『聖学少女探偵舎 巻の一』 感想まとめ1
やっぱ、最初の話読んだとき、「うわー、読みやすいわー」と歯噛みしたのね。あとがきのコラムにもあるように、想定した読者層に向けて堅実な陣形組んで、文字通り手堅く落とすために作り出された物語……だったんだけど、探偵小説パートに入る瞬間の切れ味がねぇ、すげえのなんのって。
2010-10-16 01:07:34こういうのが、探偵小説というか、探偵というキャラの醍醐味なんだなーと思うのよ。推理する、という行為が一種の歌舞伎みたいな見得なんだから、そこにロマンやスリルを見出すのよ。それはヒロイックなものに通じるし……いや、やっぱ元祖たるホームズの造詣も、またヒーローだと思うのよね。
2010-10-16 01:12:24あれだけ天才的に推理して、ヤクもぶちこみながら、ワトソン連れて事件解決ってのは、なかなか強烈ですよ。アンチヒーローの要素が強いけど、昔のヒロポン的に考えれば、まあ悪びれたカッコイイ先輩の一要素みたいな感じだわな。とかく、そういう「おおっ」と思わせるものがある。
2010-10-16 01:15:53少女と未知なるパワー、なんて組み合わせ結構あるけど、やっぱね、探偵というキャラクター性を少女へぶちこむのは、卑怯なくらい破壊力がある。なんだろ、作り手のキャラ造形技術に対して不躾な言い方になるが、「おしゃま」にするって反則的に可愛いよね。
2010-10-16 01:20:51フレンチ警部を女性化して、中学生ぐらいしたらどうなるのか? 天才的推理とかできないけれど、わたし、頑張って謎をつきとめます! みたいな健気な子が誕生するじゃないですか。もしくは元気属性をつけると、パワフルでグイグイ回りを引っ張っていくキャラもできる。
2010-10-16 01:28:51ドゥーゼン教授を女性化したら?(やはり陰鬱な眼鏡っ娘か!?) サム・スペードを女性化したら?(一匹狼だけど、捨て犬を見たら保護したくなるのか!?) ……とまあ妄想できますけど、要は特異な属性を少女に付加するというのは、アクセをつけてあげるのと同じでチャーミングになる。
2010-10-16 01:43:40もちろん、そのチャーミングさが読者に伝わらないといけないし、融和しただけでは、特異な属性がどうスパイスとなっているかわからないので、相応の物語の運びと、キャラの見せ方が重要になってくるが……これがねぇ、嫉妬しちゃうほど巧いから、嫌なんだよ(笑)。だから引き込まれました。
2010-10-16 01:45:44マリみての初期(パラソル~ぐらいまで)にもある、物語運びの巧さってのが、『聖学少女探偵舎』(http://amzn.to/af1e3C)では炸裂してる。
2010-10-16 01:49:50マリみてを野田宇宙大元帥の右往左往シート作って、物語のイベントいつ起きるか分解してみたけど、オカズの配置が巧いのよ。女の子は、ここらへんでキュンキュンくるのねーって、思いながら、本ごとに顔見世興行的に続いていくシナリオを読んでいったのね、俺は。
2010-10-16 01:52:20『聖学少女探偵舎』でもねえ、それぞれ顔見世興行があるわけだが、メインの謎が、わりかしストレートにキャラクターの心の奥底にあるものと絡まっているのを、主人公がすぅ――とメスを切り込むように入れるのね。見せかけキュートな感じなのに、切ったら中からドロっと出てきた感じ。
2010-10-16 01:59:09そのドロっとしたものは作者の持ってるものだろうけど、それがドロドローと読んでいるものにしつこく感じさせないのは、テキスト量が制限されているせいか、それとも意図的なものかはわからん。が、個人的には非常に心地よいバランスで、安心できるのです。こういうのがエロゲでも読みたい。
2010-10-16 03:13:11正直僕は、推理部分が苦手で、パズラーと呼ばれている人たちの性質が、とんとよくわからんのですが。まあ前後編とわかれているし、答えも後編にあかされるし、まあ考えてやろうと思ったわけです。ない頭振り絞ってですね。
2010-10-16 03:17:53でも、どっちかっつーと、話のオカズの配置を読み取るほうが気になってしょうがない。たぶん作者の用意している答えそのまんま、っつーのは無理だろうし(特に8話は絶対無理)、まあ適度に推理は愉しみました(巴ちゃんのヒーローぶりを堪能するのが主目的だしな!)。
2010-10-16 03:22:24いちおう、メシ食ってる職業が職業なんで、一話目のあのキャラが、あのキャラの血縁とか、双子が出てきたら、阿籐組の人たち展開だよねとか、ラストの携帯電話らへんで「あれー、もしかしてー、これってー」とどういう種類の事件か気づきました。その通りになったときは、図らずもガッツポーズ。
2010-10-16 03:29:19とはいえ、一番のキモである探偵小説部分を触れないわけにはいかずっちゅーことで、この作品(http://amzn.to/af1e3C)の一番良い部分は、やっぱ探偵小説、まあミステリでも推理小説でも何でもいいが、そういうものに触れたことがない人が読んで楽しい作品って部分だと思う。
2010-10-16 03:37:19……っつーのも、作者さん、いろんなミステリをゲーム内で取り扱っているのね。それこそ王道から、鉄道やら、アンフェアっぽいやつまで、いろんなもの詰め込んでくれている。それこそ、読み手にこんなんあるでーと、教えてくれる先生のように、提示してくれとる。
2010-10-16 03:39:33こういうの好きじゃないと出来ないお、って思う。本質的に、こういうのあるんだぜ? 面白いだろう? と他人を巻き込み知識共有させる人と、俺はすごいぜー、こんなの知ってるんだぜーという自己完結型の人と、大別して二通りあるんだけど、個人的に前者のほうを感じたのよ。
2010-10-16 03:41:35もし、自己完結型でやるなら、もっと主人公の巴ちゃん、強い子じゃないといけないし、もっと前に出るタイプになってる気がするから。作品には個性的なキャラが出てきて、結構みなが各々ちゃらんぽらんしてるけど、欠けている部分を他との関係に求めるところに、妙味を感じる。
2010-10-16 03:43:47さりげないし、普通に同級生とか、探偵舎の仲間とか、そういうところで表面的には繋がりはあるんだけど……そうさねえ、これは買ってプレイしてもらえばわかるんだけど、あー、名前忘れちゃった、あの分解眼鏡っ娘。あの子が7話でみせる心情がねえ、優しさなんだよね。
2010-10-16 03:51:14それは未だに全貌があかされぬ大きな筋書きの、伏線というか、まあそれの産物なんでしょうけど、僕はその微妙な距離感を持たせるところに、優しさと捉えちゃったのよ。さりげない、淡い優しさ。分解眼鏡っ娘の出自というか背景も、そうさせてるのかなーと読みつつ思った。
2010-10-16 03:53:26巴ちゃんも、大福姉妹に対して、おおよそ中学生とは思えないほど、凛々しい優しさを見せてくれてねえ……ほんとうに、こういうさりげない優しさや、ヒロイックな優しさやら見せてくれて、デブオタは涙しつつも、それぞれのキャラクターが、物語を構成する重みの配置っぷりも味わっていた。
2010-10-16 03:58:00このあとヒロイックに活躍するかもしれんけど、さておき現状では、それぞれのキャラクター同士の関係(=配置)を巧く見せつつ、その構築のなかで、いろいろな種類の推理を提示するってのは、こりゃ唸るしかない。
2010-10-16 04:01:19だって、自己完結型だったら、キャラクター性は天元突破するかもしれんし、まあ主人公補正の人気は出るかも知れんけど、ホームズを作るわけでかったろうし、それは作品内容をプレイしたらわかる。いくらスーパー能力な少女たちが居ようと、小娘なわけで、普通の日常があるわけです。
2010-10-16 04:07:38