マスター・オブ・カブキ・イントリーグ ＃１

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【マスター・オブ・カブキ・イントリーグ】＃１

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ウシミツアワー。犯罪の時間。フスマが破られるような短い破裂音と火花に続いて、偽造デジタルカードのスワイプ音が響いた。バラクラバ帽にサイバーサングラスをかけたスーツ姿の男３人が、忍び足で無人の事務所内へと潜入する。　1

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チチチチチチ……最新鋭のサイバーサングラスから赤外線レーザーが照射され、薄汚い探偵事務所内をスキャンする。奇跡的なバランスで積み上げられた薄汚い資料やUNIXの山は、まるで何個もの偉大なるジェンガめいて聳え立っており、活動の痕跡を残さずに任務を達成するのは実際不可能と思えた。　2

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三者は厳めしい口元をきつく結び、一言も発そうとはしない。「汚い事務所ですね」「メインデッキ何処ですか」「右フスマ奥でHDD発光」代わりにサイバーサングラスの外側液晶面には、無機質な赤色LED文字が流れる。彼らが良く訓練を受けた者達である証拠だ。「誰か居たら」「殺してください」　3

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「基本的に誰もいません」「確かに居ません」「生体反応が無い」謎の侵入者たちは息を殺し、細い足場を巧みに抜け、一糸乱れぬ足取りで強化フスマの奥へと進む。そう、今夜ここには誰も居ない。この事務所の主であるタカギ・ガンドーは、現在ネオサイタマでとある少女の行方を追っているからだ。　4

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彼らは古びた推理机の上に置かれたメインUNIX端末に近づき、小型ラジカセめいた装置を直結する。あとはプログラムが全てを片付けてくれるだろう。独りが端末操作に残り、あとの二人は貴重品等を探し、適度に室内を荒らす仕事を開始した。むろん、偽装のためだ。　5

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バラクラバ男の独りが、事務机の引き出しから少し古いカトゥーン・リーフを取り出す。強面の私立探偵事務所には、いささか場違いな代物だ。さては中に何か貴重品が挟まっているのか。それを広げた次の瞬間、彼らが突破してきた正面ドアが勢い良く開かれ、冗談のように巨大な二丁拳銃が火を噴いた。　6

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画期的な３Dエフェクトだ。「あいにく俺は生きてたのさ……こいつでどうだ、BLAMN！」と大仰なオノマトペ・フォントで書かれたカトゥーンの大ゴマを49口径弾丸が突き破って飛び出し、そのままバラクラバ男の頭を吹き飛ばした。「グワーッ！」即死！　7

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「ザッケンナコラー！」隣に居たバラクラバ男が恐るべき闇社会スラングを吐き捨て、カスタムチャカガンを抜いた。だが遅い。戸口に立った二丁拳銃の男は、既に二発目のトリガを引いていたからだ。BLAMN！「アバーッ！」再び49口径マグナム弾が標的の頭をフルーツめいて粉砕。「ハッハー！」　8

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「スッゾコラー！何故ここにテメッコラー！」BLAMBLAMBLAM！三人目が銃を抜き、UNIX室の強化フスマに身を隠しながら銃撃！「おっと！あぶねえ！」薄汚い革コートを着た二丁拳銃の巨漢は、ソファーの陰に飛び込んで銃弾をかわす。彼はニンジャだが、以前の癖がどうしても抜けない。　9

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特に違法薬物ZBR摂取によるニューロン加速時は、ニンジャよりも私立探偵としての性質が強まる。彼がZBRを使用するのはのっぴきならない事態が訪れた時だけだ。そして今、まさに彼はそのような陰謀の渦中にいたのである。「おい、俺はニンジャだぞ！風に乗るニンポで、東から西へ一瞬だぜ！」10

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「ザッケンナコラー！」罵声と銃声が返答だ。「しょうがねえな……この辺か」BLAMN！彼はソファの陰から勘を頼りに射撃。武骨な弾丸は資料ジェンガを二つ崩して一直線に飛び、防弾加工が施された強化フスマを貫く。そしてその向こう側にいる敵の脛を撃ち抜いた。「グワーッ！？」タツジン！　11

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「安普請ですまねえな。49口径弾なんてのは保証外なんだ」大男はゆっくりと歩み寄る。「グワーッ貴様！」バラクラバ男がもがく。「おい、いいか、あんた！諦めな！勝ち目ねえぞ！」空気を震わす偉丈夫の大音声。「俺の言う通り、ネコみたいに素直になったら、ヤミ医者に連れてってやるぜ！」　12

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敵はまだ拳銃を離さない。マズいな、と私立探偵は小さく舌打ちする。「オイオイオイ、変な気を起こすんじゃねえぞ。確かに俺ァな、ちょっとばかり怒ってた。クソみてえな仕事を掴まされたからだ。しかも事務所を荒らされてんだ。でもな、俺は無力化した奴を殺して喜ぶようなサイコ野郎じゃねえ」　13

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BLAMN！銃声が事務所に鳴り響く。だがそれは49口径の発砲音ではない。「アバーッ！」侵入者は自らのこめかみに向け、躊躇無く弾丸を撃ち込んだのだ！セプク！何たる揺るぎない証拠隠滅精神か！「ブッダミット！」私立探偵は顔を歪めて飛び掛かるが、一瞬遅かった。相手は既に死体である。　14

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「オイオイオイ、参ったなこりゃ……何だこりゃ」偉丈夫は舌打ちし、室内の灯りを点ける。その正体は、やはりタカギ・ガンドー！この探偵事務所の主だ。彼はネオサイタマの端末からキョートの依頼者に対して偽りの電子捜査日報を提出してアリバイ工作し、密かにガイオンへと戻っていたのである。 15

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無論、ネオサイタマで負ったガンドーの傷は、完全には癒えていない。この強行軍も、依頼者の正体を暴くための実際危険な賭けなのだ。「……こいつら、クローンヤクザか」念のためバラクラバ覆面を剥ぐが、そうするまでもなく彼らの血液の色で解っていた。「それも相当特殊な訓練を受けてやがる」　16

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だがクローンヤクザというだけでは、敵組織の正体を掴んだとは言い難い。「こいつら、俺が居ねえのを知ってやがったよな……」ガンドーはスーツ裏ポケット刺繍やヤクザ手帳、機材等を入念に調べた。そして彼は発見する。共和国の古参ヤクザクランのひとつ、スタグビートル・ヤクザクランの紋を。　17

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「オイオイオイ、妙にアッサリと割れるじゃねえか。余計にキナ臭くなってきやがったぞ……」ガンドーは頭を掻いた。私立探偵のニューロンが一足飛びに何らかの危険を報せているのだ。死体を片付けたならば、キンギョ屋の所に赴き、ヤクザクランに関する最新の闇情報を買い付けねばなるまい。　18

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

体が軋み出す。まだ修羅場は続きそうだ。ガンドーは助手に小さく謝りながらZBR煙草を吹かした。「フゥーッ……これもオペレイション・マジックモンキーの一部か？敵の顔が見えやしねえ……」違法な煙を吐きながら、唯一知り得たその単語を呟く。敵はおそらく政府筋。それ以上は何も解らない。　19

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【NINJASLAYER】

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「オイオイオイ、妙にアッサリと割れるじゃねえか。余計にキナ臭くなってきやがったぞ……」ガンドーは頭を掻いた。私立探偵のニューロンが一足飛びに何らかの危険を報せているのだ。死体を片付けたならば、キンギョ屋の所に赴き、ヤクザクランに関する最新の闇情報を買い付けねばなるまい。　18

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体が軋み出す。まだ修羅場は続きそうだ。ガンドーは助手に小さく謝りながらZBR煙草を吹かした。「フゥーッ……これもオペレイション・マジックモンキーの一部か？敵の顔が見えやしねえ……」違法な煙を吐きながら、唯一知り得たその単語を呟く。敵はおそらく政府筋。それ以上は何も解らない。　19

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

敵の顔は判然としない。まるでカブキだ。果たしてこのカブキめいた陰謀を操る相手は何者か？「まさか、共和国議会やガイオン元老院じゃねえだろうが……ぞっとしねえな……私立探偵の勝てる相手じゃねえぞ」ガンドーの吹いた煙が視界を満たす。「５マイル先まで霧」のコトワザが脳裏をよぎった。　20