エブリシング・イズ・ゴーイング・トゥ・ビー・トロ #1

マグロだ。マグロあるのみ。 次:https://togetter.com/li/609157
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劉度 @arther456

【エブリシング・イズ・ゴーイング・トゥ・ビー・トロ】#1

2013-12-26 20:50:04
劉度 @arther456

(これからSSを投下します。感想・実況などは #ryudo_ss を使用していただけると当然です。ツッコミなどにも存分にお使いください。また、当作品にはSAN値を削る表現が多く含まれております。精神を落ち着けてご視聴下さい)

2013-12-26 20:50:19
劉度 @arther456

マグロ漁。日本近海で千年以上続けられる、伝統ある漁業である。粉末ではないバイオマグロはそれ一匹でサラリマンの平均年収に匹敵することもある。漁に出るたび数十匹のマグロを持ち帰るマグロ漁師は、漁港のカチグミであり、英雄であり、そして死をも恐れぬ戦士であった。1

2013-12-26 20:53:39
劉度 @arther456

キシハダもまた、代々マグロ漁を営む漁師である。30年以上マグロと戦うキシハダだが、その船は5人乗りの小さなものだ。「漁はイクサ。イクサの空気を肌で感じるのに、デカい船は邪魔だ」キシハダの口癖である。そして、実際その言葉は正しかったと、今の状況が示していた。2

2013-12-26 20:57:17
劉度 @arther456

KABOOOOM!「アイエエエ!?」漁船の目の前に水柱が上がる!砲撃の源は、左舷にいるマグロ……否、サイバネマグロである!背中に大砲を増設し、論理トリガで制御するカノンマグロとでも言うべきマグロが、キシハダの船を狙う。3

2013-12-26 21:01:06
劉度 @arther456

「トリカァージ!」「ハイヨロコンデー!」キシハダの命令で、操舵手のチョーシが船を動かす。曲がりながら、船上のキシハダはカノンマグロにジェット・モリを発射!「ゴボーッ!?」カノンマグロはモリに貫かれ即死!だがカノンマグロは一匹だけではない。更なるマグロが船を囲む。4

2013-12-26 21:05:20
劉度 @arther456

「ダメです!右もマグロ、左もマグロ、逃げ場がありません!カアチャン、助けて……」チョーシが悲痛な声を上げる。何たることか、海面はもはやマグロで埋め尽くされている!ツキジめいた、という言葉すら生温い。ヘル・オブ・マグロがそこにあった!5

2013-12-26 21:09:08
劉度 @arther456

キシハダは『オニの三角地帯』と呼ばれるこの海域に入った自分のウカツを呪った。相次ぐ不漁でマグロ価格が高騰していた時、チョーシがこの海域にマグロが集まっている情報を持ってきたのだ。薬代が必要なチョーシと共に出港したキシハダだったが、待っていたのは理解不能な海産軍隊だった。6

2013-12-26 21:12:43
劉度 @arther456

ガゴン!突然、船が止まる。「どうした!?」「船尾に何か……アイエエエ!?アババーッ!」船尾から断末魔!キシハダはショットガンを構える。船尾にゆっくりと這い上がってきたのは……おお、なんたる悪夢じみた機械の冒涜的シルエットか。キシハダは息を呑んだ。7

2013-12-26 21:16:10
劉度 @arther456

それはかつてネオサイタマを支配していた暗黒メガコーポ群の一つ、オムラ社によって造られたロボニンジャ・モーターヤブに酷似していた。だが決定的に違うのはその胴体部。センサーが光るはずの場所には丸い強化ガラスが取り付けられ、その中からマグロがキシハダを見つめているではないか!8

2013-12-26 21:19:57
劉度 @arther456

「ゴボボ……」「ウオーッ!?」マグロの目に見つめられ、名状しがたい恐慌状態に陥ったキシハダがショットガンを連射!だがマグロヤブに散弾は無力!逆にマグロヤブは血のついたドリル右腕を振り上げ、キシハダの頭目掛けて振り下ろす!その時!9

2013-12-26 21:23:32
劉度 @arther456

「Wasshoi!」勇壮なシャウトと共に、一台の赤黒い風がマグロヤブに体当たりした!「ゴボボーッ!?」マグロヤブはバランスを崩し転倒!強化ガラスが割れ海水が流れだす。のたうち回るマグロは、すぐに窒息し動かなくなった。10

2013-12-26 21:29:13
劉度 @arther456

キシハダは赤い影を目で追う。それは赤黒く塗られ、両側面に「忍」「殺」と、金色で恐ろしい文字が描かれている水上バイクだ。そしてそのバイクに跨るのは、同じ赤黒の装束に身を包み、同じ「忍」「殺」という文字を彫ったメンポ(訳注:面頬)を装着したニンジャであった。11

2013-12-26 21:32:05
劉度 @arther456

「ニンジャ……?」然り、ニンジャである。超人的な力を持つ存在、ニンジャ。だが、ファンタジー存在のはず……いや、決してファンタジーではない。あの恐ろしい瞳、人智を超えた力、会ったことはなくても、彼らのDNAがニンジャと、ニンジャに虐げられた歴史を覚えている。12

2013-12-26 21:35:35
劉度 @arther456

「アイエエエ!?ナンデ!?ニンジャナンデ!?」チョーシは恐慌!急性NRS(ニンジャ・リアリティ・ショック)である!揺れる漁船、定まらぬ航路!「バカ!」「グワーッ!」キシハダがチョージを突き飛ばし、舵輪を握る。彼もまたNRSの只中だったが、チョージよりも冷静だった。逃げねば!13

2013-12-26 21:39:15
劉度 @arther456

マグロ漁船は一目散に逃げ出す。そこに爆弾を抱えた殺人バイオマグロが突撃する。追いすがるマグロに対し、赤黒のニンジャはスリケン投擲!「イヤーッ!」「ゴボボーッ!?」瞬く間にマグロ3匹殺害!更にバイクのアクセルを回し、突撃開始!その前にマグロたちが立ちはだかる!14

2013-12-26 21:43:14
劉度 @arther456

「イヤーッ!」「ゴボーッ!」カノンマグロがスリケンを受け即死!「イヤーッ!」「ゴボーッ!」マグロ爆弾がスリケンを受け爆発四散!「イヤーッ!」「ゴボーッ!」マグロヤブが飛び蹴りを受け大破!そしてニンジャは再び水上バイクに着地!タツジン!15

2013-12-26 21:47:09
劉度 @arther456

だがニンジャに向け飛来するスリケンあり!「イヤーッ!」ニンジャはそれを二本の指で挟み取り、投げ返す!「ゴボーッ!」更にスリケンが飛来!相殺、消滅!ニンジャの周囲はマグロに囲まれている。だがその中に一匹、明らかに異質なオーラを放つマグロがいた。16

2013-12-26 21:50:50
劉度 @arther456

「ドーモ、マグロの皆さん。ニンジャスレイヤーです」赤黒のニンジャは両手を合わせ、マグロたちにアイサツした。アイサツは日本古来より伝わる、礼儀を重んじる儀式だ。例え敵対する者達同士であってもアイサツは行われる。ニンジャのアイサツに答え、一匹のマグロが進み出た。17

2013-12-26 21:54:22
劉度 @arther456

「ドーモ、ニンジャスレイヤー=サン。ビンナガ・ニンジャです」ニンジャの……マグロ!それもただのニンジャのマグロではない。数千年の時を経たレジェンドマグロであり、暗黒の平安時代から生きる、リアルニンジャである!18

2013-12-26 21:57:43
劉度 @arther456

「こんなところにまでやってきたか、狂人め。我らマグロの正義は何者にも踏みにじらせんぞ」「人間は海を汚す!」ビンナガ・ニンジャの周りのマグロが叫んだ。「ラッコやイルカのことも顧みない!」「だから我々マグロが正義の鉄槌を下すのだ!」知性マグロたちが口々に喚き立てる。19

2013-12-26 22:00:38
劉度 @arther456

「知ったことではない」だが、ニンジャスレイヤーの口から漏れたジゴクめいた声が、それらの声を一斉に黙らせた。「ニンジャ、それだけでオヌシを殺す理由は十分だ。貴様のハラワタを抉り出し、三枚にオロしてくれる」「ほざけ―ッ!」マグロがスリケン投擲!20

2013-12-26 22:04:07
劉度 @arther456

ブォン!忍殺水上バイクが急加速!スリケン回避!「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーもスリケンで反撃!「ゴボーッ!」ビンナガ・ニンジャは急速潜行してスリケン回避!そのまま水中を高速で泳ぎ、ニンジャスレイヤーに体当たりを仕掛ける!「イヤーッ!」「グワーッ!」命中!21

2013-12-26 22:07:45
劉度 @arther456

マグロの泳ぐ速度は50ノット(時速90km)を超える。それがニンジャになれば、速さはシンカンセンの如し。高速の体当たりは、鍛えた右ストレートを上回る!「これぞ平安時代から鍛え上げたフィッシュカラテ!海のフーリンカザンをもって、貴様をプランクトン以下まで分解してくれるわーっ!」22

2013-12-26 22:12:34