@masayachiba 千葉雅也による 詩のすすめ
- millionsage
- 4605
- 0
- 0
- 0
ちょっとトリッキーなオススメの仕方を考えているんです。しかし、まずは、オススメする理由は単純です。詩は短い。ゆえに忙しい現代人の文学的滋養としてひじょうに便利である、ということ。僕、すごいせっかちなんですよ。だから美術が好き。一瞥+αでいいから。詩もそう。
2010-10-08 00:00:49超いいかげんなことを言います。いわゆる純文学の大作は、時間にもっと余裕がある時代の産物であったと思う。いまや、僕たちにそんな余裕はない。そのこと自体はもちろん問題です。労働時間を短くし、長い文学を味読できる社会にするべく工夫したほうがいいでしょう。
2010-10-08 00:04:01しかし、今日においては純とエンタメの領域横断が進んでいて、ある種の軽さ、フラットさ、仕掛けの妙などが売れる小説のポイントになっている。それと対応して、「現代詩の現代化」(というのも、いわゆる前衛的現代詩はもはや懐かしいテイストであるから)があるかというと、あまり活発でない。
2010-10-08 00:09:18詩的言語の音声的なノリ、リズムの部分、そして抒情性は、日本語ロックの開発以後、J-popに吸収されてしまった。日本語ラップの登場も大きい。そうした歌謡性を、詩の本来の姿と見ることはもちろんできるし、そこから現代詩を考え直すことは実り多いでしょう。が、近現代詩には別の側面もないか。
2010-10-08 00:12:35音声的なノリ以外の近現代史の部分というと、「エクリチュール」ということになり、つまり、「言語表現は言語表現である」ということの残酷な自由さ、ブランショなら「死」(=詩)と言うだろう言語それ自体の自己言及性の純化、ということがすでに歴史上のクリシェなのだが、それはそれで極端。
2010-10-08 00:15:52あらためて戻りたいのは、やはりエドガー・アラン・ポーなんですよね。彼は、ミステリの祖である、つまりエンタメ小説のひとつの祖型を与えていると同時に、マラルメみたいな難解な詩に方法論的な基礎を与えた人でもあるわけで。つまり、ポー的文学空間においてエンタメと現代詩が並び立つはず。
2010-10-08 00:18:51@yy_sato 戦場に持っていける、暗記して、というのもそうですよね。小泉義之さんが、戦争をやめるには祈るしかない、少なくとも祈っている間には何もできないから、と言っている。僕は、祈っている=戦争の雨が止んでいる、そのときのcoeurのなかに詩の雨が降っている、とか言いたい。
2010-10-08 00:22:07ミステリも、近現代詩も、密室性を構築するわけです。そして詩は、その短さ(ポーは詩は短いものだということを強調している)において、極まった密室劇であるわけです。
2010-10-08 00:26:00@yy_sato また具体的な話なんですけど、余白を工夫したり、行変えのヴィジュアルな効果とかって、まだ、ふつうにありなんでしょうか。僕、デザイン出身なので直感的にそういうことやっちゃうんですが、オーソドクスな近代詩風行分けか、散文詩風のほうがかえってイマな感じなのかな、とか?
2010-10-08 00:33:46しかし現代詩においては事件の展開がくどくど説明されないし、はっきりした事件解決がない。つまりロゴスで割りきれない。分かる、というカタルシスがない。が、なんじゃこりゃ、ドドーン!というショックがある。それを楽しむのは、ハリウッドのショック映画くらい現代的であるのではないか。
2010-10-08 00:35:45つまり現代詩は、ハリウッドのショック映画くらい「現代的に怠惰に」楽しめるのではないか。もちろんそこを入り口にして、そこで起こっている事件の細々としたところへ降りていくこともできるし、それが推奨されてしかるべきだが、さしあたってはドドーンの怠惰な楽しみでもいいのではないか。
2010-10-08 00:37:42僕などは本当に怠惰だから、努めて見てはいるがエンタメでさえ長いものはダルいのだ。もうキャッチコピー+αだけで十分である。密室劇も、なんか密室でワクワクすんぜ、で、結論は?くらいで十分。小説のスタンダードな枚数はもっと減らしてほしい。だいたい学術論文は50枚以下だ。
2010-10-08 00:44:12そうなると、である。僕の怠惰は徹底すると、もう密室劇の結論を押しつけられることさえダルいのである。それが楽しいんじゃないのかと言っている人たちはまだまだ怠惰でない。僕はもう、あ密室? くらいでいい。そうなると、詩である。
2010-10-08 00:47:07詩は、筋の展開どころか語と語の関係レベルで密室であり、それを短く放り出して終わりである。詮索しようと思えばできるが、そうしなくても音声的な魅力にノっていればあっという間にいちおうの鑑賞ができる。
2010-10-08 00:49:21密室で事件だ!が、語と語のレベルで生じて、それにショックを受けて、余韻を楽しめばいい。たとえば和合亮一が「奥歯は晴れ上がり/僕の乳首の先で/小麦粉が降る」(「空襲」より)と放つとき。この解決なき語それ自体の密室的戦慄。ま、この引用は僕の趣味ですが。
2010-10-08 00:54:22語のレベル、そして音素レベルのエンタメである。多くの人間的エンタメよりも簡潔で時間をとられないエンタメである。しかし多くの人は、人間的な意味を求め、ただでさえも忙しいのに、さらに時間のかかることをしている。真面目である……。もっと怠惰になれば?というトリッキーな詩の擁護でした。
2010-10-08 00:58:53しかしねえ、語や音素レベルの密室が密室であるとわかるには、この世間を覆っている「意味が分かることの覆い」をいったん取らないといけないのかもしれないから、やはりその突破に精神的コストがかかるので、それはまったく怠惰なことではない、ということになるのだろうかな……。
2010-10-08 01:01:15少なくとも僕にとってはエンタメの受容とあまりコストが変わらないのだが。男と女のくどくどしたドラマをおもしろいと思おうとするほうがよっぽど疲れる。
2010-10-08 01:02:37@yy_sato なるほど、やはりやはり。自分のタイポの感性も80年代由来なので、時間をおいて眺めて、これってなんか……(赤面)と思ったんですよ笑 そうですね、視覚性を拡張するならもっと戦略を考えるか、古いやり方か、しかし中尾半端もそれはそれで魅力ではないかと思ったりもして。
2010-10-08 01:08:28@yy_sato 朝吹さんの新作はまだ見ていないんですが、そうですか、やってますか。藤原さんは視覚的な効果がうまいですよね。第一詩集もセンスがいいと思いました。まあ、『フォ ト ン』のスペース入れはちょっと冗長かなあと思いましたが。
2010-10-08 01:19:01