2013年12月8日

第3回「アメコミとクトゥルー神話」

森瀬繚先生の連投ツイートをまとめました。 ※「アメコミとクトゥルー神話」総集編 【 http://togetter.com/li/601396
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闇に囁く方の森瀬 @TalkingMolice

では、バットマンと双璧をなすDCヒーロー、スーパーマンではどうであったかと申しますと、1983年刊行の"SUPERMAN SPECIAL"誌1号の冒頭で、宇宙を飛行中のスーパーマンが、エネルギー流めいた怪物と遭遇するシーンがあり-- http://t.co/FYuSMTZkeh

2013-12-08 19:00:59
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闇に囁く方の森瀬 @TalkingMolice

--作中で特に明言はされませんでしたが、ファンの間では「クトゥルー」という通称で呼ばれています。ところで、画像ではちょっと見えないかと思いますが、このエピソードの担当編集者の名前が右ページ下に載っております。ジュリアス・シュワルツ(シュウォーツ)という名前です。

2013-12-08 19:02:16
闇に囁く方の森瀬 @TalkingMolice

ジュリアス・シュワルツ。1915年6月15日生。1930年代にSFファンダムで活動を開始し、1944年、ナショナル・アライド社(DCコミックの前身)の関連会社であるオール・アメリカン・コミックス社に参加。以後、DCコミックス社の作品に携わり続けた、伝説的な編集者です。

2013-12-08 19:06:57
闇に囁く方の森瀬 @TalkingMolice

グラント・モリソンが『スーパーゴッズ』で書いていますが、彼の功績の中でもとりわけ重要性の高いものは、1960年代に携わった「DCコミックスのヒーローたちのユニバース化」です。 http://t.co/Mp9fPLU1TY

2013-12-08 19:09:35
闇に囁く方の森瀬 @TalkingMolice

シュワルツは、"Flash"123号(1961年9月)掲載の' 2つの世界のフラッシュ Flash of Two Worlds'において、ゴールデンエイジのフラッシュであるジェイ・ギャリックと、当時、活躍していたバリー・アレンのフラッシュを--

2013-12-08 19:12:36
闇に囁く方の森瀬 @TalkingMolice

前者が登場する作品を後者が読み、その影響でヒーローとなる決意をした、という入れ子構造を造りました。これは、マーベル・コミックスの世界観とは異なるマルチバース(多元宇宙)の概念をDCコミックス作品に持ち込み、後の「アース」の萌芽となったわけです。

2013-12-08 19:13:57
闇に囁く方の森瀬 @TalkingMolice

ここで、モーリス・ルブランを持ちだして彼の作品に登場するホームズ(断固としてショームズとは呼ばない森瀬である)を大々的に持ち上げ始めたい衝動をこらえつつ--さて、このジュリアン・シュワルツが、コミックの世界に入る以前、1930年代に何をしていたかというと--

2013-12-08 19:16:39
闇に囁く方の森瀬 @TalkingMolice

--第一に、彼は"Fantasy Magazine”誌の編集者として、H・P・ラヴクラフト、C・L・ムーア、A・メリット、R・E・ハワード、でもってF・B・ロングに、リレー小説の執筆を依頼しました。

2013-12-08 19:18:33
闇に囁く方の森瀬 @TalkingMolice

即ち、「彼方よりの挑戦」--その、怪奇小説篇のお話です。後に、彼がDCユニバースの多元宇宙化を推進したことについて、どうしたって思いを巡らしてしまう経歴ではありますまいか。

2013-12-08 19:19:54
闇に囁く方の森瀬 @TalkingMolice

さらに彼は、H・P・ラヴクラフトが生前、唯一作品を預けたエージェントでもありました。S・T・ヨシの『H・P・ラヴクラフト大事典』によれば、おそらく1935年秋のパーティにおいてこの依頼が成立し-- http://t.co/PQIu5mNbyz

2013-12-08 19:21:30
闇に囁く方の森瀬 @TalkingMolice

--シュワルツの営業活動により、〈アスタウンディング・ストーリーズ〉にラヴクラフトの「狂気の山脈にて」が掲載されることになったわけです。間接的には、「超時間の影」が同誌に掲載されたのも、彼の尽力の賜物と言えるでしょう。

2013-12-08 19:23:00
闇に囁く方の森瀬 @TalkingMolice

前述の"JUSTICE LEAGUE of AMERICA"10号は、最近ようやく入手したものです。よもやと思い編集者を確認したところ、果たせるかな--ジュリアス・シュワルツとありました。DCコミックス社において、マーベルのロイ・トーマスが果たした役割を担ったことになります。

2013-12-08 19:26:32
闇に囁く方の森瀬 @TalkingMolice

さて、マーベルコミックス社にシュマ=ゴラスその他の神々がいたように、DCコミックス社にもまた、独自のクトゥルー邪神がおります。"SWAMPTHING"8号(1974年)、'The Lurker in Tunnel 13!'に登場したムナガラー M'Nagalah です。

2013-12-08 19:28:33
闇に囁く方の森瀬 @TalkingMolice

DCコミックス社の異形のヒーロー、スワンプシングについてはきっと海法さん .@nk12 か誰かがヒマな時に解説してくれるだろうから、割愛します。吹雪の中、ゴッサムでバットマンに受けたダメージによろめきながらトラックの荷台に潜り込んだスワンプシングは、見知らぬ街にたどり着きます。

2013-12-08 19:31:20
闇に囁く方の森瀬 @TalkingMolice

あっ、しまった。ムナガラーの前にスーパーマンの話してたんじゃないか。(汗) まあいいや、このまま続けます。(ライブ感!)

2013-12-08 19:32:02
闇に囁く方の森瀬 @TalkingMolice

吹雪の中、ゴッサムでバットマンに受けたダメージによろめきながらトラックの荷台に潜り込んだスワンプシングは、見知らぬ街にたどり着きます。スワンプシングは、山中で熊から助けだしたエゼキエルという老人に-- http://t.co/iRKchC5hfX

2013-12-08 19:34:09
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闇に囁く方の森瀬 @TalkingMolice

--その町、パーディションに入らぬよう警告を受けるのですが、親切な彼は老人の遺体を届けに町へと向かいます。町の人々は、彼が老人を殺害したのだと考え攻撃してくるのですが、老人の息子であるジェイソン・モンローが熊の爪痕に気づいたことから誤解が解けました。

2013-12-08 19:35:46
闇に囁く方の森瀬 @TalkingMolice

不思議なことに、その異形の姿にも関わらず、町の人々はスワンプシングを親切にもてなします。実は--町のはずれに入口がある13号坑道の奥には、ジェイソンの祖父エイブラハムが呼び出した邪神ムナガラーが巣食っていたのでした。 http://t.co/tNuxafVBWb

2013-12-08 19:39:22
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闇に囁く方の森瀬 @TalkingMolice

ムナガラーは人間の眼球や筋組織、内臓が無造作にぶちまかれ、溶け合ったような姿をしています。召喚者の腕に腫瘍として出現し、体を取り込んで変異します。そして、テレパシーで町の住民を誘い込んで触手で捕え、それを糧に膨張を続けました。(森瀬繚『ゲームシナリオのためのクトゥルー神話事典』)

2013-12-08 19:40:10
闇に囁く方の森瀬 @TalkingMolice

ムナガラーに、シュマ=ゴラスと少々違う点があるとすれば、クトゥルー神話小説に早々に登場したことでしょう。それが、ラムジー・キャンベルの作品とくれば、なかなか見過ごせる存在ではありません。

2013-12-08 19:43:07
闇に囁く方の森瀬 @TalkingMolice

"The Tugging"(1976年、未訳)--妖星グロースの初出エピソードにおいて、『グラーキの黙示録』からの引用中にムナガラーにまつわる記述が含まれるのです。

2013-12-08 19:43:44
闇に囁く方の森瀬 @TalkingMolice

ちなみに、ジョゼフ・S・パルヴァーの"Nightmare’s Disciple"(ウーツル=ヘーアの初出作品、未訳)にも、地球の大陸と海が一つだった頃、クトゥルーの右腕であるムナガラーがテティス海を支配したと書かれています。

2013-12-08 19:44:34
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