Tibetan Sand Fox: Beginning

チベットスナギツネの過去が今、明かされる……
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Werner Cpl.Bellner @maschke893

時は1970年代。混迷を続ける世界情勢の中で、アメリカのヴェトナムでの情勢を鑑み、共産勢力に危機感を抱いた英国は、極秘にアジア地域への諜報員派遣を実施した。活動拠点をチベットに据え、対中・露活動を軸としたが、事は思うように運ばなかった。英国人らしい姿が仇となったのである→

2013-11-06 01:14:14
Werner Cpl.Bellner @maschke893

サビルロゥ仕立てのスーツとステッキが目立つ事に気付いた英国は、より目立たない方法を模索した。ある時、モンティ・パイソンを眺めながらアイリッシュを飲んだくれていた諜報員が気付く。「そうだ!現地の動物にやらせればいい!」 この発想は奇抜であったが、それ故に全ての希望が掛けられて行った

2013-11-06 01:20:58
Werner Cpl.Bellner @maschke893

英国はチベット近郊の動物達の中で最も適性があるものを探した。第一の候補はチベットナキウサギ。小型で愛らしく、見つかりにくいからだ。早速ロンドンの民間病院で人語を解する能力を与えられたTPは、現地へと派遣された。一週間後、TPは捕食動物に食われて死んだ。最後の通信は「Bugger」

2013-11-06 01:28:06
Werner Cpl.Bellner @maschke893

悲嘆に暮れる英国諜報部だったが、次は簡単に捕食されない動物を求めた。対象はチベットブラウンベア。SAS1個中隊を派遣し、3日間の銃撃戦の末、隊員三名が重傷を負ったが捕獲に成功した。諜報員化手術の前に、医師が一名死亡したが、手術自体は成功し、再度チベットに送られた

2013-11-06 01:33:58
Werner Cpl.Bellner @maschke893

二の轍は踏むまいと、野外地域での活動を控えるよう警告した英国諜報部は、自らの過ちに気付かなかった。TBBは市内に潜り込み、現地の服を調達しようとして通報され、中国軍戦車大隊との死闘の末、壮絶な最後を遂げてしまった。彼は一人のチベット人少年との間に、何らかの友好関係があったという

2013-11-06 01:42:55
Werner Cpl.Bellner @maschke893

計画そのものが立ち消えとなりつつある中、消失していたTPの緊急信号を受信した。生存に沸き立つ英国諜報部は、通信が不調であることを知り、救出に再度SASを派遣する。現地に到着したSASは、電源不足のために信号が断絶した事を知らされるが、懸命な捜索の末についに発見した。 発信器だけを

2013-11-06 01:49:38
Werner Cpl.Bellner @maschke893

TPは既に排泄物と化していたのだ。国籍も種族も違えど、英国に命を捧げた英雄に隊員達は十字を切った。その背後に冷めた目で彼らを見つめる生き物がいた事に、彼等は振り返るまで気付かなかった。 もうコレでもいいんじゃないか… 彼等は特に抵抗も示さないそれを抱えて帰国した。 それは狐だった

2013-11-06 01:56:45
Werner Cpl.Bellner @maschke893

手術を施された狐は圧倒的な知性と類稀な冷静さを示したが、一つ問題があった。顔が大きく四角過ぎたのだ。予め狐用に開発されていたパラシュート降下装備が装着出来なかったため、専用ヘルメットの開発が遅れ、全ての準備が整ったのは、ベルリンの壁が崩壊してからだった。もはや無意味な計画だった

2013-11-06 02:13:32
Werner Cpl.Bellner @maschke893

チベット潜入工作担当班はなおも共産勢力の台頭を盲信していた。ドイツがなんだ、所詮クラウツはヨーロッパ人だ、と。彼等はアジアを恐れていた。TSFを乗せた輸送機が発進許可を受ける頃、アメリカとロシアは交渉を進めていた。冷戦という時代の閉幕が迫っていた。時代が変わろうとしていたのだ

2013-11-06 02:19:02
Werner Cpl.Bellner @maschke893

チベットの降下地点が迫り、ロードマスターが降下準備を促す。ハッチが開き、漆黒の平原と空が広がる光景を前にしても、TSFは静かだった。ロードマスターがGOサインを出し、ハッチから飛び出す寸前、冷戦の集結と計画の中止が無線に飛び込む。知らされた時、既にTSFは闇夜に身を投げる時だった

2013-11-06 02:24:20
Werner Cpl.Bellner @maschke893

当然、それが何を意味するか、TSFにも分かっていた。人語を解し、軍事知識を与えられ、人間の教養を与えられた自分は屠殺か見世物小屋行きであると。迷う事は無かった。闇に飲まれる瞬間、彼はロードマスターの、そしてそれが最後となるであろう人間の言葉を聞く。 「Oh, Dear...」

2013-11-06 02:28:31
Werner Cpl.Bellner @maschke893

その後のTSFの行方は知られてはいない。フィッシュ&チップス片手に投げやりに急造したヘルメットが合わず、夜間降下に失敗して死んだとも、人語を忘れ、野生に返ったとも言われている。かの狐は暫定的に「チベットスナギツネ」と呼称された。これは当「オペレーション・チベタンサンド」に由来する

2013-11-06 02:36:52
Werner Cpl.Bellner @maschke893

そして時は流れ、BBCは希少な狐の撮影に成功する。その生き物の名は…

2013-11-06 02:39:23
Werner Cpl.Bellner @maschke893

「紗希、なんとこのワンちゃんは喋るんだ」 「俺は犬じゃない」 END

2013-11-06 02:44:02
Werner Cpl.Bellner @maschke893

「っていう電波受信したんだ。気付いたらこんな時間だ」 「トム、貴方はどこから来て、一体何をしたいの?」 http://t.co/jEewb9EnS2

2013-11-06 02:46:46
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