リヴィング・ウェル・イズ・ザ・ベスト・リヴェンジ #4

日本語版公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【リヴィング・ウェル・イズ・ザ・ベスト・リヴェンジ】#4

2013-11-11 13:39:53
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(あらすじ:アマクダリ・セクトの魔人フージ・クゥーチの呪い、そしてカラテ戦士インターセプターのワザマエにニンジャスレイヤーは敗れ、キョート大使は暗殺されて、戦争が勃発した。瀕死のニンジャスレイヤーをドリームランド埋立地に運んだ謎の老ニンジャはマスター・ヴォーパルと名乗る)

2013-11-11 13:42:16
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(かつてバジリスクやニーズヘグを鍛え育てたという老人は不甲斐ないニンジャスレイヤーに債務を負わせ、その返済の為に修行を課した。過酷なインストラクションは洞窟のビヨンボ(訳注:屏風)からタイガーを呼び出す神秘的ザゼン修行に結実する。)

2013-11-11 13:46:59
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(ニンジャスレイヤーはザゼンで深層意識に潜り、フージ・クゥーチの呪いによってニューロン内に作り出された隔離空間サップーケイに突入した。イマジナリー戦闘の無間に絡め取られたナラク・ニンジャを解き放つために。彼らと相対するは、かつて激しいイクサを繰り広げたインターラプターの影……)

2013-11-11 13:50:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

インターラプターの身体がゆらりと動いた。彼が取ったのは絶対防御カラダチの構えである。二者を取り巻く墨絵空間を、放射状に吹き荒れる風が洗う。頭上には金色に輝く立方体が浮かぶ。地平の果てにはトリイ・ゲートが出現した。あれは帰還手段だ。既にこの空間を封じる障壁は失せたのである。 1

2013-11-11 13:58:14
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

この世界はじきに自壊する。だが、その前にやるべき事が残っている。インターラプターを喚び出したのはニンジャスレイヤー自身の意思であった。彼はインターラプターの非道な殺戮を、そののち浮浪者シェルターで生きたさまを思う。ニンジャの生を。「フジキド」ナラクが念話を飛ばした。 2

2013-11-11 14:10:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「おめおめと、たわけに戻って参ったわけではあるまいな」「ナラク」ニンジャスレイヤーはチャドーの呼吸を深める。その双眸が赤く光り、ニューロンの、血管の、筋組織の端の端まで、赤黒の邪悪なニンジャソウルが浸透する感覚をおぼえる。深い合一だ。そして、ここより前に彼が戻ることはない。 3

2013-11-11 14:14:14
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「おれのカラダチとタタミ・ケンに敵はない」インターラプターは言った。「来い。時間はまだまだある」大地に焦げ茶の色彩が生じる。石くれがパラパラと浮き上がり、空へ吸い込まれる。二者はじりじりと間合いを詰めてゆく。呼吸のリズムが噛み合った。初撃は同時だ!「「イヤーッ!」」4

2013-11-11 14:21:28
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

二者がカラテを打ち合わせるたび、衝撃波は風となって、崩れゆく世界を震わせた。糸口を。糸口を見出すべし。インターセプター攻略の糸口を。アマクダリ攻略の糸口を。その先を!光を!カラテのその先に!「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」5

2013-11-11 14:27:21
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

0100010110111……「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーの繰り出した拳は、洞窟を照らす金色の光の中、飛びかかるタイガーの顔面を真芯に捉えた!「GRRRRRR!」「イイイイイイヤァーッ!」更にその顎の根元へ!最後のアッパーカット!6

2013-11-11 14:30:42
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ゴアアアアオオン!」金色の虎は激しい熱と火花に還元され、爆散した。ニンジャスレイヤーはザンシンし、周囲を認識した。目の前にはタイガーのビヨンボがある。彼は手のひらを見つめた。握り、開く。両目の赤い光は徐々に薄れ、赤い虹彩が留まった。それが彼の、一生戻る事のない瞳の色だ。 7

2013-11-11 14:37:16
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

洞窟を去り際、ニンジャスレイヤーは一度振り返った。ビヨンボの周囲にアグラするニンジャ達が一斉に顔を上げ、見返した。瞬きすると、その姿は消え失せた。「終わったか!」洞窟の外で待ち構えていたのはマスター・ヴォーパル、携帯コンロの鍋から顔を上げる。「終わったか!この飯は俺様の分だ!」8

2013-11-11 14:52:49
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「終わったぞ」「チョージョー」マスター・ヴォーパルはアンコシチューを椀によそいながら、ニンジャスレイヤーの目を見た。「いや、ナムアミダブツか。オバケじみた事になったな、エエッ?」「問題無い」「……よかろう。シャンとしろよ」「うむ」「このシチューはダメだ。大根でも取って来い」9

2013-11-11 15:00:19
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「何をしに来た」「そりゃァ、テメエがオーバードーズで死んだら死体を回収せにゃならんだろう。大事なザゼン・スポットに腐乱死体はマズイ」彼はズヒズヒと音を立ててアンコシチューを啜り、「で、うまくいったッてんなら、当然、賞品の授与がある。俺様のドージョーは至れり尽くせりよ!」 10

2013-11-11 15:05:14
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「賞品?」「そうだ!これだ!」彼は懐からシワシワのオリガミを取り出し、開いて見せた。のたうつような字で、「マスター・ヴォーパル先生免許の皆伝」とショドーされている。「ありがたく取っとけ!全国のデパートやレストランで100%のディスカウントだ!お前のワザマエ次第で!」 11

2013-11-11 15:09:35
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

老人はオリガミをスリケンの形にたたみ直して渡した。「何だ。ああ、副賞が気になっとるな、その顔は。いいか。ウチのドージョーは至れり尽くせりよ。ドラゴン・ゲンドーソーのようなピューリタニズムは無い!俺様がわざわざここへ来たのは死体回収の為だけじゃねえんだ。ここから近い!」12

2013-11-11 15:21:08
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

……食事を終えたマスター・ヴォーパルは、ニンジャスレイヤーを伴い、土砂崩れ跡の上へ奥へと進んで行った。驚くべきことに、第二の洞窟が実際存在していた。キーコード認証をマスター・ヴォーパルが勿体つけて行うと、鋼鉄のゲートはゴウゴウと音を立てて上に開いた。 13

2013-11-11 15:25:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ここは、いわば俺様の資材の隠し場所だ。わかるだろ?こういう工夫が必要だ」徐々に下る狭い通路を、マスター・ヴォーパルはスタスタと歩いてゆく。「ここは、昔の誰やら、下級ニンジャ豪族の遺跡の改装よ!カネをかけたンだ。キョート・ワイルダネスにも巣を作ったが、あっちは飽きた」 14

2013-11-11 15:33:45
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

やがて彼らはタタミ敷きの空間にエントリーした。広さはビヨンボ・ザゼンの洞窟と大差ない。奥にも通路があるが、「関係者」と書かれた厳めしいシャッターに塞がれている。ニンジャスレイヤーは壁沿いにずらりと並べられた品々に注目した。「好きな武器をひとつ取れ」とヴォーパル。「実際安いぞ」15

2013-11-11 15:40:54
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤーは腕を組み、無言である。マスター・ヴォーパルは武器を構えて並ぶニンジャ像や、籠に投げ込まれた複数の刀剣類のもとへ歩いていく。「ワインもある。だがワインはダメだ。そうさな、例えばこれだ」彼は奇怪な三日月状の湾曲剣を手に取った。「わかるか!貴様にこの凄みが!」 16

2013-11-11 15:47:20
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……」「これは、盾を構えたニンジャとの戦闘で非常に役に立つ!ショーテル剣だ。この湾曲で、盾を飛び越えて、こうだ!脳天を直撃!骨董だぞ!ダマスカス鋼だ。プロペラ戦闘機ぐらいの価値があるが、キャデラック一台の値段で我慢してやる」ニンジャスレイヤーは首を振った。17

2013-11-11 15:50:13
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ダメか?なんたるワガママ!ではこれだ」マスター・ヴォーパルは飾り鞘から一振りの剣を抜いてみせた。「俺の短剣を鍛えた刀匠のクランの、200年後の作だ。価値は随分落ちるが、周囲のニンジャを感知する力はちゃんと伝えられ……要らんか。ペッ!ニンジャ感知能は修行で身につくからな」18

2013-11-11 16:05:07
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

マスター・ヴォーパルは邪悪なアフリカ投げナイフめいたスリケンを指し示した。「あれはどうだ?ヘビ・ニンジャ・クランの武器よ。ヘビ・ニンジャ・クランは技巧に長け、実際バジリスクとニーズヘグの武器は……ダメか?よくよく堪忍袋を温める男よ」老人は肩をすくめる。「ならばベンケの武器だ」19

2013-11-11 16:11:23
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

老人は右手に金棒、左手にサスマタを持って、見せびらかした。「多分本物だ!ベンケ・ニンジャを知っておるな?ムテキ・アティチュードにも長けていたとされるニンジャ戦士……」ニンジャスレイヤーは身をかがめ、籠の中の有象無象の中からひとつ、取り出した。老人は顔をしかめた。「それを?」 20

2013-11-11 16:16:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤーは頷いた。「ヌンチャクは過去によく使っていた武器だ」「ものの価値のわからんやつ!」マスター・ヴォーパルは溜息をついた。「骨董的価値も資料的価値もなし!そいつはどこかの列車強盗か何かの武器だ。なんのニンジャ・エンチャントメントも無いぞ!」「実際安いわけだな」21

2013-11-11 16:19:35