東京新聞:「ハンナ・アーレント」 異論貫く生涯 共感「上映1時間前には約50人がチケット売り場に列をつくった」←数年前のサンデル・ブームみたいになるのかな?とりあえずよかったね、ヒットしてるようで。 http://t.co/teh3pnuVJV
2013-11-12 19:57:39こないだ「政治における嘘・イデオロギー」についてやりとりしたので、映画に絡んでハンナ・アーレント『暴力について』所収「政治における嘘」で気に入ってる部分を抜書きします。今日的な題材ですので。引用は山田正行の訳。 http://t.co/06xyQMn3vZ
2013-11-12 21:39:111.ハンナ・アーレント『政治における嘘』は、嘘には能動的な嘘と受動的な嘘の区別があって、政治における嘘は前者であるとする。そして、そういう嘘は公衆にとって「事実」よりも受け入れやすい特徴を持つと指摘する。
2013-11-12 21:39:462.<誤謬を犯し、錯覚に陥り、記憶が歪む、その他何であれ、感覚的および精神的器官の欠陥に原因を求めることのできる間違いを犯しやすいという受動的な性質とは明らかに異質なものである。>
2013-11-12 21:40:023.<いかなる事実についての言明でも疑いの余地がないということはありえない。たとえば二足す二は四であるという言明のように確実で攻撃から守られているものなのではない。>
2013-11-12 21:40:244.<欺瞞が「ある程度まで」はきわめてたやすいものであり、また人がその誘惑にのりやすいのは、事実のもつこの脆弱さのためである。事態がまさしく嘘をつく人が主張するとおりであるかもしれないので、欺瞞はけっして理性と対立するようにはならない。>「」内は原文強調
2013-11-12 21:40:425.<嘘をつく人は聴衆が聞きたいと思っていることや聞くだろうと予測していることを前もって知っているという非常に有利な立場にいるので、嘘はしばしば現実(リアリティ)よりもはるかに真実味があり、理性にアピールする。>
2013-11-12 21:41:026.<嘘をつく人は公衆が信用して受け入れてくれるように注意深く目配りしながら物語を用意するが、現実(リアリティ)はわれわれが受け入れる準備のできていない予期せぬものをつきつけるという、いやな習慣をもっている。>
2013-11-12 21:41:177.つづいて「問題解決屋」という存在を暴き出し、彼らがたとえ誠実ではあったとしても、問題点の落としどころを設定しそこに解決を導くその手法が問題解決から程遠い虚偽であると喝破している。
2013-11-12 21:41:378.<理性の偶然性嫌いはきわめて強い。「哲学的考察は偶然的なものを除去する以外のいかなる意図ももたない」と考えたのは、壮大な歴史図式の父ヘーゲルであった。事実、現代の政治理論の武器庫にあるものの多く――ゲーム理論やシステム分析、想定される「聴衆」のために書かれたシナリオ(続く
2013-11-12 21:42:059.続き)、通常三つの「選択肢(オブセッション)」(A・B・CのうちAとCが両極端を表しBが問題の「論理的」中道的「解決」を表す)からなる慎重な列挙――は、この根深い嫌悪に由来している。>
2013-11-12 21:42:2810.<このような思考法の誤りは、その選択を互いに相容れないディレンマのなかに押し込んでしまうことに端を発している。現実(リアリティ)は、論理的帰結を引き出すための前提のようなきちんとしたものを提供することはけっしてないのである。>
2013-11-12 21:42:4311.<AとCとをともに望ましくないものとし、それゆえにBをよしとするような種類の思考は、無数にある真の可能性から人の気をそらし、判断力を鈍らせる以外のどんな役にも立たない。>
2013-11-12 21:43:0812.<これらの問題解決屋たちとほんものの嘘つきとの共通点は、事実を抹殺しようとする目論見と、事実がほんらい偶然的なものであるがゆえに抹消は可能であるという自信をもっていることである。理論によっても意見の操作によってもそのようなことはけっしてできないというのが事柄の真相である(続
2013-11-12 21:44:0113.続き)―事実の抹消は、あたかもある事実を世界から安全に除去するには十分な数の人びとがそのような事実は存在しないと信じさえすればよい、というに等しい。それは徹底的な破壊によってのみなすことができる――スミス夫人は死んだといってから彼女を殺しにいく殺人犯のような場合である。>了
2013-11-12 21:44:36@discusao ハンナ・アーレント 山田正行訳『暴力について』。表紙のヘビースモーキンなハンナを拝むのもまたよし、な一冊。
2013-11-12 21:46:47