ギリシア語で読むギリシア神話 "Οὖτις ἐμοί γ᾽ ὄνομα" オデュッセウスの頓智話

古典ギリシア語の中でも有名なフレーズであるところの"Οὖτις ἐμοί γ᾽ ὄνομα"。 『オデュッセウス』第9歌に登場するこのフレーズは、一連のエピソードの中に入っているので、中々単独で紹介しがたいところがあります。 そこで、年末の三連休を使って「一連のエピソード」を丸ごと取り上げてみました。
人文 オデュッセウス ギリシア語 オデュッセイア ギリシア神話
6

【状況】
キュクロプスたちのいる島に上陸したオデュッセウス一行は、そこで一匹(?)のキュクロプスと遭遇し、たちまちに仲間をその餌食として食べられてしまいました。
機略縦横のオデュッセウスは、何とか意趣返しをしようと、一計を案じました。
一つ目を刺す「えもの」を用意した上で、美酒を持ってキュクロプスに接近します。

「(人を)食べた後の一献」と酒を勧める

ギリシア語たん(自転車操業中) @Hellenike_tan
【347行】"Κύκλωψ, τῆ, πίε οἶνον, ἐπεὶ φάγες ἀνδρόμεα κρέα" 曲アクセントで下付イオタがない"τῆ"は、ホメロスにおいて命令法が続く間投詞として用いられます。(続きます)
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(承前)続く"πίε"が"πίνω"(飲む)の命令法アオリスト二人称単数能動態です。"οἶνον"は"οἶνος"(ワイン)の単数対格。"ἐπεί"は「その後」という意味の接続詞、"φάγες"は"ἐσθίω"(食べる)の直説法アオリスト二人称単数能動態ホメロス風表現(続きます)
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(承前)"ἀνδρόμεα"は"ἀνδρόμεος"(人間の)の中性形複数対格で"κρέα"は"κρέας"(肉)の複数対格。全体で「キュクロープスよ、ほら、酒を飲め、人間の肉を食べた後には」となります。"φάγες ἀνδρόμεα κρέα"は「お前は人間の肉を食べた」です…

(人間を食べてなかったら)こういう酒を穏便に献上できたのに

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【348行】"ὄφρ᾽ εἰδῇς οἷόν τι ποτὸν τόδε νηῦς ἐκεκεύθει" "ὄφρ᾽"は接続詞"ὄφρα"のエリジオン型、"εἰδῇς"は"οἶδα"(知っている)の接続法完了二人称単数能動態。(続きます)
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(承前)"οἷόν"は"οἷος"(そのような)の男性形単数対格、ποτὸν"は形容詞"ποτός"(飲む)の男性形単数対格。"τόδε"は代名詞"ὅδε"(これ)の中性形単数対格、"νηῦς"は"ναῦς"(船)の詩的表現。(続きます)
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(承前)"ἐκεκεύθει"は"κεύθω"(覆う・隠す)の直説法過去完了三人称単数能動態。全体で「このような飲むものをこの船が隠していたとお前が知っていれば」となります。
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【349行】"ἡμετέρη. σοὶ δ᾽ αὖ λοιβὴν φέρον, εἴ μ᾽ ἐλεήσας" "ἡμετέρη"は一人称複数所有形容詞"ἡμέτερος"の女性形単数主格。ここでいったん途切れるので、その係る先は348行の"νηῦς"(船)です。(続きます)
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(承前)"σοὶ"は二人称代名詞単数与格。"αὖ"は「再び」、"λοιβὴν"は"λοιβή"(献酒)の単数対格、"φέρον"は"φέρω"(運ぶ)の直説法未完了過去一人称単数能動態。"εἴ"は「もし」。(続きます)
ギリシア語たん(自転車操業中) @Hellenike_tan
(承前)"ἐλεήσας"は"ἐλεέω"(情けをかける・慈悲を示す)のアオリスト分詞能動態男性形単数主格。全体で「我々の。お前に再び献酒していた、もし私に慈悲を示す」となります。
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【350行】"οἴκαδε πέμψειας: σὺ δὲ μαίνεαι οὐκέτ᾽ ἀνεκτῶς." "οἴκαδε"は「家で」、"πέμψειας"は"πέμπω"(送る)の希求法アオリスト二人称単数能動態。(続きます)
ギリシア語たん(自転車操業中) @Hellenike_tan
(承前)"μαίνεαι"は"μαίνομαι"(怒り狂う)の直説法現在二人称単数中・受動態。"οὐκέτ᾽"は"οὐκέτι"(これ以上はしない)のエリジオン型、"ἀνεκτῶς"は"ἀνεκτός"(耐えられる)の副詞型。(続きます)
ギリシア語たん(自転車操業中) @Hellenike_tan
(承前)全体で「家でお前は送っただろう。だがお前はこれ以上耐えられないほど怒り狂う」となります。
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【347~350行】ようやく行と文の区切りが一致したので、ここまでをまとめておきます。 347行は「キュクロープスよ、ほら、酒を飲め、人間の肉を食べた後には」でまとまります。"ὄφρα"は内容や目的などを示す従属節を導きます。ここでは「飲ませた酒」の説明文です。(続きます)
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(承前)行のまたがりを整理して全体をまとめると「このような飲み物が我々の船に所蔵されているとお前が知っていれば。もし私に慈悲を示して家にお前が送るなら、私は再びお前に献酒していただろうに。だがお前はこれ以上耐えられないほど怒り狂った」となります。

無法ばかりしてると誰も来なくなるぞ と戒めてみる

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【351行】"σχέτλιε, πῶς κέν τίς σε καὶ ὕστερον ἄλλος ἵκοιτο" "σχέτλιε"は"σχέτλιος"(疲れない)の男性形単数呼格。"πῶς"は「どうやって」という意味の疑問代名詞。(続きます)
ギリシア語たん(自転車操業中) @Hellenike_tan
(承前)"ὕστερον"は"ὕστερος"(あとの)の中性形単数対格、"ἵκοιτο"は"ἱκνέομαι"(来る)の希求法アオリスト二人称単数中動態。全体で「疲れない者よ、どうして何者かがお前と後の他の者に来る」となります。
ギリシア語たん(自転車操業中) @Hellenike_tan
【352行】"ἀνθρώπων πολέων, ἐπεὶ οὐ κατὰ μοῖραν ἔρεξας;" "ἀνθρώπων"は"ἄνθρωπος"(人類)の複数属格、"πολέων"は"πολύς"(多くの)の男性形複数属格。(続きます)
ギリシア語たん(自転車操業中) @Hellenike_tan
(承前)"ἐπεὶ"は「~の後」、"μοῖραν"は"μοῖρα"(割り当て)の単数対格なので"κατὰ"は対格支配の「~に沿って」の意。"ἔρεξας"は"ῥέζω"(行う)の直説法アオリスト二人称単数能動態。全体で「多くの人々の、定めに沿うことなく行った後に?」となります。
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【351~352行】行をまたがるこの文は、疑問代名詞"τίς"を中核とする疑問文です。全体で「疲れを知らぬ者よ、多くの人の中から誰がどうしてお前とお前の後の者のところに来る? 無法を働いた後に」となります。

早速飲むキュクロプス

ギリシア語たん(自転車操業中) @Hellenike_tan
【353行】"ὣς ἐφάμην, ὁ δ᾽ ἔδεκτο καὶ ἔκπιεν: ἥσατο δ᾽ αἰνῶς" "ὣς"は「このように」、"ἐφάμην"は"φημί"(言う)の直説法未完了過去一人称単数能動態。(続きます)
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