物語ツイート「医者の苦悩」

以前考えた物語のプロットからツイートで物語を書き起こしました。
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不二式@生き急がない @Fujishiki

ピカピカの白い壁が空まで続いているような大きな病院に、継ぎ接ぎだらけの服の女Aが子供をおんぶしてやってきた。大きな声でおばさん達が噂話をしている。 「聞いた?あのお医者さん…無償で難病を治してくれるっていうあの…」 「いいわよねえ…良い学校出てるみたいで腕もいいし」 #医者の苦悩

2013-10-27 21:16:53
不二式@生き急がない @Fujishiki

あるおばさんが大きな声で言った。 「それに比べてこの病院の医者はがめつくって!」 「そうそう!薬だけ出して欲しいのに絶対診察受けろ、って!」 「手術代も高いしねえ!本当、あの無償で施してくれる医者の爪の垢を煎じて飲ませたいわ!」 「Aさんー診察室までどうぞー」 #医者の苦悩

2013-10-27 21:20:17
不二式@生き急がない @Fujishiki

女性看護師に通され診察室に女Aが入ると、医者は険しい顔でレントゲン等を見つつ言った。 「…Aさん…検査の結果ですが…」 女Aはゴクリと唾を飲む。医者は女Aの子供が重い病で、非常に高い手術料がかかると説明した。女Aは苦しい顔で言った。 「そんな…とても払えません」 #医者の苦悩

2013-10-27 21:26:15
不二式@生き急がない @Fujishiki

医者は険しい顔で言った。 「…臓器移植が必要なのです。臓器提供者がいないと手術は出来ない。そして手術に必要な機材も高価です。薬剤も…」 女Aは苦しい顔で言った。 「そこをなんとか…」 医者は言った。 「…無理ですね…お金がないと…」 女Aは叫んだ。 「拝金主義!」 #医者の苦悩

2013-10-27 21:31:04
不二式@生き急がない @Fujishiki

医者はこめかみ辺りを押さえながら、女Aに向き合って話をしだした。 「…あなたと旦那さんはどんなお仕事を?」 女Aはムッとした顔で言った。 「靴屋をやっていますが…それが何か?」 医者は言った。 「靴が買えない方にあなた方は無料で靴をあげるのですか?」 #医者の苦悩

2013-10-27 21:35:13
不二式@生き急がない @Fujishiki

「それは…」 女Aは言葉に詰まった。医者は続ける。 「お子さんが重い病でお金が必要なら、尚更お客さんにはちゃんとお金を払って貰わないと困りますよね」 女Aは言う。 「でもお医者さんはお金があるでしょう!?」 医者は言った。 「手術を待っている患者さんは他にもいます」 #医者の苦悩

2013-10-27 21:38:56
不二式@生き急がない @Fujishiki

「Aさんのお子さんのような処置が必要な患者さんは他にも多く、適正な代金を払ってくれる方も多いのです。Aさんのお子さんだけを特別扱いは出来ない」 女Aは言った。 「でも私の子は…!」 医者は悲しそうな眼差しを女Aに向け、その子供へも向けた。 #医者の苦悩

2013-10-27 21:41:57
不二式@生き急がない @Fujishiki

女Aはその医者の憂いの帯びた目を見て、何も言えなくなった。しばらくして医者は静かに話しだした。 「…私にも妻と子がいます。そしてまだ医者になりたてでお金もない若い頃、妻との間にはもう一人子供がいました。…その子は難病でした。ちょうどAさんのお子さんくらいの歳でした」 #医者の苦悩

2013-10-27 21:46:29
不二式@生き急がない @Fujishiki

「臓器移植が必要でした。高価な機材や薬剤も…多数の金融機関からお金を借りようとしましたが、医者とはいえまだ信用も金もなく、色んな人に土下座して頼み込みましたが、手術費は集まりませんでした」 女Aは目を伏せた。医者は続ける。 「他の医者に頼みましたが彼らにも家族が…」 #医者の苦悩

2013-10-27 21:49:12
不二式@生き急がない @Fujishiki

医者は頭を抱えつつ言った。 「そんな時でした…いわゆる闇の仕事が舞い込んだのは…債権者の金持ちの患者が、借金している者から臓器を貰うことで借金を帳消しにする、という手術の仕事の依頼が来たのです…この仕事が上手く行けば私の子は助かるが…しかし…」 #医者の苦悩

2013-10-27 21:53:03
不二式@生き急がない @Fujishiki

医者は顔を起こして窓の外を見ながら言った。 「仕事は…引き受けました。手術も成功しました。…ですが」 女Aは少し震えながら話を聞いていた。医者は続ける。 「手術費は…踏み倒されました」 女Aは目を見開いた。医者は言った。 「闇の施術をした事を口外すると脅されました」 #医者の苦悩

2013-10-27 21:59:23
不二式@生き急がない @Fujishiki

「…結局色々な仕事をキャンセルして臨んだ闇の手術は、タダ働きに終わってしまい、私は仕事をキャンセルし周囲から金を借りようとしたために、周囲の信頼を失いました。そして…」 女Aは目に涙を溜めて聞いていた。医者は言った。 「…私の子は息を引き取りました」 #医者の苦悩

2013-10-27 22:02:52
不二式@生き急がない @Fujishiki

医者は言った。 「…確かに医師は命を扱う仕事です。他の仕事とは少し違うでしょう。…ですが医師にも家族がいる。医師となる為に通った学校の学費もある。学ぶのにかかった時間も…適正な代価を得られないと皆生きてはいけません。適正な代価を求める医師は…拝金主義者でしょうか?」 #医者の苦悩

2013-10-27 22:07:22
不二式@生き急がない @Fujishiki

女Aは言った。 「…でもとあるお医者さんは無償で施術をしてくれると…最近姿を見ませんが…」 医者は振り向いて、目を伏せて言った。 「…彼は私が指導していました…優秀な腕でしたが…栄養失調で亡くなりました」 女Aは目を見開いた。 「そんな…」 #医者の苦悩

2013-10-27 22:10:21
不二式@生き急がない @Fujishiki

医者は言った。 「命をかけてでも無償で救いたかったのでしょうが…彼が亡くなった事できちんと学び医療の技術を得た優秀な医師が1人失われてしまいました…きっと彼のおかげで助かった命もあったのでしょう…ですが彼は食費すら削って治療費に当てた結果…亡くなった」 #医者の苦悩

2013-10-27 22:13:26
不二式@生き急がない @Fujishiki

女Aは顔を伏せた。医者は言った。 「…申し訳ないですが…手術は無償では出来ません…」 女Aはすすり泣きながら家に帰った。 ある日の事。女Aの子の姿が見えなかった。女Aたちが探すと子供は元気になって帰ってきていた。明らかに病気が治った様子だったが医者は知らないと言った #医者の苦悩

2013-10-27 22:16:27

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