茂木健一郎(@kenichiromogi)さんの連続ツイート第1078回「朝顔くん、おはよう」

脳科学者・茂木健一郎さんの10月29日の連続ツイート。 今朝は、さっきふと思ったこと。
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茂木健一郎 @kenichiromogi

連続ツイート第1078回をお届けします。文章は、その場で即興で書いています。今朝は、さっきふと思ったこと。

2013-10-29 06:35:51
茂木健一郎 @kenichiromogi

あお(1)朝、コンビニに行ってあれこれ買って戻ってくるとき、ふと、道ばたに朝顔があるのを見つけた。もう枯れかけているが、軒下につるが巻き付いている。夏は過ぎたな、などと思いながらそのまま歩いていたら、角をまがったあたりで、突然脈絡もなく、あの一句が思い出された。

2013-10-29 06:37:56
茂木健一郎 @kenichiromogi

あお(2)「朝顔に つるべ取られて もらい水」。加賀千代女(1703年〜1775年)。松任市(現、白山市)出身の江戸時代の俳人で、朝顔の句を多くよんだ。その中でも、この句は代表といわれる。「朝顔や」のかたちの句もあるようである。

2013-10-29 06:52:23
茂木健一郎 @kenichiromogi

あお(3)井戸に水をくみにいこうとしたら、朝顔につるべ(「井戸において、水をくみ上げる際に利用される、綱等を取り付けた桶などの容器を言い、後に、それを引き上げる天秤状の釣瓶竿や滑車など機構の一切を指すようになった」)をとられて、それを切るのも可哀相なので、もらい水をした。

2013-10-29 06:42:04
茂木健一郎 @kenichiromogi

あお(4)人間中心主義ならば、水をくむのに邪魔な朝顔は、切ってしまえ、ということになるが、か弱い小さな命でも、それを大切にしたい。そんなやさしい心根が表れているから、この句は有名になったのだろうし、また、そこには、日本人の、自然に対する細やかな感性が表れていると思う。

2013-10-29 06:43:06
茂木健一郎 @kenichiromogi

あお(5)人間の記憶というものは不思議なもので、朝顔の句の次に思い出したのが、イギリスに留学している頃、よくテレビのニュースでやっていた、道路か何かの建設の予定地に樹木があって、その樹木に自分を縛り付けて切られないようにしている、若者たちの風景だった。

2013-10-29 06:45:23
茂木健一郎 @kenichiromogi

あお(6)朝顔につるべをとられてもらい水する人と、木が倒されないように自分を縛り付けて何日も抵抗する人は、同じように自然を愛しているようでいて、どこか大切な違いがあるような気がして、その事がずっと気になって、今朝は、このような連続ツイートを書いているのだと思う。

2013-10-29 06:46:25
茂木健一郎 @kenichiromogi

あお(7)「朝顔」の句に現れているのは、自然保護などといった大仰な思想ではなく、日常生活のなかの、本当に小さな心の動きである。その後、他の住人が朝顔を切ってしまったかもしれないし、やがて枯れたかもしれない。動物が食べてしまったかもしれない。いずれにせよ、ひとときのやさしさ。

2013-10-29 06:47:52
茂木健一郎 @kenichiromogi

あお(8)一方、道路建設で切り倒される木に自分を縛り付けてずっと抵抗している若者には、自然保護の断固たる思想というか、イデオロギーが感じられる。その延長線上にはグリーンピースがあり、シーシェパードがあるだろう。最初は素朴な感情から生まれたかもしれないが、やがて持続する意志となる。

2013-10-29 06:49:15
茂木健一郎 @kenichiromogi

あお(9)細やかな心遣いと、継続するイデオロギー。どっちがいいとも、悪いとも言えない。ただ、今朝コンビニに行きながら、ふと道ばたの朝顔に目を留めて、こんなことを考えたうえで思うのは、小さな心の動きに気をとめる感性だけは失わないでいたいということ。朝顔くん、おはよう。

2013-10-29 06:50:54
茂木健一郎 @kenichiromogi

以上、連続ツイート第1078回「朝顔くん、おはよう!」でした。

2013-10-29 06:51:16