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山本七平bot @yamamoto7hei
①【ぶどうの房型組織】上下契約は旧約聖書の「ベリート」すなわち「神と人との契約」という概念にはじまるといわれる。 この概念は「契約宗教」の下にあった文化圏ではさまざまな形で社会的原則として浸透した。<『1990年代の日本』
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②その特徴は簡単にいえば「降伏文書への署名」のような契約である。 いわば署名しなければ自らを失う、しかし署名すればそれは上をも下をも拘束するという、ポツダム宣言の受諾のような状態である。 そして授権契約も一雇用契約もある意味では上下契約である。
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③就職しようと思ったら一方的に提示された書類に署名せざるを得ない。 署名を拒否すれば社員にはなれないから、その意味では、社員としての自らを失う結果となる。 だが署名すれば自己をも拘束するが相手をも拘束しうるのである。
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④従ってもし会社が不当に自分を解雇しようとすれば弁護士に依頼し、契約を楯に会社と争うことができる。 これは社長がオーナーに対して行うことも、社員が会社に対して行うこともできる。 授権契約でもこれは同じである。
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⑤ところが日本の組織は、一揆という集団規約が契約であり、それのたてまえは全員平等であって、それを示す傘連判という署名法があった。 これは円を描いてその中心から外へと署名するという形式である。 そして多くの戦国大名はこの一揆の連合体として形成されていった。
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⑥小和田哲男氏は『戦国武将』(中公新書)の中でその実態を次のように記されている。 【戦国期の大名領国とはどういうものなのかという問題は非常に大きなテーマであり、これをひと口で説明するなどということは容易でない。 しかし、ものにたとえると存外すっきりするのである。】
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⑦【少し前になるが、永原慶二氏は大名領国をぶどうの房にたとえたことがある。 いうまでもなく、ぶどうの一房にはそれこそ何十という一粒一粒の実があり、その実が全体としてぶどうの一房になっている。 …ふつうには一粒一粒の集合体である一房をぶどうといっている。】
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⑧【つまり果物としてのぶどうが戦国大名の大名領国であり、ぶどうの一粒一粒が戦国大名の武将、即ち有力家臣をたとえたものである。】 いわば一揆連合のような戦国大名は、決して上下契約によるピラミッド型の組織ではない。 しかし個々のぶどうは房となってつながっていないと存立し得ない。
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⑨従ってこれをつらねるくきの役目をしつつ、これをたばねて全体を掌握し支配し、一定の方向へと動かす能力を要請され、その要請に応じうるものがリーダーとなるわけである。 これは自民党の総理・総裁が派閥をたばねて一定の方向へと動かす能力を要請されるのと似ているであろう。
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⑩この場合のリーダーの条件はまず一揆から推戴されてそのリーダーになる事である。 上杉謙信も毛利元就もそのような形で推戴されたリーダーであった。 このように推されて指導者になった者は、同じように推されて指導者となった者と一揆をつくり、(続
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⑪続>その一揆の中で推されて指導者となるという形になれば巨大な支配圏を確立できる。 しかし、ぶどうの房はそれぞれが独立した実から構成されているから、これを自己の意のままに動かすことはむずかしい。 このため、日本的リーダーには西欧とは違った資質が要請されることになる。
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⑫もちろん現代の組織は、自民党の派閥であれ各会社の部課であれ、集団規約を「契約」とした単位ではない。 しかし一揆の特徴は、契約書の有無にかかわらず、それが、それを構成する各人にとっては、自己を存立さす唯一の単位だという点である。
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⑬他に何らかの基礎集団、たとえば確固たる血縁集団があり、各人がそれに属しつつ機能集団としての一揆に属しているのでなく、各人が全人格的にこれに属し、強固な帰属意識をもつ唯一の集団を形成しているという点である。
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⑭それはかつての国人(在地領主)のように「一所懸命」の対象なのである。 そのためリーダーにも、これをぶち壊して自己の意思のままになる組織へとこれを再編成することは不可能に近い。 そこでこれをそのまま動かそうとするから、日本のリーダーには特別な資質が要請されるわけである。
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⑮といってもリーダーとしての基本的要件が変わるわけではない。 ただそれが、目標を示す前に「根まわし」して各一揆を納得させ、ついでそれに到達する方法論を了解させ、それに基づく組織をつくるのでなく、その方法論通りに全体が動くよう派閥を操縦するという形にならざるを得ないわけである。
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⑯それがどのような形になるかは、新聞の「組閣評」を読めば明らかであろう。 そしてそうならざるを得ないのは、前のさまざまな一揆の契約書の条項を見れば、おのずから明らかであろう。

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