいと持ち上げ、そう遠くない、セデムシが見ないようにしている闇の中に、一瞬で持ち去った。 9

2013-10-21 18:17:26
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UNIXモニタは、この地の直上、礼拝堂の模様をライブ中継している。礼拝堂の天井に設置されたカメラが映像をLANネットワークによってこの場所まで送り込むのだ。恐怖と緊張により、セデムシは殆ど笑顔になっている。罪悪感は数十年のうちに摩耗し果てたが、おそれは消える事がない。 10

2013-10-21 18:25:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

セデムシは脈打つ鼓動音を聴く。木の根が発している音だ。何とおぞましきか。いや違う。神聖なのだ。モータルにはその神聖性を理解できないだけだ。セデムシはわきまえている。彼はしかし、考えを止められない。モニタの向こうの少女達。仲間を断罪し、生贄に選び、そして卒業し、社会へ出て行く。11

2013-10-21 18:40:29
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この学園はそう大きくない。ソサイエティを構成するのはその更に上澄みの限られた者たちだ。だが、セデムシは儀式を見守り続けて数十年。彼の前の代の者。そしてその前の者?その事に思いを馳せると、彼は恐ろしくてたまらない……。「お勤めご苦労」厳かな声が玄室の入口から呼びかけた。12

2013-10-21 18:44:58
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「アイエ!」セデムシは振り返り、明かりを向けた。「眩しいぞ!バカめが!」エントリー者はドスの効いた低い声で叱りつけた。「我は校長であるぞ!」「誰!」セデムシは悲鳴を上げた。その者は笑い出した。「プッ……ウヒ、イヒヒヒヒ、ダメだ、俺じゃ重みが足りねえ……」 13

2013-10-21 18:50:14
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ミベダ=サン!?ミベダ=サン!」セデムシは叫んだ。「侵入者だ!大変です!」「そのミベダ=サンとやらは」新たな一人が長髪の男の後ろの闇に浮かび上がった。「忍」「殺」のメンポを着けたジゴクの存在が。「入り口に居た男か。寝てもらった。手荒い歓迎を受けたのでな」「アイエエエ!?」 14

2013-10-21 18:54:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ドーモ。フィルギアです」「ドーモ。ニンジャスレイヤーです」「アイエエエ!ニンジャ!?ニンジャナンデ!?」突然の極限ニンジャ状況!セデムシは失禁しながら尻餅をつく。BLAM!引き金が引かれ、明後日の方向に銃弾が跳ねた。「なァおっさん、ここが何なのか、説明できるかい?」 15

2013-10-21 19:09:19
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アイエエエエ!」「ここが礼拝堂の真下ってわけだろ?手間かけさせやがって。入れやしねえは、えらい地下深くまで潜るらされるはで……」「アイエエエエ!」「上の様子か。儀式とやらか」ニンジャスレイヤーはモニタを一瞥した。そして奥の闇を見通す。「……!」 16

2013-10-21 19:15:57
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

その視線の先にあったのは、網の目状に壁を這い巡る無数の巨大な根であった。そして、ALAS……なんたる事か。節くれだったそれら禍々しい根に抱かれ、幾つか見え隠れするのは、紛れもなく、かつては生きていたであろう者たち……この学園に学んでいた者たちの姿だ! 17

2013-10-21 19:25:28
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ヒッデェ眺めだ!な?保証したろ。これが古代ニンジャだ」フィルギアがニンジャスレイヤーの肩を叩いた。「キレてるか?ニンジャスレイヤー=サン。探偵殿も、まさかここまでは想像しちゃいなかったろ。知ったら二倍キレたかもな。だがこれで肝心なところがわかりかけてきた。奴の秘密がよ……」18

2013-10-21 20:00:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

フィルギアの笑顔がやや曇った。ニンジャスレイヤーはすぐには答えなかった。その瞳にはセンコめいた赤黒の火が灯っていた。フィルギアは二歩さがった。「お、お前たちーッ!」セデムシが我にかえり、失禁しながら彼らを指さして叫んだ。「神聖な儀式を穢すべからず!我があるじが許さんぞ!」19

2013-10-21 20:09:14
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

セデムシはほとんど半狂乱であった。「こんな!許されない!私のセプクでは贖いきれないぞ!お前たちも今すぐセプクしろ!罪が重い!そしてあるじに詫びなさい!いつものように、彼は準備万端整えた私を労ってくれる筈だったというのに!」「うむ、これは何事かね?」第三の新たな入室者が問うた。20

2013-10-21 20:17:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「邪魔してるぜ」フィルギアはそちらへ先手を打ってアイサツした。「ドーモ。ファフニール=サン。マガツ・ニンジャと呼んだ方がよかったら、そっちでもいいぜ。……フィルギアです」「フィルギア?はて」その者は……ダークグリーン装束のニンジャは額に指を当て、首を振った。「何者です?」 21

2013-10-21 20:25:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「俺の事はいい」フィルギアは言った。「所詮、ゴミのようなニンジャさ。無害なもんさ。アンタが有象無象の俺を知らんのも無理はない。つまり……」「ドーモ。ファフニール=サン。ニンジャスレイヤーです」赤黒の鬼はオジギを繰り出した。「貴様を殺しにきた」 22

2013-10-21 20:39:35
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「私を?殺す?」ファフニールは繰り返した。「……貴方の噂はやや存じております、ニンジャスレイヤー=サン。ドーモ。ファフニールです」ゆっくりとしたオジギ。そしてカラテを構える。「いやはや、私のところに現れるとは……このところ、この手のインシデントが実際多い。閉口します」 23

2013-10-21 20:49:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

空気が煮凝りじみて殺気に澱み、セデムシが泡を吹いて気絶した。「アイエエエ……アバーッ!」「うるせえオッサンだ」フィルギアが呟いた。彼は戦闘者達から更に間合いを取り、横目で壁の木の根を見た。彼は何かを探している。そしてUNIXモニタは、進行中の儀式を冷徹に映し続けている……。24

2013-10-21 21:00:19
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コメント

オスツ🍣 @alohakun 2013年10月26日
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