野川忍・明大大学院教授(@theophil21)の語る「どんな解雇が法的に問題となるのか」

※参考:野川忍・明大大学院教授(@theophil21)の語る「なぜ労働者は保護されるのか」 http://togetter.com/li/59665
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theophil21 @theophil21

(1)解雇は法的には辞職と対になる概念で、労働契約の労働者側からの一方的解約が辞職であり、使用者側からの一方的解約が解雇です。もし、契約の基本原理どおりに「両当事者は対等」と考えるなら、辞職が自由なように解雇も自由、ということになるので、民法627条はそのように規定してきました。

2010-10-15 07:57:54
theophil21 @theophil21

(2)しかしもちろん、解雇と辞職は全く実態上の意味は異なるので、以前にツイートしましたように、労働契約の本質的不均衡を是正する観点から、解雇のほうは労契法16条と同17条1項によって制約されています。しかし、有期雇用の場合は別として、期間を定めない正規労働者の場合は制約ではない。

2010-10-15 08:00:20
theophil21 @theophil21

(3)なぜなら、労契法16条は、解雇が無効となるのは「客観的に合理的な理由」を欠き、「社会通念上相当と認められない」場合であると明記ているからです。どちらも抽象的で、雇用をめぐる環境や慣行の変化で流動化する概念です。

2010-10-15 08:02:32
theophil21 @theophil21

(4)たとえば、これまで解雇が不自由とされてきた大企業の慣行では、大企業自身が、雇用保障を条件に従業員の企業への絶対的服従を享受してきたので、それでも解雇するというからにはよほどの理由が必要である、ということになっていたのです。中小企業の世界はまた別ですが。

2010-10-15 08:04:10
theophil21 @theophil21

(5)逆に、今後使用者側が人事権へのもたれかかりから自立し、労働条件をおしなべて労働者との本当に対等な合意の上で決定していくことが企業社会の慣行となれば、合意が成り立たない場合は解雇しか道がなくなるので、労契法16条を適用しても、解雇は今より幅広く認められることになるでしょう。

2010-10-15 08:06:19
theophil21 @theophil21

(6)そうなって初めて、解雇の金銭解決も大方の理解を得られる方向に進みます。大企業には、人事権からの自立が求められるし、他方で中小企業には、むしろ雇用コンプライアンスの徹底をどう実現するか、という出発点から検討すべきでしょうね。

2010-10-15 08:08:08
theophil21 @theophil21

(7)一方、有期雇用労働者を期間途中で解雇することは、明確な「約束違反」なので、労契法17条1項は、「やむを得ない事由」がない限り許していません。ここでいうやむを得ない事由とは、原則として一般的な経済変動などは含まれず、天変地異に近いような異常事態を意味します。

2010-10-15 08:10:26
theophil21 @theophil21

(8)また、何度も期間を反復更新して雇用されている有期雇用労働者を、何回目かの更新を突然拒否する、という形で放逐する「雇止め」は、判例法理によって、ずさんな更新手続きで漫然と更新されていた場合や、「雇用継続の合理的期待」を労働者に抱かせるような実態がある場合は違法となります。

2010-10-15 08:12:20
theophil21 @theophil21

(9)長くなるのでここまでにします。繰り返しますが、雇用は契約であって、「企業という組織に労働者として組み込まれること」という認識は、たとえ話としては有効であっても法的には妥当ではありません。「実質的合意」をどう実現するかが究極の課題です。

2010-10-15 08:14:25