【艦これから史実へ】「霧島、サウスダコタをボコる」の真実

第三次ソロモン海戦第二夜戦、「霧島」は「愛宕」「高雄」と共に米戦艦「サウスダコタ」と殴り合い多数の命中弾を与え撃破、しかしそれを囮に接近した「ワシントン」の16インチ弾多数を浴び沈没…「艦これ」のおかげで最近よく話題に上るストーリーです。 が、それって実際のところどうだったの? 「サウスダコタ」は「霧島」からの命中弾で全主砲使用不能に陥ったよ・いやしかし「霧島」が当てた主砲弾は実はたった一発だけだよ・むしろ重巡の方が頑張ってたよ…等これまで定説として語られてきましたが、実際「サウスダコタ」はどれくらいボコられたのか? 続きを読む
歴史 有坂純 太平洋戦争 海戦 霧島 戦艦 艦これ サウスダコタ 戦史 アメリカ海軍 大日本帝国海軍
184
有坂純@ターナー展 @thorn_the_socrs
艦これ界周辺で、「サウス・ダコタ」と「霧島」の交戦についての理解がどうもおかしい、ということが話題になっているようですが、これは艦これ関係者の責任とは言い切れない。たぶん多くの人の典拠になっているであろうwikipediaを見てみると、日本版も英語版もおかしい。ファンタジー。
有坂純@ターナー展 @thorn_the_socrs
特に英語版は、参考文献一覧に誇らしげに挙げてある史料をまったく使っている形跡がない。
有坂純@ターナー展 @thorn_the_socrs
と言うわけで、今日はまずその一次史料の一つ、艦船局が書いた「サウス・ダコタ」ダメージ・リポートを読んだ上で、広く流布されている(らしい)「神話」のどこが違っているのか、数え上げてゆくことにしましょう。 http://t.co/fbRDKfcYJX
有坂純@ターナー展 @thorn_the_socrs
結論から述べると、 1 命中弾は42発ではない。26ないし27発。 2 霧島の唯一の命中弾は徹甲弾 3 火災は何らの脅威でもなかった。搭載機は燃えていない 4 第3砲塔は射撃不能となっていない 5 電路系の障害は日本軍の射撃によるものではない 6 大損害ゆえに後退したのではない
有坂純@ターナー展 @thorn_the_socrs
艦船局の分析によれば、命中弾は計26ないし27。内訳は、 5インチ 1 6インチ 6または7 8インチ不明 3 8インチ通常弾 1または2 8インチ徹甲弾 13 14インチ徹甲弾 1 不明 1
有坂純@ターナー展 @thorn_the_socrs
命中弾の半数は、重巡の91式徹甲弾ということになります。 さすがに偏り過ぎの気もしますが、これは日本軍の水中弾についての、艦船局の「思い込み」が働いています。リポートで繰り返し強調されているのは、
有坂純@ターナー展 @thorn_the_socrs
1:日本軍の徹甲弾=水中弾はその特性ゆえに信管の遅動が大であるため、水線上に弾着して貫徹しても船体内で炸裂せず、そのまま反対舷から射出してしまうケースが多い。
有坂純@ターナー展 @thorn_the_socrs
2:徹甲弾から脱落した被帽部が、言わば巨大な破片として、弾体とは別の被害を及ぼすケースが多い。しばしば射入孔が1個なのに射出孔が2つ生じている謎は、これで説明できる。
有坂純@ターナー展 @thorn_the_socrs
要するに、奇妙な小さな破孔がぼこぼこ開いていたり、どのサイズのどの種類の砲弾でも被害の程度が説明できなかったりするケースは、まとめて「それは8インチ徹甲弾の被帽部の仕業だったんだよ!」で片付けようとしていたらしい。
有坂純@ターナー展 @thorn_the_socrs
この問題については次で改めて説明しますが、それはそれとして、命中弾の総数は「26」ないし「27」ということで間違いない。wikipediaその他の「42」の典拠がどこにあるのか、私の知見では分かりません。そう書いてある文献を片っ端からまず当たってみないと。
有坂純@ターナー展 @thorn_the_socrs
さて「2 霧島の唯一の命中弾は徹甲弾」。要約を引用しましょう。 「命中26:14インチ砲弾と推定。 1-128番ハッチ縁材の両側を貫徹し、123.5番フレームで第3砲塔バーベットの頂部から下約17インチに命中。17.3インチの装甲に直径15インチ、深さ約1.5インチの凹部」
有坂純@ターナー展 @thorn_the_socrs
「この部分の装甲表面は亀裂に覆われ、さらに弾着点から後方8フィートに垂直の亀裂が生じる。 爆風は、バーベット付近の上甲板に幅3フィートの破孔を生じさせる。 この破孔の周囲では、121~130番フレーム間で、上甲板が8フィート垂れ下がる」
有坂純@ターナー展 @thorn_the_socrs
「(バーベット装甲に)逸らされた破片の一部は129番隔壁の右舷側、上甲板と第2甲板の間に飛散し、26×35インチの破孔を生じる。 破片の他の一部は兵員食堂の設備を貫徹し、水防扉を2箇所で、隔壁を1箇所で貫徹。 バーベット右では、兵員食堂に大きな被害」
有坂純@ターナー展 @thorn_the_socrs
http://t.co/fbRDKfcYJX ←写真35~37から瞭然ですが、分厚いバーベットにこんなヒビを入れることができるのは、戦艦の徹甲弾だけです。3式弾は論外ですが、零式通常弾でもこうはなるはずがありません。艦船局の見解では、「霧島」からもらった主砲弾はこれ1発のみ。
有坂純@ターナー展 @thorn_the_socrs
さて、海軍砲熕のサイトで(その界隈では)有名なロバート・ランドグレンさんは、この異様に8インチ徹甲弾に偏っている艦船局の見解に疑問を持たれて、ダメージ・リポートを改めて分析しておられます。 http://t.co/2g3YvkZeCP
有坂純@ターナー展 @thorn_the_socrs
ロバート・ランドグレンによる修正された命中弾数 5インチ通常弾 2 5.5インチ通常弾 4 6インチ 8 8インチ通常弾 4 8インチ徹甲弾 3 14インチ通常弾 2 14インチ焼夷弾 2 14インチ徹甲弾 2
有坂純@ターナー展 @thorn_the_socrs
艦船局が、「6インチ多数か8インチ徹甲弾か決めかねたケース」と「6インチか8インチか決めかねた、しかも3区画に浸水を招いている大被害のケース」がいずれも14インチ零式通常弾に
有坂純@ターナー展 @thorn_the_socrs
「レーダー室に火災を起こしたが炸裂の痕跡がないケース」と「射撃指揮装置のレーダーアンテナに命中し、周囲に多数の破孔を生じさせた(徹甲弾なのに通常弾のような効果)ケース」が共に14インチ3式焼夷弾の命中に、改められています。
有坂純@ターナー展 @thorn_the_socrs
ラングドンさんの(いかにも楽しげな作業の)方法論をそのまま受け入れろ、というわけではありませんが(そのテクニカルな是非はここで取り上げる問題ではありません)、艦船局が3式弾の存在を頭から無視してかかっていることもあって、14インチ砲弾についての修正にはなるほど説得力があります。
有坂純@ターナー展 @thorn_the_socrs
次に「3 火災はほとんど発生していないに等しい」。 「サウス・ダコタ」が3式弾によってであれ、何か他の手段によってであれ、火炎に包まれたというのはまったくの神話に過ぎません。何しろ、リポートでは火災について末尾にほんの付け足しのように記されているだけなのです。
有坂純@ターナー展 @thorn_the_socrs
「交戦中及び交戦後において、脅威となる火災は何ら生じなかった。火災は全て小火災であり、ただちに消火された。もっとも深刻な火災は、V-319-T通路で発見された救命胴衣2着の炎上である。これらは、B-0502-M弾薬供給室の揚弾機からの火花で生じたと考えられる」
有坂純@ターナー展 @thorn_the_socrs
1.1インチ砲または20ミリ機銃の弾薬の近くで救命胴衣2着が燻っていたのが、「サウス・ダコタ」のもっとも危険な火災だったわけです。
有坂純@ターナー展 @thorn_the_socrs
「第3砲塔は射撃不能となっていない」。 神話では「霧島」の1式徹甲弾で第3砲塔を壊されたことになっている「サウス・ダコタ」。では艦船局のリポートはどう言っているでしょうか。
有坂純@ターナー展 @thorn_the_socrs
「(バーベット装甲の)上方に逸らされた爆風と破片は、バーベットの気密シーリングと庇を30フィートにわたって破壊し、第3砲塔の右砲と中央砲の被筒を抉り、防水布を発火させた。 弾着後も、砲塔はなお射撃可能であったと信じられる」
有坂純@ターナー展 @thorn_the_socrs
「上甲板の後方に飛散した破片は、複数の20ミリ機銃、複数の砲の防弾板、複数の即応弾薬箱、右舷カタパルト、消火栓に被害をもたらした。 前方に飛散した破片は、上甲板及び第1上構甲板の上構を貫徹した」
残りを読む(18)

コメント

水野。 @mizuno_juan 2013年10月26日
とりあえずお話が終わったようなのでこれで完結。私自身「定説」を信じていたクチなので非情に興味深かったです。
ふーらいぼー @Whoraibow 2013年10月26日
こ、これで霧島改二が実装される見こみがなくなった……?(;_;)
聖夜 @say_ya 2013年10月26日
艦これはファンタジーですし、航空戦艦扶桑/山城や航空巡洋艦熊野/鈴谷が実装されてますから可能性はあると思いますよ
水面計@いつのまにかオッサン @W_L_G 2013年10月26日
たかだか半世紀前の戦いなのにこれほどまでに一般に話されている物語と公的な報告書で違いがあるとは考えさせられるね~ それほどの激戦だったというのもあるかもしれないけど、歴史の定説や逸話なんてしっかりと調べないといけないのだろうね
IJN(コーラス:ヤング・フレッシュ) @JapanNavy_Blue 2013年10月26日
戦艦同士による零距離砲戦、ってーロマン自体はあったっていいが、それと冷徹な現実は分けて考えた上で受け入れないと「天佑ヲ確信シ全艦突撃セヨ」なんて真顔でバカなこと言い出す組織みたいにry
ふくだ @fukuda_st 2013年10月26日
戦史ものの本で、『サウス・ダコタの主砲発射によって搭載機が炎上したが、二度目の発射の爆風で炎上搭載機が吹き飛ばされて事なきを得た。この件でサウス・ダコタの艦長は司令部に怒られた』みたいな話(うろおぼえ)を読んだ覚えがあります。あれはどこから来た話だろう。
みさご@アタシってほんと○○ @misagoya 2013年10月26日
興味深いまとめでした。ところでこのまとめを引用して「だからWikiを丸呑みにするにわかは―」などとwikiの執筆者やその引用者を攻撃する誰かさんはまず先にWikipediaを編集すればいいのではー? wikiってそうして正確性を上げていくシステムでしょう?
小野仁 @yukikazemaru 2013年10月26日
これまでのwikiにも編集合戦がやたらあるっつうのに、なんでそんな面倒なことが予測されることに首突っ込まなけりゃならんお?
くろだ@虚無感 @ponkotsu14 2013年10月26日
WW2全般をさっぱり知らない人間としては、神話も面白いし敵方(アメリカ軍)の報告書と再検証に基づく解説も面白いです。解説の@thorn_the_socrsさん、まとめたmizuno_juanさんともにありがとう。  でも、(聞きかじりですが)主砲が使えない片手落ちの状態かつ製造年による性能差をひっくり返そうとするロマンは悪くない。
くろだ@虚無感 @ponkotsu14 2013年10月26日
@を付け忘れ。@mizuno_juanさんもありがとう です。連投失礼。
ナイアル @nyal013 2013年10月26日
まとめにある方も言及しているように、正式な資料であるダメージ・リポートや戦闘詳報にしても正確性を欠くことを踏まえた上での「知的ゲーム」ですから、これ「だけ」を根拠にwikipediaへの編集なんかしたら、そりゃ編集合戦にもなろうというもの。
藁科 英司 @hamanako 2013年10月26日
「マイクチェック」が電装系の不調で退いたサウスダコタに対する煽りだという可能性を採用すると、艦これ霧島の言行不一致キャラとしての味はがさらに深まりますね!
コウモリガイトウ @batcloak 2013年10月26日
改めて見ると、ゲームの「艦娘霧島」には、武闘派と思わせるような要素は正直あまり感じられない。 原作者である田中Pや運営にとっては、そういうイメージはそもそもなかったのかもしれない。 ただ、今後ファンがイメージする「武闘派霧島」要素がフィードバッグされる可能性は否定できないでしょうか。
コウモリガイトウ @batcloak 2013年10月26日
もしかしたら武闘派霧島ネキというのは、ボーキサイトの女王赤城さんに並ぶファンの共通幻想なのではないか。
幻導機 @gendohki 2013年10月26日
戦艦の霧島が近距離殴り合いをしたのは事実で、艦これの霧島は頭脳派で売ろうとしてるのも事実で、プレイヤーは勝手に武闘派だと思ってる。までは別にいいんだけどね。
幻導機 @gendohki 2013年10月26日
なんかサウスダコタと殴りあった。…から、霧島が結果として沈んで、サウスダコタは生き残ったのに霧島がボコボコにしたった武勇伝と化してるのはなんでかなぁ。という違和感はあるけど。そういうことにしてあげたい心理もあるんだろうなぁ。などと。
水面計@いつのまにかオッサン @W_L_G 2013年10月26日
歴史物はわかりやすくて明瞭な「物語」から入り、その後不明確で虚実あふれる「史実」の形に悪戦苦闘する。こういったよくわからないところ含めて、虚実のあいだを色々と妄想してキャラ付けして楽しむのも擬人化モノの楽しいところだとは思う。 まぁ「僕の知っている物語意外は認めない!」みたいなのは、二次創作でも歴史物でも嫌われる原因となることが多いだろうね~
三月レイ@令和もミクや艦娘達と旅をする @mitsukirei 2013年10月26日
実際史実は立ち会った人の証言(思い込み無し)を聞かないと正確なことは解らないからなあ。だからこそロマンも生まれるんだけど。取り敢えず戦闘艦もフェールセーフが大事なのは改めて解った。
こいん @360coin 2013年10月26日
擬人化するとサウスダコタさんは自分のくしゃみでコンタクトレンズが両方吹っ飛んでパニック。ひとまず場外に退却したってことですね
@NekochaQB 20190720 @NekochaQB 2013年10月26日
まあ現実はこんな感じですわな。ちっともロマンチックじゃない、だからフィクションが売れるんですが。
s_doi @s_do_i 2013年10月26日
ソロモン夜戦の近距離戦闘でも36cm砲では対40cm防御装甲を抜くことはできなかったということか。逆に対36cm防御装甲は40cmに抜かれている。このまとめを読むと「ここに大和がいたら」と思ってしまうね。対46cm防御はサウスダコタ、ワシントンの攻撃に近距離でも耐えうることは十分期待できる。
ふみたけ内調 @Fumitake_A 2013年10月27日
戦史の難しいところは思い入れが高じると「あれだけ激戦を展開したならきっと奮戦したに違いない」という気持ちで評価を割高に見てしまう点に尽きると痛感します。
ふみたけ内調 @Fumitake_A 2013年10月27日
霧島ネキは幻想という指摘を見るに高度に信ぴょう性のある嘘はもはや真と見分けがつかないそれを感じます、あのネタ自体は好きですが軍艦霧島とは峻別しつつ愛でた方が賢明かもしれませんね。
有村悠%1/22砲雷撃戦・に-10 @y_arim 2013年10月27日
戦艦なら各艦1,000人を超える乗組員の証言を片っ端からかき集めてさえ「客観的な事実」にたどり着くのは難しいだろう(人によって見えるものは違う&記憶は容易に改竄される)。歴史学はホント大変。
ぐだぐだファイナルかわうそ寺2019 @Nek_ssd 2013年10月27日
艦これやってたけど「霧島、サウスダコタをボコる」という話自体初めて聞きました(こなみ)
アオイ模型:砲雷撃戦舞鶴C-04 @aoi_mokei 2013年10月27日
一時期話題になった「駆逐艦が大活躍」系の話も、乗組員の回想録読むと「突撃しか言わないバカな艦長だった」とか「操艦ミスで気がついたら敵艦隊の真ん中にいた」とか書かれてる事あるからなぁ
kr @gskrsk 2013年10月27日
この手の話は軍ヲタの悪いところがはっきりでるから、×霧島はボコられて沈んだだけだよこのニワカバーカ ではなく○霧島は別に活躍はしてないけど近距離砲撃戦は夢があるよね、と話すようにすれば平和だと思うんですが 軍ヲタには無理?
私はケントゥリオP。第十次ウソm@s祭りやります @centurio_P 2013年10月27日
個人的には「あくまでアメリカ側のダメリポをさらっとみてみたら検討に値する"新たな一面"がでたよ」っていう話なのに、ツイッターやコメントではまるでダメリポの話が絶対の事実として扱われ、「今までの霧島話は全部間違いだったんだ」とばかりに扱われてるのに違和感が。ご本人も「戦闘詳報などと矛盾が生じたり不明点があるが」と言ってるんですが…
panhiki @panhiki 2013年10月27日
敵の弾にはなんともないけどてめえの鉄砲ぶっ放したら電源喪失しちゃう戦艦ってのはどっかに欠陥があったんでね? などと思いました、はい。
TENNOたまに謎狩 @XH834 2013年10月28日
サウスダコタさんはドジッ子って事で
トトト @tototo_kun 2013年10月28日
物語は物語、史実検証は史実検証で両立されていけばいいと思う。「実際の史実では分からないけど艦これの霧島とダコタさんは殴り合う仲だったら楽しいよね」でいいんじゃないかな。困るのは歴史フィクションの土俵で「川中島の単機突撃はなかったんだよバーカバーカ」としか言えない無粋な人間
かぐなみ @kagunami 2013年11月30日
こういう史実との照らし合わせが面白いから艦これ辞められない
toppa@海の重さ @toppa_0911 2013年12月21日
この有坂氏の意見に対してニコニコ大百科の記事 http://dic.nicovideo.jp/b/a/%E9%9C%A7%E5%B3%B6%28%E8%89%A6%E3%81%93%E3%82%8C%29/181- や艦これwikiwiki http://wikiwiki.jp/kancolle/?%CC%B8%C5%E7 で反論が出てるのを見かけましたので貼り付けます。誤訳があるようで・・・

注目の記事 - トゥギャッチ

ログインして広告を非表示にする
ログインして広告を非表示にする