ミューズ・イン・アウト

日本語版公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「うえっ、こいつはひどいな。まるでツキジだぜ」チーフマッポが思わず口を押さえた。細い路地裏はあたかも、何十匹ものマグロがネギトロ・グラインダーに放り込まれたかのような大惨事だ。実際にはマグロではなく、ストリートギャング達であったが。 1

2013-11-02 23:03:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

辺りには手足が何本も千切れ飛び、アスファルトは血に染まっている。抗争だろうか?だが、武器を持っている者はほとんどいない。ドラム缶で焼かれていたと思しきイカケバブの串を握ったままの腕さえある。そして「何だ、こりゃあ……?」チーフマッポは怪訝な顔で、死体のひとつの前で身を屈めた。 2

2013-11-02 23:09:54
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ギャング生首の眉間に突き刺さっていたのは、一枚のスリケンである。「クソ…面倒くせえな」チーフマッポは舌打ちし、それを引き抜くと、ポケットに仕舞った。「何か遺留品でも?」「何でもねえ。バリキドリンク買ってこい」「ヨロコンデー!」レッサーマッポは走ってゆき、雨脚がまた強くなった。 3

2013-11-02 23:16:09
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「次のニュースです。画期的なドゲザ・サービスを導入することで、追加コスト無しに上半期の株価を30%伸ばすことに成功したヨロコビ・マート社に対し、老舗コケシ・マート社の逆襲が始まります。コケシマート、トコロザワ・セントラル店から消費者の声を……」オイランキャスターの胸は豊満だ。 4

2013-11-02 23:21:11
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「出口で必ずドゲザされるのは気持ちがいいね」「毎回利用しちゃうわ」「……大好評です。しかしコスト削減のため、今後はオイランドロイドの導入も……」マッポーに向け加速する閉塞感。淘汰される人間性。「くだらないニュースばっかり。もっと報道すべき事件があるのに」食卓でマツモトが言う。 5

2013-11-02 23:30:33
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ねえ、そう思わない?」食卓の半分以上を占領する書籍や資料の山。僅かな隙間から向こうを覗きこみ、マツモトが聞いた。「ああ、そう思う」男が本に目を落としたまま答える。「例えばそうね、生体LAN端子が人体に与える良くない影響とか……ねえ、そう、タケノコ・ストリートの話、聞いた?」 6

2013-11-02 23:39:12
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「さあ」ホンガンジは彼女が作ったスシを口へ運び、黙々とカロリーを摂取する。サイドだけをぞんざいに刈り上げた髪は実際伸び放題で、色褪せたベロア・ジャケットはまるでサイズが合っていない。彼は全く冴えない物書きだ。「タケノコ・ストリートで、テクノギャングが皆殺しにされた、って話」 7

2013-11-02 23:46:43
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「クズが大勢死んだんだろ?全く、胸のすくような話じゃないか」「でも、ここからすぐ近くよ?怖いと思わない?」「そう思うよ」ホンガンジは構想を練り、上の空だ。「ねえ、これは同僚のキコから聞いた噂だけど、ギャングの死体の額に、スリケンが刺さってたんだって……信じられる?」「いや」 8

2013-11-02 23:51:54
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「一切報道されてないけど、第一発見者のパルクール・ヒキャクが見たんだって。それを聞いてから、通勤時も怖くて落ち着かないの。だってスリケンよ。信じられないけど……もしかしたら……ギャング同士の抗争じゃなくって、ニンジャが……」「バカバカしい話だ、全くね」ニンジャなど実在しない。 9

2013-11-03 00:00:08
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「早く寝て欲しそうね、話しかけて欲しくなさそう」マツモトが溜息をつきながら食器を片付け始める。「ああ」「あなたのインスピレーションになるかと思ったのに」「感謝してるよ、実際ね」ホンガンジは最後のネギトロ・ロールを口に放り込み、資料集を抱えて、巣穴めいた作業部屋へと向かう。 10

2013-11-03 00:04:17
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「電話ドスエ」電子マイコ音声が鳴った。マツモトがLED液晶画面を確認する。ハイテック表示機能により、相手の名前が解る。「シトネ出版社の……マシモ=サンよ。どうするの?」「無視しといてくれ。君はエアロビクスにでも行ってきたらいい」ホンガンジはフスマを閉じて鍵を閉めた。 11

2013-11-03 00:13:28
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アイエエエ!まさかそんな事だとは知らなかったんです!許してください!」繁華街の路地裏で哀れなサラリマンが許しを請う。「ザッケンナコラー!」それを一括する恐るべき暗黒社会スラング!斜め上方では「暴力追放」「ヤクザ」「高速回転」などのネオン看板がバチバチと火花を散らしていた。 13

2013-11-03 00:24:09
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アイエエエエエ!」サラリマンは恐怖で座り込み失禁!「バカハドッチダー!」ヤクザの横では高級オイランが高圧的に煙草を吹かす!「スッゾコラー!アッコラー!」ヤクザがサラリマンの襟首を掴む!「アイエエエエエエ!そんな事だとは知らなかったんです!」恐るべきマイコ・ポンビキの実態! 14

2013-11-03 00:31:22
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「知らなかったで済むかコラー!…アアー?……ダッテメッコラー?」ヤクザはここで、看板の上から回転着地した謎の人影に気付く。ひときわ大きいネオン火花が散り、介入者の姿を照らす。ナムアミダブツ!マイコ・ポンビキ現場に突如現れたのは……ニンジャ!両手に鎖鎌を持ったニンジャである! 15

2013-11-03 00:40:18
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ザッケ……!」ヤクザセンスによって死の危険を察知した彼は、瞳孔の動きだけでサイバーサングラスを暗視モードに切り替え、チャカガンを抜く!だが「イヤーッ!」ニンジャの投げ放った鎖鎌が一瞬早くヤクザの腕を切断!「グワーッ!」斬り飛ばされ鮮血を吹き出す己の腕を見て絶叫するヤクザ! 16

2013-11-03 00:45:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」ダブル鎖鎌で容赦なくヤクザが切り刻まれる!おお……何たる公開処刑めいた一方的攻撃か!「アイエエエエエ!」「ニンジャ!ニンジャナンデ!?」オイランとサラリマンは腰を抜かし呆然とそれを見つめる! 17

2013-11-03 00:51:03
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ヤクザを踏みつけ、謎のニンジャは高級オイランを睨む。「どんな気分だ?」「アイエエエエエ……」「さあ答えてくれ、どんな気分だ?お前を守っていたヤクザは死んだぞ」「ど、どんな気分ですって?」「そうだ」彼はオイランを立ち上がらせ、腰帯を勢いよく引いた!「イヤーッ!」「ンアーッ!」 18

2013-11-03 00:58:47
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

オイランは為す術無く回転し衣服を剥ぎ取られる!「アーレエエエエ!」壁にぶつかり転倒!ニンジャは鎖鎌を収め、歩み寄ってくる!それは逃れ得ぬ死だ!「アイエエエエエエ!」恐怖に呑まれたサラリマンが絶叫し、背を向けて這いずり逃げる!「ンアーッ!」おお、後方ではオイランの嬌声が……! 19

2013-11-03 01:05:41
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「一体どうなってるの、凄いじゃない。日刊コレワに書評よ」マツモトが食卓の向こうのホンガンジに言った。彼の新作バイオレンス探偵小説「竹林に潜むジャックザリッパー」が好評を博しているのだ。「まるで別人のような饒舌な筆致……暴力のヴェールの影に仄見える妖艶なる想像力……ですって」 21

2013-11-03 01:14:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ミューズが降りてきたんだ」ホンガンジはメモ帳に目を落としたままスシを食う。「つまり、どういう事?」マツモトが聞く。「いくらでも書けるって事さ、もっとスゴイ作品が。それでもっと金を稼ぐ」「ねえ、ファックする?」「今は気分じゃないんだ。サツバツとした光景が、頭から落ちちまう」 22

2013-11-03 01:26:11
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「解ったわ、邪魔ってこと。すぐに籠るんでしょ?」マツモトが溜息をつき、食器を下げる。「感謝してるよ」ホンガンジがフスマを閉じて鍵を締める。「続いては、タマ・リバーに今年も現れた三匹のラッコについての微笑ましい続報ドスエ……」TVからは珍しく明るいニュースが流れていた。 23

2013-11-03 01:36:38
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