茂木健一郎(@kenichiromogi)さんの連続ツイート第1076回「特定秘密保護法案の、脆弱性」
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とぜ(1)「特定秘密保護法案」(全文 http://t.co/Pg1MEJ9L9y)が議論を呼んでいる。国民の知る権利や、報道のあり方との兼ね合いが問題とされているが、この法案について、比較的議論されていないと思われる脆弱性を指摘したい。
2013-10-27 07:00:59とぜ(2)英国のマーガレット・サッチャー首相が大好きだったという政治コメディ「イエス・ミニスター」(BBC、1980年〜1988年)に「事務次官」役で出て来るサー・ハンフリーは、数々の名言を吐く。その中でも、「秘密」を保護するにはどうすればいいかについてのこの名言は示唆的だ。
2013-10-27 07:03:43とぜ(3)サー・ハンフリーは言う。「He that would keep a secret must keep it secret that he hath a secret to keep.」「秘密を守ろうとするものは、秘密があること自体を秘密にしなければならない。」
2013-10-27 07:04:40とぜ(4)一般論として、国家機関にも、個人にも、「秘密」あるいは「プライバシー」はあってしかるべきである。しかし、その多くは「暗黙知」として特定のメンバーの間に共有されている。「これが秘密だ」と「リスト」を作成することは、その「秘密」を守ることとは逆行する。
2013-10-27 07:06:28とぜ(5)「特定秘密保護法案」の最大の脆弱性は、行政機関の長が、「特定秘密」を「指定」することを定めている点にある。本来、国家に関する秘密は、何が秘密であるか自体を明らかにしないことが、その保護に最も資する。リスト自体が流出することを含め、指定することは脆弱性を高める。
2013-10-27 07:08:03とぜ(6)「特定秘密」を指定するのは、今回の法案で課される刑罰について、「罪刑法定主義」の観点から「構成要件」を明確にするという要請からだと推定される。しかし、以上に指摘したように、「特定秘密」を指定すること自体が、本来の目的である秘密の保護を害する可能性が高い。
2013-10-27 07:09:28とぜ(7)結局、国家にとって保護すべき「秘密」とは何かということは、指定や明示的なリストになじまず、関係者がコモンセンスに基づき「判断」する方が良いということになる。もし、罪刑法定主義を貫くならば、「秘密漏洩」は、それ自体を処罰することになじまないということにもなる。
2013-10-27 07:11:02とぜ(8)一般に日本の法体系はコモンセンスに基づく判断を重視する英米法ではなく、明示的に条文で指定することを思考する大陸法の系列に属する。このような文化的風土は、守るべき国家秘密を的確に判断するという要請とは相性が悪い。官僚機構の杓子定規文化を強め、現場を萎縮させる可能性もある。
2013-10-27 07:13:22とぜ(9)公益性に資する時には、国家秘密が開示されることも必要である。ウィキリークスによる米軍のイラクにおける民間人殺害は「秘密」だったかもしれないが、その公開は公益に資した。結局、国家秘密は指定や処罰になじまない領域が多い。この事情は、日本も、米国も、英国も同じことだ。
2013-10-27 07:15:06