茂木健一郎(@kenichiromogi)さんの連続ツイート第1101回「小林秀雄ならば、食材偽装をどう考えたか」
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こし(1)小林秀雄さんの最後の編集者で、『本居宣長』も手がけられた池田雅延さん(小林さんの講演で、『本居宣長』について話せと言われて、イヤだと言ったんだけど、先生これは宣伝ですから、と言われて、宣伝ならば、と応じた、と、その「宣伝ですから」と言ったのが、池田さん)の話を定期的に。
2013-11-26 07:21:34
こし(2)うかがっている。それで、池田さんが、メールで、「今度は、小林秀雄先生が、食材偽装のニュースを聞いたら、どのようにお考えになったであろうか、という話をします」と書かれていたので、とても楽しみにしていた。当日になって、池田さんが、それでは、とお話され始めた。
2013-11-26 07:23:16
こし(3)小林秀雄さんが生前好きだった店は、通りにあるような小さな店で、名の通った老舗とかは、あまりお好きではなかったという。老舗に行って、「この料理は、どこどこから取り寄せたナニナニを、こう料理して」というご託宣を聞かされるのが、お好きではなかったというのである。
2013-11-26 07:24:42
こし(4)池田さんは、小林秀雄さんがお気に入りの店に何回かお供したことがあるけれども、実際には、一人で街歩きをして、ふらりと入った店で、一人でお呑みになるのが好きだった。だから、小林さんがよく言っていた店で、誰も知らない店が、たくさんあるだろうと池田さん。
2013-11-26 07:25:48
こし(5)店に入ると、大将に、「今日は何がいいんだい」と聞く。「鯛がおいしいです」と言われると、「じゃあ、それをおくれ」と言って、料理の仕方だとか、そういうことは一切口を出さない。それが、小林秀雄さんのやり方であったと、池田雅延さんはなつかしそうに話された。
2013-11-26 07:27:09
こし(6)それで、その小林秀雄さんが、「食材偽装」のニュースを聞かれたらどのように考えるか。一言、「頭で食べているからだよ」と言われたのではないかと、池田さんは言う。だから、「名店」がお嫌いだった。何か名物があると聞くと、たくさんの人が押し寄せる。すると、どうなるか。
2013-11-26 07:28:12
こし(7)名物のあれを出してくれ、と言われると、その時々で食材の良いものが入らなくても、なんとかごまかして提供するようになる。味のわからない客が、それを有り難がって、「やっぱりうまいね」みたいなことを言う。そんなことでは、食べものの本当のうまさはわからないと小林秀雄さんは考えた。
2013-11-26 07:29:16
こし(8)鯛と言っても、一つひとつ違う。野菜だって。本当にうまいものは、その日に入った食材の中で、よいものを店主が吟味して、一番よい調理法で出す。そんなやり方をがんとしてやめなかった小林秀雄さん。現代においては、一つのファンタジーなのかもしれないが、しかしそこに本当のことがある。
2013-11-26 07:30:52
こし(9)ぼくは、思う。芝エビがバナメイ海老だったとか、そんなことで目くじら立てて起こっている。バカだと思う。食べるという本能的な衝動を、ブランドとかそういうものに棚上げする。高級なものなんて、食べなくてもいい。うまけりゃいい。そんな簡単な理屈が、わからないんじゃ話にならない。
2013-11-26 07:32:26