ステッカー『分析美学入門』における「理想的観察者」の位置づけについて

@igshrmshkさんの質問と、『分析美学入門』の訳者である@conchucameさんによる解説です。問題があれば削除します。
2
igshrmshk @igshrmshk

@conchucame 『分析美学入門』について質問です。p. 121での「反応依存性説(with理想的観察者)」に対する評価では、「美的判断は主観的でも普遍的でもある」という点について一貫した説明を与えられる、ということが「良い点」として挙げられています。(つづく)

2013-10-24 19:04:14
igshrmshk @igshrmshk

@conchucame (つづき)他方、p. 125では《理想的観察者の間の齟齬》の可能性について言及があり、特定的な価値を示す性質についての反応依存性説の難点の一つとされています。(つづく)

2013-10-24 19:05:41
igshrmshk @igshrmshk

@conchucame (つづき)で、質問は、(1)全体的な価値を示す性質についても同様の難点が生ずるのではないか、(2)この《理想的観察者の間の齟齬》の可能性を認めつつ《主観性と普遍性の両立》という利点はうまく維持できるのか、というものです。 (おわり)

2013-10-24 19:08:29
igshrmshk @igshrmshk

@conchucame ゼミでちょっと議論になり、うまく処理できなかったので訳者に投げます(笑)。ご教示よろしくお願い致します。

2013-10-24 19:10:09
森功次/MORI Norihide @conchucame

@igshrmshk 理想的観賞者のあいだの齟齬、というのは実在論全般が抱えている問題だと思います。全体的価値性質のケースもこの問題から逃れきれるわけではありません。p.122の上の方で、その懸念が触れられてるとおり、全体的価値性質の説明がうまく行くとされるのは、

2013-10-24 21:09:25
森功次/MORI Norihide @conchucame

@igshrmshk その齟齬がないならば、という留保付きのものです。よって井頭さんというように、結局この問題は全体的価値性質についても当てはまる問題といえます。

2013-10-24 21:10:07
森功次/MORI Norihide @conchucame

@igshrmshk ただ読んでて一つ気づいたことがあります。ステッカーの議論の運び方が悪い気がするのですね。 以下、少し長くなりそうですが説明します。

2013-10-24 21:11:05
森功次/MORI Norihide @conchucame

@igshrmshk p.125のところでなされてる議論のポイントは、結局レヴィンソンのいう「現れる全体的な印象」では記述内容をうまく説明できない、という点にあります。「同じ性質を見ながら理想的観賞者が別の印象を抱くことがありうる」という問題は、

2013-10-24 21:12:12
森功次/MORI Norihide @conchucame

@igshrmshk 先に述べたようにここにだけ効いてくる問題ではないので、わざわざここで持ち出してこなくても良いことです。

2013-10-24 21:12:32
森功次/MORI Norihide @conchucame

@igshrmshk むしろ理想的観賞者の齟齬が特定的価値性質の説明にとって致命的になるのは、「同じ印象を抱いていながら基づいている性質が違う」というケースです。理想的観賞者の間に多様性を認めるのであれば、こうしたケースがありうることも認めなければならないと思うのです。

2013-10-24 21:13:35
森功次/MORI Norihide @conchucame

@igshrmshk このケースだと、多数の理想的観賞者が「優美だ」と言っていても、それを担保する同一の客観的性質の実在は保証されません。これは実在論にとっては致命的ですし、さらにこれは特定的価値性質(と純粋記述性質)のみにとっての問題で、全体的価値性質には当てはまらない問題です

2013-10-24 21:14:53
森功次/MORI Norihide @conchucame

@igshrmshk ステッカーはこの問題については明示的に述べてないように思います。 終わり。

2013-10-24 21:15:55
森功次/MORI Norihide @conchucame

iPhoneで長文書くのは疲れるでござる

2013-10-24 21:16:24
森功次/MORI Norihide @conchucame

@igshrmshk あ、2の普遍性については、やはり無理だと思います。せいぜい「同一の理想的観賞者を採用する集団にのみ当てはまる共通性」くらいしか言えないのではないか、と。これはもうステッカーの区分だと、非実在論ですね。

2013-10-24 21:20:39
igshrmshk @igshrmshk

@conchucame 丁寧な御回答ありがとうございます。非常にわかりやすいです。理想的観賞者についても「理念的なのか現実的なのか」「一人なのか複数なのか」といろいろ問題になっていたのですが、こちらについても2に関する回答の中でかなりはっきりしてきたと思います。多謝!

2013-10-24 23:22:02
森功次/MORI Norihide @conchucame

@igshrmshk ステッカーはおそらく現実の人間は理想的観賞者たりえない、という立場と思われます。p125では「現実世界に存在する観察者は理想的観察者たりえない(原文はfall short of)」と言ってますし。

2013-10-24 23:38:52
森功次/MORI Norihide @conchucame

@igshrmshk あと理想的観賞者を複数認めるか、また理想的観賞者間に意見の不一致をみとめるか、といった点については、最近のジャーナルに出てる論文を読むかぎりまだコンセンサスはないように思えます。僕もこの辺はメタ倫理の議論とか詳しい人にいろいろ教えて欲しいところなんですがー。

2013-10-24 23:41:12