セカイ系戦争

#twlonely タグで連載中のツイッター小説です。 主人公の少女ミユは、突如親も含めた周囲の人間から阻害されてしまう。途方に暮れて街をさ迷っていると一匹の猫と出会い、子供レジスタンス「世界の孤児」に誘われて……。 完結しました。 ご拝読ありがとうございました!
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猫春雨@ものがたる屋 @nekoharusame

ある日を境にご近所や学校の友人たちが冷ややかな視線を向けるようになった。なぜ。どうして? 今日も針のむしろに座る思いをして帰宅する。だけど鍵穴に鍵が入らない。仕方なくインターホンを鳴らすとお母さんが出て「鍵なら取り替えたわ」。それは私と決別したという宣告だった。#twlonely

2013-11-26 09:04:07
猫春雨@ものがたる屋 @nekoharusame

突然世界からそっぽを向かれ、私は途方に暮れた。ドアを何度叩いても開けて貰えず、ついには警察まで呼ばれてしまう。しかしその警察でさえ野良犬を扱うように私を自宅から追い払った。こぼれ落ちる涙も凍てついてしまいそうな底冷えのする夜の街をさ迷い歩く。誰か状況を説明して。#twlonely

2013-11-27 08:42:57
猫春雨@ものがたる屋 @nekoharusame

一匹の三毛猫が私の足に擦り寄って来た。世界から見放されたと思っていた私は、今度は嬉しくて涙をこぼす。屈み込んで猫の喉元を撫でたものの、ふいっと私から離れた。また悲しさが込み上げて来た時、猫が立ち止まりこちらを向く。それが路地裏の入り口まで続けられた。誘ってるの?#twlonely

2013-11-28 09:21:38
猫春雨@ものがたる屋 @nekoharusame

三毛猫のあとについて路地裏を進む。やがて目の前が開け、小さな空き地へと出た。そこには土管が三つ積み重ねられており、様々な猫がたむろしていた。猫たちが一斉にこちらを向く。その時、くらっと眩暈が。再び土管の方へと目を向けると猫なんて居なくて少年少女たちの姿があった。#twlonely

2013-11-29 07:51:30
猫春雨@ものがたる屋 @nekoharusame

驚く私に一人の少年が近寄って来た。その瞳の色に見覚えがある。さっきの三毛猫ではないだろうか。「僕たちはレジスタンス世界の孤児だ。共に理不尽な現実と戦おう」ちらっと少年の肩越しを見遣れば、他の子供たちも頼もしく頷いてくれた。私は少年の差し出した白く温かな手を握る。#twlonely

2013-11-30 09:14:06
猫春雨@ものがたる屋 @nekoharusame

久しぶりに感じる人の温もり……。このままずっと触れていたいけれど、そういうわけにもいかず、名残惜しくもそっと手を離した。少年の顔を見ると、猫のような細目で微笑み返す。「僕の名前はアツタカ。君は?」また悲しみが去来した。両親が愛情を込めてくれた名前……「美優です」#twlonely

2013-12-01 09:35:49
猫春雨@ものがたる屋 @nekoharusame

「ミユか、いい名前だ。でも姓の方は忘れた方がいい。僕たちのアイデンティティーは下の名前にある」あのとためらいがちに問う。「さっきレジスタンスって」「うん、いわゆる抵抗運動のことさ。僕たちの場合は世界が相手だけどね」私たちはそんな途方もないものを敵に回しているの?#twlonely

2013-12-02 09:14:00
猫春雨@ものがたる屋 @nekoharusame

「私たちはどうして世界から爪弾きにされたの?」「僕たち世界の孤児が未来の礎を築く者だからさ」アツタカは怒ったように云った。「いずれ大人になった時、僕たちは未来で重要な役割を果たす。だから世界は僕たちを抹殺したいんだよ」益々分からない。どうして未来を拒絶するのか。#twlonely

2013-12-03 10:23:59
猫春雨@ものがたる屋 @nekoharusame

「世界世界って云っているけれど、それはあくまでも概念上のことだけどね。正しくは世界を牛耳っている旧大人たちが僕らの敵だ」私を通り越してアツタカは遠くを睨みつけた。「奴らは現行に満足し、未来の変容を良しとしていない」なぜという言葉の代わりに、私は溜め息をこぼした。#twlonely

2013-12-04 09:50:16
猫春雨@ものがたる屋 @nekoharusame

見当がついた。改革や革命など現体制が壊されることを嫌う心理を理解出来たから。きっと未来という不確定な可能性に対しおびえているのだろう。多くの人はそれを希望と捉えるけれど、今を支配する権力者にとっては畏怖の対象になるのだと思う。未来を予測出来るのならばなおさらだ。#twlonely

2013-12-05 10:04:54
猫春雨@ものがたる屋 @nekoharusame

でもそんな力を持っている旧大人という者たちとどうやって戦うのだろう。未来で彼らをおびやかすとしても今は無力な子供でしかない。「ミユ、僕たちの仲間になる為には新しい世界を受け入れて貰う必要があるんだ」「新しい世界?」小首を傾げた私の眼の前でアツタカは三毛猫となる。#twlonely

2013-12-06 07:53:25
猫春雨@ものがたる屋 @nekoharusame

「新しい世界を受け入れると猫の姿に書き換えられてしまうんだ」三毛猫のアツタカが揺らいだかと思うとまた人間に戻った。「実は僕たちにも大人の協力者が居る。マザーと呼んでいるけどね。彼女は僕たちが猫であろうと人であろうと関係ない。そしてまた彼女も別の世界を生きている」#twlonely

2013-12-07 09:17:59
猫春雨@ものがたる屋 @nekoharusame

「お腹も空いたし、マザーのもとへ行くとしよう」するとアツタカたちはまた猫になった。ぞろぞろと歩く猫の集団の後ろを付いて行くのは変な気分だった。路地裏を抜けると閑静な住宅街に出る。そこから少し歩いた平屋の前に一人のおばあさんが佇んでいた。「あら、新しい猫ちゃんね」#twlonely

2013-12-08 08:55:32
猫春雨@ものがたる屋 @nekoharusame

猫と呼ばれて戸惑う私に足元のアツタカが「マザーは認知症を患っている」と教えてくれた。「彼女は大人であるけれど、子供の側面も持ち合わせているんだ。だから旧大人たちの影響を受けず、僕たちにも優しく接してくれる。そう、猫となった僕たちの世界に半分身を置いているんだよ」#twlonely

2013-12-09 08:24:08
猫春雨@ものがたる屋 @nekoharusame

アツタカたちは地面に置かれたお皿の上の餌を食べていた。「あなたも召し上がりなさい」マザーに促されたものの、私は人間だ。「ミユはまだこの世界にしがみ付いているようだね」食べ終わったアツタカが顔を洗っている。その猫らしい仕草に、住む世界が異なることを実感させられた。#twlonely

2013-12-10 09:04:06
猫春雨@ものがたる屋 @nekoharusame

食事のあとマザーの家に上がり込んだ。結局私は猫の餌なんて食べられず空腹をかかえている。「ミユ、菓子パンがあったよ。今日はこれを食べな」アツタカが袋に入ったメロンパンをくわえて来た。お腹を空かしていた私は遠慮も忘れてぺろりと完食する。食事がこんなにも幸せだなんて。#twlonely

2013-12-11 09:30:40
猫春雨@ものがたる屋 @nekoharusame

牛乳まで貰い私は満ち足りた。でもいつまでもこういうわけにはいかないだろう。私もアツタカたちのように新しい世界を受け入れて猫になる。その選択肢しか残されていなかった。「ねぇ、新しい世界を受け入れるって具体的にどうすればいいの?」「今度は君が世界を見限ってやるのさ」#twlonely

2013-12-12 09:18:46
猫春雨@ものがたる屋 @nekoharusame

「親兄弟、友人や知人との関係を完全に断ち切る。その為にはもう普通の日常に戻れないことを受け入れるんだ。いつかまた、なんて希望を捨ててね」私は「そんな……」ととまどった。「旧大人たちの支配は絶対だ。再び愛情を向けてくれることはもうない。だから諦めるしかないんだよ」#twlonely

2013-12-13 08:32:25
猫春雨@ものがたる屋 @nekoharusame

いつもマザーの家の居間で眠るとのこと。でも今日の様々な出来事が思い返されてなかなか寝付けなかった。それにお父さんとお母さんとの完全なる決別もある。そんなの嫌だ。嫌だよ。自然と涙が溢れて来る。その時、頬がざらついた。横目で見るとアツタカが涙を舐め取ってくれていた。#twlonely

2013-12-14 09:03:19
猫春雨@ものがたる屋 @nekoharusame

私はアツタカを抱き寄せ毛皮に鼻をうずめる。でもよく考えると同世代の男子なんだよね。猫の姿をしているから気恥ずかしくないけれど、結構際どい光景かもしれない。やがて温もりに安心感を覚えた私は眠りに落ちた。夢の中では私も猫になっている。悠々自適な暮らしも悪くなかった。#twlonely

2013-12-15 08:50:33
猫春雨@ものがたる屋 @nekoharusame

目が覚め、居間に居る猫たちを見て、昨日の出来事は夢ではなかったことを知る。しかし私はまだ猫にはなっていなかった。夢を見た時、もしかしてと思ったけど猫になるのは単純じゃないみたい。「ミユ、おはよう」アツタカも起き出して伸びをする。「猫になる心の準備は出来たかい?」#twlonely

2013-12-16 09:35:05
猫春雨@ものがたる屋 @nekoharusame

私は――アツタカの言葉に頷いた。「ミユ、良く決心したね。親を失っても僕たちが居るから安心して」「うん……」人間は温もりなしでは生きていけない。少なくとも私は。お母さんたちの愛情を取り戻せないのならアツタカたちから分けて貰うのだ。「でも具体的にどうすればいいの?」#twlonely

2013-12-17 08:40:09
猫春雨@ものがたる屋 @nekoharusame

「親兄弟友人知人をすべて殺すのさ」「えっ?」アツタカの発言に私は言葉を失った。「おっと、実際に手にかけるわけじゅないよ」よっぽど私がショックを受けていたのだろう。慌てて誤認を否定する。「思い出の中の人間たちを殺すんだ。この世界に対して非情にならなければならない」#twlonely

2013-12-18 09:09:08
猫春雨@ものがたる屋 @nekoharusame

「頑張って。これは僕たちにはどうすることも出来ないことだからね」そう云うとアツタカたちは出て行った。一人取り残された私は包丁を手にしていた。それを持つ方がイメージし易いだろうというアツタカの配慮だ。私は自分の周囲に居た人たちを思い浮かべるが……やっぱり出来ない。#twlonely

2013-12-19 09:01:45
猫春雨@ものがたる屋 @nekoharusame

思い浮かべるほどに楽しかった頃の記憶が蘇る。これは私の生きて来た証。大切な宝物。それを壊すなんて、失うなんて私には無理だった。包丁を落とし、泣き崩れる。「あらあら、どうしたの?」居間に入って来たマザーが私に近づくと、ぎゅうと抱き締めてくれた。やっぱり人は温かい。#twlonely

2013-12-21 10:08:51
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