僕はいかにして宮台真司に感染したか

 社会学者、宮台真司先生に感染したファンとして、宮台先生の言説の中核だと思える思想を剔抉しました。(文中敬称略)
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倉沢 繭樹 @mayuqix

  ■余は如何にしてミヤダイストとなりし乎  1995年、オウム真理教による地下鉄サリン事件が起こり、教祖、麻原彰晃は逮捕された。それから程なくして、コンビニである本を見かけた。それが『終わりなき日常を生きろ』だった。著者は宮台真司というひとらしい。

2013-11-01 16:48:24
倉沢 繭樹 @mayuqix

変なタイトルの本だな、と思って気にはなったが、手に取ることはなかった。それから少しして、解剖学者の養老孟司とともに、宮台真司がニュース番組でオウム真理教について語っているのを観た。「麻原は水中に長時間潜っていられる、と学生が言うんですけど、虚血になって死にますよね。

2013-11-01 16:49:14
倉沢 繭樹 @mayuqix

それを知っているはずなのに、どういうことなんだ、と思うわけです」と養老が言った後、宮台は「終わりなき日常」と「さまよえる良心」というキーワードを掲げ、微笑みながら見ている養老の横で、滔々と自説を展開し始めた。これが宮台真司という社会学者を印象に刻んだ最初だった。

2013-11-01 16:49:58
倉沢 繭樹 @mayuqix

ブルセラ・援助交際を擁護するブルセラ論戦のさ中、通っていた大学の校門に「ブルセラの宮台真司氏来る」という講演会の看板を見たのが、その年の秋だった。授業があって参加できなかったが、この辺りから、宮台の言説を意識するようになった。

2013-11-01 16:50:26
倉沢 繭樹 @mayuqix

 漫画雑誌『ガロ』のマンガ評論新人賞に応募するため、参考文献として初めて読んだのが『サブカルチャー神話解体』だった。統計分析や機能分析によって、サブカルの内容ではなく、その受容形式を焦点化する方法論に当惑した。それは「目から鱗」体験だった。

2013-11-01 16:50:54
倉沢 繭樹 @mayuqix

 宮台は、毎年年末になると、自己のあまりの不自由さを思って鬱状態になるという。僕もこれまで、重い鬱状態に陥ったことが3度あった。1度目は、大学を中退して地元に戻ってきた1997年。抑鬱状態にあったとき、島田雅彦の小説を読んでいて、文章中の「死」の文字が目に飛び込んできて、

2013-11-01 16:51:32
倉沢 繭樹 @mayuqix

発作的に睡眠薬を大量服用した。親が僕の異状に気づき、救急車を呼んで助かった。この後、初めて目に止めた『終わりなき日常を生きろ』や『まぼろしの郊外』を読むようになった。2度目は、1999年。ひきこもりになったが、R・D・レイン『ひき裂かれた自己』を読んだことをきっかけに、

2013-11-01 16:52:24
倉沢 繭樹 @mayuqix

何とか立ち上がった。  2000年、書店でアルバイトをしていたとき、休憩時間に何となく読んでいた雑誌『ダ・ヴィンチ』に、宮台の映画評論「オン・ザ・ブリッジ」を見つけた。塚本晋也監督『バレット・バレエ』を論じた連載第2回目で、

2013-11-01 16:53:37
倉沢 繭樹 @mayuqix

「自己確証が(意外にも)自己破壊を帰結することで(意外にも)癒される」というモチーフを剔抉していた。映画好きの僕は、その批評に打ちのめされた。  2001年、鈍行列車で日本縦断ひとり旅を決行した。旅行に出発する前に、アメリカ同時多発テロが起こった。旅行から戻った後、

2013-11-01 16:55:47
倉沢 繭樹 @mayuqix

『制服少女たちの選択』を初め、『サイファ 覚醒せよ!』『自由な新世紀・不自由なあなた』などを読み進んだ。そして、2003年、アメリカを主体とした有志連合によるイラク戦争が始まった。テレビで米英軍のバグダッド空爆を見た。僕はずっとアメリカに対して、何だかんだ言っても自浄作用が働く

2013-11-01 16:57:03
倉沢 繭樹 @mayuqix

「いい国」だというイメージを持っていた。しかし、事ここに至って、ようやくアメリカに幻滅した。何十冊かのアメリカ関連の本などを読み、自分なりにアメリカ論をまとめた。書き終えた翌年、2004年の初め、あまり眠れずに目を覚ましたある日の早朝、歩こうとして意識が朦朧となり、倒れた。

2013-11-01 16:57:54
倉沢 繭樹 @mayuqix

何とか自分で救急車を呼んだ。医者には不安神経症だと言われた。これが3度目の鬱状態だった。心療内科に通いながら、静養する日々が続いた。そんな中、図書館でふと『ダ・ヴィンチ』のバックナンバーを見つけ、宮台の映画評論を読んだ。過去の連載すべてが読みたくなり、

2013-11-01 16:58:45
倉沢 繭樹 @mayuqix

バックナンバーを漁って読み耽った。僕は宮台の映画批評にのめり込んだ。あるときなどは、右翼青年が北一輝を夢に見るがごとく、宮台の白昼夢を見た。精神的にかなりヤバい時期だったと思うが、しかし、宮台の映画批評に文字通り救われた。

2013-11-01 16:59:15
倉沢 繭樹 @mayuqix

その後、僕は時々、映画の寸評や出会い系サイトの体験記などを宮台にメールで送るようになった。「同感でした」「面白いですよ」といった返事をもらう度に、僕は小踊りした。

2013-11-01 16:59:40
倉沢 繭樹 @mayuqix

  ■宮台ファン、S君の自殺  宮台真司の著書の中で、意識的に避けていた本があった。ノンフィクションライター、藤井誠二との共著『美しき少年の理由なき自殺』だ。先日、もう自分もある程度年を取ったから、そろそろ大丈夫かな、と思い読んだ。読後、やはり年を取ってからにしてよかった、

2013-11-01 17:00:52
倉沢 繭樹 @mayuqix

と思った。若い頃に読んでいたら、ショックが大きかっただろう。  宮台ファンのS君は、1998年3月に自殺した。彼は、宮台に影響されて実施したフィールドワークの結果や、様々な思索を大学ノート7冊に詳細に記録していた。彼が死の直前に残した恋人宛の文章

2013-11-01 17:03:09
倉沢 繭樹 @mayuqix

「予測される誤認や誤解に対する反論」を一読した宮台は、「これは……昔のおれじゃないか」と呟いた。僕もまさしく、昔の自分をS君に重ねた。  S君には渡辺君という親友がいた。渡辺君は世界や人生に対して「確かに無意味だ。でもそこそこ楽しい」という構えだ。対してS君は

2013-11-01 17:04:48
倉沢 繭樹 @mayuqix

「そこそこ楽しい。でも無意味だ」という構えだ、と宮台は考えた。この分析で、僕は即座に宮台の「世界の構造化」に関する知見を思い出した。世界を有意味だ、と捉えるのも、世界を無意味だ、と捉えるのも、主体を安定させるという意味で機能的に等価だ、というものだ。僕はこの知見に安堵した

2013-11-01 17:06:12
倉沢 繭樹 @mayuqix

ものだった。しかし、「無意味だ」から「そこそこ楽しい」までが地獄の道のりなのだ。  宮台は、ニーチェ=ハイデッガー=フランス現代哲学の対概念「意味/強度」を用いる。渡辺君には「意味がなくても強度(濃密さ)がある」が、S君にはその「強度(濃密さ)」がない。そこそこ楽しい状況でも

2013-11-01 17:07:46
倉沢 繭樹 @mayuqix

「強度」を獲得できれば、「意味」を手放しても生きていける。しかし、「強度」から見放されると、「意味」と「強度」の間で宙吊りになってしまう。そこに生死を分ける差異があるのでは、と宮台は考えた。  終章の藤井との対談で、現代を生きる理想主義者にとって、

2013-11-01 17:08:54
倉沢 繭樹 @mayuqix

単純な理想主義などもはやあり得ず、何かを根拠なく信頼して危険な跳躍をしてみせるために必要な工夫がますます希少化している、と宮台は言う。そしてこう語る。「単純に何かを信頼することはできない。女(男)も信頼できないし、国も信頼できないし、地域も会社も信頼できない。家族も信頼できない。

2013-11-01 17:09:43
倉沢 繭樹 @mayuqix

自分だって信頼できない。愛も信頼できない。思想やイデオロギーも信頼できない。そんなときに何かを信頼して、いっぺんに跳躍するなんて、普通に考えればもうバカげている。それでも、クスリで、電極で、脳を刺激するのを別にして、危険な跳躍をするために何かを信頼することは可能なのか。

2013-11-01 17:10:25
倉沢 繭樹 @mayuqix

こういうふうに抽象的に図式化してみた場合、生きる濃密さを獲得するための条件というのは、まだ十分に探索されているとは思えないんです」。宮台がS君に向けたメッセージだ。

2013-11-01 17:10:54
倉沢 繭樹 @mayuqix

  ■宗教は何のためにあるか  19世紀末の近代社会学誕生以降、宗教定義はおよそ二種類あった。第一は、聖俗二元図式を用いて、聖なるものや聖なる体験を宗教と呼ぶ定義。しかし、聖なるものとは何かをめぐって、この定義は困難に陥る。第二は、究極性や最高性を宗教的なものと見なす定義。

2013-11-01 17:11:55
倉沢 繭樹 @mayuqix

様々な価値には前提-被前提関係があるが、前提とされるものを遡及し続ければ、究極価値や最高価値が見つかるので、それを宗教と呼ぶ。しかし、この定義だと、ケルゼン流の概念法学で把握された憲法や、俗に言う「科学万能主義」の世界観も定義に合致してしまう。

2013-11-01 17:12:33
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コメント

倉沢 繭樹 @mayuqix 2013年11月10日
佐賀のシアター・シエマで行われた若松孝二監督追悼上映の『理由なき暴行』の回で、宮台真司先生の解説を聞きました。夢見心地で、現実感が薄いです。
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