「スリー・ニンジャズ・アンド・ベビー」#2 ――『ニンジャスレイヤー』二次創作小説
- USAGI_koTENGU
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サイバーパンクニンジャ活劇『ニンジャスレイヤー』二次創作集『ニンジャ・ラン・ウィズ・ネオサイタマ・ランドスケープ』より。
2013-11-22 21:07:17(前回までのあらすじ)(近未来都市ネオサイタマを牛耳る暗黒ニンジャ組織ソウカイ・シンジケートは崩壊した。その空隙に滑り込んだ西のザイバツ・シャドーギルドはニンジャを派遣、その一人イグナイトは暇つぶしの殺戮の後、ストーンコールドと名乗るニンジャから布包みを強奪した)
2013-11-22 21:03:41(布包みの中身は……ブッダ!頑是無い赤子!それを手に彼女が訪れたのは、いま一人のネオサイタマ常駐ニンジャ、アンバサダー。静かなドージョーに泣き声が響き……どうなる?どうする?前代未聞のニンジャ&ベビー・ストーリー、続きはここから!)
2013-11-22 21:05:27深夜……ネオサイタマの闇を駆ける者あり。高層ビルから別のビルへ、軽々と飛び移るは何者?……しかり、しかり。イグザクトリー。それはニンジャである! 1
2013-11-22 21:08:24メンポの上の虚ろな眼差しは、目の前の光あふれる近未来都市のマンゲキョめいた美しさに小ゆるぎもせぬ。ただ己の行く先のみを見つめ、跳躍と疾走のルートを判断するための、ニンジャ知覚力の情報源としてのみ活用する。彼はニヒリストであり、リアリストであった。 2
2013-11-22 21:10:49アドバンスド・ショーギのグリフォン駒めいた無駄のない動きで、彼はビルとビルを跳躍と疾走で結び、駆け抜ける。小脇に抱えた耐酸性バッグを高く投げ上げたのも、続くビル壁面を蹴っての回転跳躍の頂点で受け取るため。そのままビルを飛び越し、別のビルの壁面を蹴って回転、地に降りた。 3
2013-11-22 21:13:19地を駆けるニンジャは、やがて閑静な住宅街の一角に足を踏み入れる。カネモチたちがその贅を見せつけるために、あえて江戸時代風にしつらえた石壁が続く広い街路。そこを影が伸びるより早く駆け抜けたニンジャは、ある角を曲がったところで、ジッポーほどの大きさの機械を取り出した。 4
2013-11-22 21:15:36スイッチを入れると、機械はかすかなBEEP音を発する。片手にそれをかざしながら、彼はある邸宅の石壁を回転ジャンプで飛び越えた。機械の発する特殊な信号が石壁が放つセンサー網に反応、警報を無効化し、同時に内部の仲間に到着を知らせる。闇にそびえるドージョーの入り口に人影が立った。 5
2013-11-22 21:17:22ニンジャは速度を落とす。「ドーモ、アブサーディティ=サン。ご苦労だった」アイサツを寄越す人影の前で足を止めた。「ドーモ、アンバサダー=サン。依頼の品だ。中身を改めよ」そして脇に抱えた耐酸性バッグを無造作に突き出した。 6
2013-11-22 21:19:13「ホギャー!ホギャー!」静かなドージョーに泣き声が響く。「不如帰」とショドーされた掛け軸が、ボンボリ・ライトの奥ゆかしい光が、その泣き声に揺らぐ。「チッ、ウルセェなァ」片手を枕に畳に寝そべるイグナイトが言った。「泣き止まねェのか」素足で泣き声を立てる布包みを小突く。 7
2013-11-22 21:22:26「ホンギャー!」布包みが泣きわめき、「チッ」イグナイトは再び舌打ち。そこへ「腹が減っているのだと言ったろう」ドージョーに正座する美しい女が言った。手にしていたチャ・カップを畳に直置きし、正座を崩して布包みに身を寄せた。純白のボディスーツめいた忍者装束の胸が豊満だ。 8
2013-11-22 21:24:37「いつまで待たせやがンだ」イグナイトは空いた手で耳をほじりながら言う。「なあ、アンタ、乳やれねェか?」「出るわけがなかろう」美女が答えながら布包みを抱き上げた。「なんでだよ。そんなにデケエんだから出ンだろ」「ハン、つまらん冗談だ」「チッ」 9
2013-11-22 21:26:50美女は布包みを開く。「ホギャー!ホギャー!」泣き声が一層大きくなる。中身はモンキーめいた赤子だ。顔中をシワだらけにして泣き叫ぶ赤子を、美女は目を細めて眺める。「クク、カワイイではないか。……食ってしまいたいほどに」「アンタが言うと冗談になッてねェよ」「ククク」 10
2013-11-22 21:28:22美女の名はフェイタル……彼女もイグナイト同様、ザイバツ・シャドーギルドのニンジャである。ウキヨエめいた美貌と裏腹に、一度イクサとなれば恐ろしい獣の姿に変ずるヘンゲ・ニンジャ。その姿のコワイさとサツバツたるワザマエを知るイグナイトが、先ほどのように述べるのも無理はない。 11
2013-11-22 21:30:29「ホギャー!」赤子は泣き続ける。フェイタルは腕に布包みを抱き、ゆっくりと揺らしながら「これからどうするつもりだ」イグナイトに問う。「どうって、やるに決まッてンじゃねェか」イグナイトが飛び起きる。「イクサだよ。あいつはかならず来る。それをアタシが……」「その話ではない」 12
2013-11-22 21:32:38「じゃあなんの話しろッてンだよ?」「この赤子だ」「アァ?」「この赤子を、お前はどうするつもりだ」「アー……」イグナイトは黙りこむ……その時、ドージョーのフスマが開き、新たなニンジャがエントリー。「待たせたな、ミルクだ」アンバサダーは耐酸性バッグを二人に見せた。 13
2013-11-22 21:34:17「おせェンだよ!」イグナイトがだらしないアグラ姿勢で振り返る。「おお、来たか」「ずッとこいつ泣きッぱなしだッたンだぞ。うるせえッたらねェんだ!」「お前が連れてきたのだろう」目を合わさず答えたアンバサダーが畳に正座すると、「では、私は帰るとしよう」フェイタルが立ち上がった。 14
2013-11-22 21:36:19