標準医療指針改定は、常時行われています。
- rt_luckdragon
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まず、前振り。
医師の連携の別視点、検証の相互チェックの重要性、の話。
放射線科の画像読影は、依頼されうる全科にわたる広範な知識が必要なので、各分野の能力では専門科の医師には一歩及ばない状態になりがちなんですよね(もちろん、同レベルやそれ以上になれるよう努力はするんですが)。たとえば耳鼻科領域の画像は耳鼻科のベテラン医師の方がしっかり読めたりとか。
2013-12-20 15:49:03なので、たまに「放射線科の読影レポートは読まずに自分で画像を読む」という人もいます。でもこれ、すごい勿体ないことなんですよ。画像診断っていわば「脳内の正常画像と比較して行う、答えが幾つあるかわからない立体間違い探し」みたいなもので、1人でやると答えを見落とす可能性が上がる。
2013-12-20 15:49:33もちろんこれは「自分は画像を読まずにレポートを全面的に頼る」という場合も同じ。我々は画像をくまなく見る、それこそ肺のCTでちょっと写った腎臓の病気でもちゃんと探すという読み方の訓練を受けていますが、それでも見落とすことはあるので、依頼医と読影医のダブルチェックは重要なのです。
2013-12-20 15:49:54まぁ、複数であたっても見落とすことはあります。間違い探しで言うと、「こんなもん印刷のムラだろう」くらいに思っていたものが実は答えの1つだったことが後からわかる、ということは珍しくないです。人体って工業製品じゃないので、正常な個人差か病気か区別が付かないこともよくあるのです。
2013-12-20 15:50:13何が言いたいかというと、せっかく書いてるから読影報告は見てね、ということと、もし自分の専門科の目から見て異論があったら、読影者にフィードバックしてくれると助かります、ということ。疑問に思った症例は後から自分でも確認するけど、全部は追えないので。
2013-12-20 15:50:49患者サイドの人は、「この病気、調べたら前のCTでも写ってました」って言われると間違いなく「見落とされた」って思うでしょうけど、「確かに正常じゃないけど、これは病気として指摘できない」という事例が案外多いことをご理解いただければ助かります。残念ながらガチの見落としもありますけどね。
2013-12-20 15:51:06前振りを踏まえて、
相互検証される標準治療が、どう更新されるのか。
一般の方にはあまり関係ない話ですがちょっと紹介。非小細胞肺癌(ほとんどの肺癌はこれ)に対する標準的診療方針が一部更新された、という記事です。:非小細胞肺癌におけるガイドライン改訂のポイント【肺癌学会2013】 http://t.co/juCKcq47VR
2013-12-22 02:41:07これ、内容はかなり専門的で、抗癌剤治療を自分でやってない医者(私を含む)が把握するには結構しっかり読み込まないとダメなレベル。なので一般の方が読んでわからないのは全く問題ないです。見せたかったのは中身ではなく、こういう改訂が為されているという事実の方。
2013-12-22 02:41:29こういうガイドライン(標準的診療の指針)の改訂は各種の病気に対して随時行われています。なぜかというと、「これが一番いい方法だろう」という推定は、新しい研究成果の出現により時々刻々と変化しているから。多くの場合は微妙な変化ですが、それでも十分に合意された違いがあれば更新される。
2013-12-22 02:41:51なお、日本肺癌学会が公開している肺癌診療のガイドラインはこんだけあります。どれも専門的な内容ですが、ざっと題名を眺めるだけでも、かなり事細かに決められているのがお分かりいただけるのではないかと。 http://t.co/hysh337mDf
2013-12-22 02:42:45近年一部の医者による標準医療バッシングのような言説が垂れ流されていますが、たとえば特に叩かれがちな抗癌剤治療1つとっても、こうやって多数の情報を総合した上で最良のものを選択するという形で常に更新され続けているものだということは、あまり知らない方も多いのではと思います。
2013-12-22 02:43:05そういう一部の医師が支持する特殊な医療のことは、ここでは特に批判はしません。ただ、そういうものがきちんと多くの知見に基づいて更新されているか、そういうものがよいとする根拠が明示されているかどうかは、各自で考えていただきたいなと思っています。その上で自分が選ぶのは自由。
2013-12-22 02:43:36なお、治療などにガイドラインがあるとはいっても、これは飽くまでも指標に過ぎませんので、個別の事情(患者の意向を含む)に応じて調整することがあります。また、標準医療に従えば全部上手く行くわけでは当然なく、一番いい見込みが「死の短期先送りと苦痛の軽減」でしかない場合もあります。
2013-12-22 02:44:01散々積み上げてきた知見を否定してアクロバティックな方法に活路を求めるというのは、ある意味「奇跡の希求」に近いものがありますが、「信じるものは救われる」というのは大抵が信じさせたい側の言葉であって、私が知っているのは概ね足元をすくわれた事例です。
2013-12-22 02:44:29何にせよ、誰かの一方的な言葉(これは私の言葉も当然含みます)を鵜呑みにせず、各々の説が立脚している根拠のところに目を向けていただきたいなと思っております。根拠すらも言ってる本人が急ごしらえしていないか、あちこち穴だらけでガタガタではないかなど。
2013-12-22 02:44:45@juttantan つか、本当に信じて救われた事例ってどんだけあるのかと。新約聖書という特定宗教指定の思想書におけるもの以外はあまり見た記憶が…。
2013-12-22 02:49:40これはおまけ。
一般にがん治療には積極的な介在や検査が推奨されていると思われているが、違うケースもあります。
ここでは違うケースについて、ご紹介。
似たような話は他にもあり、
一般メディアが行っている医療検査キャンペーンが適切ではない、と医師たちが批判を行ったケースもあります。