茂木健一郎(@kenichiromogi)さんの連続ツイート第1091回「良問も、検定もいらない」
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連続ツイート第1091回をお届けします。文章は、その場で即興で書いています。本日は、アメリカから日本に帰ってくる飛行機の中で、つらつら考えていたこと。
2013-11-16 07:22:07りけ(1)アメリカでツイートを見ていたとき、誰かが、「でも、日本の東大とかの二次試験は、考えさせる良問だ」みたいなことをつぶやいていて、そうそう、そこがポイントなんだよな、と思いながらも、向こうでは時間がなかったので、そのことについてつぶやくことができなかった。
2013-11-16 07:23:09りけ(2)確かに、東大の二次試験は、「良問」なのかもしれない。しかし、問題は、「良問」でさえ、十分ではないということだ。本当に大切なのは、自分自身で問題を見つけること。問を立てること。どんなにすぐれた問題でも、「解く」能力を見るだけでは、今の世界に必要とされている人にはなれない。
2013-11-16 07:24:29りけ(3)アメリカ滞在中に初めて知ったSnapchat。一度見たら、もう見れず、サーバーにも残らないという。ツイッターやフェイスブックのような、記録を蓄積してビッグデータの解析をするというアプローチとは真逆。デジタルの有利さを敢えて捨てる戦略だが、これが的中した。
2013-11-16 07:26:12りけ(4)コミュニケーションには、それが残ってはむしろ困るのであって、消えてしまった方がいいものもある。一部で問題になっている、性的に露わなやりとり(sextexting)もその一つの応用だろうが、それだけではない、さまざまなスペクトラムがあるだろう。
2013-11-16 07:27:55りけ(5)フェイスブックが三千億円で買収のオファー、というニュースに続いて、グーグルも、実は四千億で買収のオファーを出していたと言われるsnapchat。スタンフォード大学の学生が創業して二年でそこまで言ったのだが、現代社会で求められているのは、このような発想力だ。
2013-11-16 07:29:10りけ(6)「記録が残らないコミュニケーションのツールをデザインせよ」という問題を出したら、解ける人は多いかもしれない。しかし、本当に問題なのは、そのようなアングルでのシステム構築を思いつくことであって、そのような能力は、どんな「良問」の入試でも、見ることはできない。
2013-11-16 07:31:01りけ(7)そして、今朝の朝日新聞の一面を見たら、「教科書に政府見解記載」という見出し。近現代史の検定の話だが、問題の本質は、そんなところにはきっとない。南京事件にしても、領土問題にしても、たった数行の記述をどう書くか、というアプローチをとっていること自体に本質的な問題がある。
2013-11-16 07:32:16りけ(8)いわゆる南京事件については、いろいろな説、議論がある。本当の教育とは、さまざまな資料を出して、自分で考えさせること、歴史とはどのように記憶され、つくられていくのか検討させることだろう。政府が検定に関与するのが問題なのではない。そんな薄い教科書であることこそが問題なのだ。
2013-11-16 07:33:53りけ(9)教科書が、「検定」できるような、薄っぺらい、「役所の公式文書」のような紙であること。そこに、日本の初等教育の根本的な問題があるのに、それに気づかない。その錯誤は、ちょうど、入試の問題が「良問」であるかを論じている錯誤に似ている。そんなところに、問題の本質はないのだ。
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