【分かりにくい】語り手の"人格"【分類】

読書する黒子さんが、散文における語り手の人格形成についての解説をしました。
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読書する黒子さん @kuroko_1011

さて、前回の「語り手の分類(http://t.co/nc6Tf7mQEg)」について割と好評だったので、今回は追記で「語りの分類」についてです。物語や小説を書いている型にとっては実用的な話になるかと……なればいいかな、と。

2013-12-06 20:45:22
読書する黒子さん @kuroko_1011

まず最初に3種類に分けます。「神」と「人」と「虫」です。それをさらに「全能」と「全知」により分けます。今回も僕なりの分類と呼称ですので、一般に言っても通じません、悪しからず。

2013-12-06 20:47:08
読書する黒子さん @kuroko_1011

まず「全能」と「全知」の違いですが、これは「比喩表現ができるか否か」を示しています。「~~のような」と言えるか、それとも直接表現しかできないか、それにより、前者を「全能」後者を「全知」と分類します。

2013-12-06 20:48:40
読書する黒子さん @kuroko_1011

次に「神」と「人」と「虫」の違い。「神」は一般常識程度の単語を解し、感情を読み取り描写することができ、主観を交えません。「人」は一般常識程度の単語を解し、感情描写ができ、主観をもって語ります。「虫」は感情も常識的的単語を解さず、主観を交えません。これを「全知」「全能」で分けます。

2013-12-06 20:52:13
読書する黒子さん @kuroko_1011

一般常識程度の単語を使う、というのは例えばですが……「障子」という言葉がありますね。「神」と「人」はそれを「障子」と呼べますが、「虫」はできません。ですから、「細く切った木を並べ、隙間に紙をめぐらせたもの」という描写になります。

2013-12-06 20:54:47
読書する黒子さん @kuroko_1011

比喩表現というのは例えば「困ったように」という表現のことをこの場合指しています。困るという概念が分からない場合、その描写は不可能です。ですから「眉間にしわを寄せて」「眉尻を下げて」のような表現になります。これができるのを「全能」できないのを「全知」と分けています。

2013-12-06 20:58:17
読書する黒子さん @kuroko_1011

主観を交える、というのは語り手が感想を述べるか否かです。「愚かなことに彼は」というような文の場合は主観が入っていることになります。これができるのが、唯一「人」です。

2013-12-06 20:59:33
読書する黒子さん @kuroko_1011

えーっと、分類ではこんな感じでしょうか。大まかな分類ですので、これに厳密にあてはまるものは非常に少ないでしょう。「全知の虫」などは、猟奇、というか……不条理小説などでよく用いられる手法です。小説手法としては1つで貫き通すことは珍しく、切り替えることで視点を少しずつずらします。

2013-12-06 21:02:20
読書する黒子さん @kuroko_1011

他に語り、地の文で重視されることの1番と言えば「呼び方」でしょうか。分かりやすいのは他者の名前ですね。火神君を語り手と置いた場合、僕を「テツ」と呼んだりはしませんが、モノローグでだけ「テツヤ」と呼ばせることで何かを示唆することもできます。敬称もこれに入るでしょうか。

2013-12-06 21:04:08
読書する黒子さん @kuroko_1011

次に語尾です。丁寧語で喋る、口語で喋る、このふたつの他に、論文のような断定口調で喋ったり、また寝物語を聴かせるような語り部のような口調で語ったり、そういう細部にもやはり気を配りたいところです。

2013-12-06 21:06:31
読書する黒子さん @kuroko_1011

また、語り手の知識や語彙なども設定しておくことは大事です。かが……あおみ……えーっと……あまり国語が得意でなさそうな方が、難しい漢字を連ねるようなモノローグをつかったりしたら、違和感をおぼえるようなものです。

2013-12-06 21:08:23
読書する黒子さん @kuroko_1011

また、どこまでスラングを交えるかなども大事です。赤司君が「ヤバイ」「マジで」とか言ったら、びっくりしますよね。

2013-12-06 21:09:03
読書する黒子さん @kuroko_1011

このあたりを加味して、語り手の設定を練っておくことも大事です。広辞苑による分類では物語はストーリー、それを語る語り手も登場人物のひとりとしてカウントするものが小説、という分類をされています。語り手を設定して、それを動かすかどうか、それが小説と物語の境目だと、そういうことでしょう。

2013-12-06 21:11:18
読書する黒子さん @kuroko_1011

登場人物の設定を練るのも楽しいですが、語り手の定義や人格などの設定を練って、その人が物語のどこをどう取捨選択するかどうかを考えるのも、面白い作業です。ただ、ここをあまり悩み過ぎると……発狂する、かもしれませんね。

2013-12-06 21:12:47
読書する黒子さん @kuroko_1011

また、これらの分類などを考慮してよくよく小説を読み込んでみると「ここで語り手が入れ替わっている!」と気づくことがあります。そういう読み方も、面白いですよ。

2013-12-06 21:13:56
読書する黒子さん @kuroko_1011

……僕からできる説明はこの程度なんですが……何かツッコミなどはありませんか?

2013-12-06 21:14:28
読書する黒子さん @kuroko_1011

僕が研究していたのは『山月記』です。この場合、最初は主観を交えた漢文による文語論文調。物語に入った後は口語による「全知の人」の語り、風景描写にだけは「全能の人」の語り、と使い分けられています。そのように語り手の差異に着目して研究している人も少なくありません。単純に、面白いです。

2013-12-06 21:21:48