~それぞれの日々~
「よしっ」 自室にいた藤堂は、膝を叩いて立ち上がった。 襖をざっと開け、意気揚々と廊下を踏み鳴らし、大広間へと向かう。 皆が揃う朝食の時刻を、今日一番楽しみにしているのは、 間違いなく藤堂平助だ。
2013-11-26 22:41:22「おはよーっ!」 「おはよう、平助くん」 威勢の良い平助の挨拶に、真っ先に答えたのは千鶴だった。 しかも今日はいつも以上に平助の機嫌が良さそうで、見ている千鶴も爽やかな気分になる。
2013-11-26 22:42:34千鶴は毎朝、平助から元気をもらっているような気がして、 自然と笑みが浮かんでくる。 しかも今日はいつも以上に平助の機嫌が良さそうで、 見ている千鶴も爽やかな気分になる。
2013-11-26 22:42:58主だった幹部隊士が全員集まるのは食事時、特に朝だ。 今日は全員揃っている。 平助は自分の膳の前で、ごほんと咳払いをして注目を集めた。
2013-11-26 22:43:15「なんだなんだぁ?どうした平助、急に改まって」 「まあいいから聞いてくれよ、新八っつあん」 平助は近藤、土方に視線をやって、許可をもらう。
2013-11-26 22:43:53土方は眉間に皺を寄せながら、「くだらねえことじゃないだろうな」とため息交じり。 近藤は「まあまあ」と土方を宥め、平助の言葉を促した。
2013-11-26 22:44:05「新選組の幹部隊士で、順番に日誌を書いてみねえか? 後で見た時、この日は何があったとかわかりやすくするために! 例えば捕物の人数とかさ」
2013-11-26 22:44:55「新八は何に金を使ったかも書いとけよ」 「お酒。お酒。女。って?」 「総司ィ、そりゃねえって!」 原田と沖田のやりとりに、千鶴がくすっと笑うと、平助は千鶴の方を見て言った。
2013-11-26 22:45:42「千鶴、お前も書くんだぞ」 千鶴は目を丸くして、少し嬉しそうにはにかんだ。 「私も、いいのかな」 「当ったり前じゃん。おまえも仲間なんだからさ」 平助が同意を求め、皆を見回すが、誰も反対などしなかった。
2013-11-26 22:45:58さらに視線を伸ばし、近藤、土方を捉える。 「いいよな?近藤さん、土方さん」 近藤はもうその気になって大きく頷いた。
2013-11-26 22:46:11「なかなかいい案じゃないか。なあトシ。とにかくやってみよう」 「近藤さんがそう言うんなら、俺は反対しねえ」 土方もまんざらではなさそうだった。
2013-11-26 22:46:23「では、誰から書き始める?」 「あ、それなんだけどさ。オレ、少し考えてきたんだ」 平助は目を輝かせたまま、次の提案を発する。
2013-11-26 22:46:40「今日からのことはすごく詳しく書けるけど、 どうせならさ、新選組の記録にしたいんだ。 だから、皆が覚えてることを少しずつ書いてきて、 それをまとめたら、物語にもなるんじゃないかって思ってさ」
2013-11-26 22:47:03物語、という言葉に、近藤が目を輝かせた。 「うむ、それはいい! では、各々暇な時にでも、日付を入れた記録を記したものを書いていくことにしよう。 順番に並べれば、立派な新選組の物語になるぞ!」
2013-11-26 22:47:23「よし決まり。じゃあこの広間に、木箱でも用意して、そこに入れていこうぜ」 「日付ごとに並べるのは、私もお手伝いさせてもらうね」
2013-11-26 22:47:37翌朝になって、早朝から外出していた土方が屯所に戻り、 広間の木箱を覗いてみると、 各々が持って来た半紙が何枚か入っていた。 感心しながらそれを手に取り、眺めてみる。
2013-11-26 22:48:28