茂木健一郎(@kenichiromogi)さんの連続ツイート第1125回「人には、心がある」

脳科学者・茂木健一郎さんの12月27日の連続ツイート。 本日は、昨日、思っていたこと。
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茂木健一郎 @kenichiromogi

連続ツイート第1125回をお届けします。文章は、その場で即興で書いています。本日は、昨日、思っていたこと。

2013-12-27 09:53:01
茂木健一郎 @kenichiromogi

ひこ(1)このところ、人のこころのどうしょうもなさ、ということを考える機会が多かった。どんな人でも、それぞれのこころがあって、本人も半ば無自覚なままに、突き動かされている。その必然性を考えると、どんな人の言動でも、その背景が理解できるような気がして、驚かなくなる。

2013-12-27 09:54:43
茂木健一郎 @kenichiromogi

ひこ(2)その人が、どのような要素によって、自分というものを成り立たせているかということを考察すると、その人の言動の必然性のようなものが見えてくる。そして、その必然性に対して自覚的な人もいれば、メタ認知を欠いている人もいる。世間には、どちらかと言えば、後者が多い。

2013-12-27 09:55:49
茂木健一郎 @kenichiromogi

ひこ(3)無意識は、押さえつけようとすればするほど復讐してくる。それぞれの人は、立派な正論や、社会の中で受け入れられる行動規範とは異なる、無意識の中の怪物のようなもので突き動かされている。できれば、自分の中にいるモンスターの正体に、少しでも自覚的でありたい。

2013-12-27 09:56:52
茂木健一郎 @kenichiromogi

ひこ(4)そんなことを考えながら、夏目漱石の『こころ』のことを思い出していた。『こころ』では、主人公が、鎌倉の海岸で「先生」を見かけて、なぜか知らないが強く惹かれてしまう。沖に向かって泳いでいく先生の後を追いかけて自分も衝動的に泳いでいく。なぜ惹きつけられるのかわからないままに。

2013-12-27 09:59:28
茂木健一郎 @kenichiromogi

ひこ(5)主人公には父親がいるが、血のつながった父親よりも、先生の方に惹きつけられてしまう。そして、先生からの長い手紙を受け取り、それが「遺書」だと悟ると、自分の父親が危篤だというのに、父親のことを放り出して、先生のところにかけつけるために、電車に乗ってしまう。

2013-12-27 10:00:42
茂木健一郎 @kenichiromogi

ひこ(6)先生の「遺書」に描かれていたのは、先生の秘密だった。下宿のお嬢さんに心を惹かれた先生は、友人の「K」がお嬢さんに恋をしているのを親身になって相談に乗るふりをしながら、Kを出し抜いてお嬢さんをうばってしまう。そのことを知ったKは、先生を一切非難することなく自殺してしまう。

2013-12-27 10:02:11
茂木健一郎 @kenichiromogi

ひこ(7)先生はお嬢さんと結婚し、幸せになるはずだが、ずっと「こころ」が暴走して、制御できず、お嬢さんとの結婚を楽しめず、そのことをお嬢さんに打ち明けられない。利己的に考えれば、Kはもういないのだから、後悔してばかりいないで、人生を前に進めばいいのに、先生にはそれができない。

2013-12-27 10:04:02
茂木健一郎 @kenichiromogi

ひこ(8)漱石が、この小説のタイトルを「こころ」としたのは、人のこころの制御のし難さ、その怪物性を表して見事だと思う。リベラルで進歩主義であり、国家との距離を置いていた漱石が、明治天皇の崩御と、乃木希典氏の殉死に深い衝撃を受けたのもまた、「こころ」のなせるわざだろう。

2013-12-27 10:05:43
茂木健一郎 @kenichiromogi

ひこ(9)社会の中で受け入れられる規範、現在の価値観に基づく「正論」をとなえる人は、その例外事象が続出することに驚きを覚えるだろう。しかし、人にはそれぞれ「こころ」があることに思いを馳せれば、その抑圧が必ずしっぺ返しをしてくることも、私たちは人間教養の一つとして知らねばならない。

2013-12-27 10:07:12
茂木健一郎 @kenichiromogi

以上、連続ツイート第1125回「人には、心がある」でした。

2013-12-27 10:07:29