- treeofevil
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少年が、屋敷の廊下を歩いている。 其の手に一つ、ぬいぐるみ。 少年は歩いている。 其の屋敷のとある部屋だけ、ドアが違う。 綺麗な綺麗な鋼鉄の、綺麗な綺麗なドアである。 七つ動物描かれた、綺麗な綺麗なドアである。 ドアは開く。手をかけずとも、独りでに。 其の部屋に在るものは——
2013-12-25 19:07:53ふふふふふふふふっ! ——捨てる 楽しいなあ!楽しいなあ! 何もかもが楽しくって仕方がないなあ! ——消える あははははっ! ——其処に 次はどんな演目かなあ! 演者はもう居るんだし、早く始まらないかなあ! ——遺る あははははははははははははっ!
2013-12-25 19:08:11《演者紹介:第三一公演》 【怠惰】ペレサ (@b7s_mt) vs 【色欲】ソーユィ (@ktmyng)
2013-12-25 20:51:39《まもなく……12月25日21:00より……第二九公演、第三十公演、第三一公演、第三二公演が同時開演致します…… ご観覧の皆様はお席にお着きくださいますようお願い致します……》
2013-12-25 20:52:01あっははははははははははははっ! さあ時間だよ! もうそろそろ何も言わなくたって理解出来るよね? 屑みたいな頭でもさ! それじゃあ楽しみにしているからね! 頑張って演じてよ馬鹿な駒! あははははははははははははっ!
2013-12-25 21:01:16きぃと高く軋む音を響かせて、車椅子が止まる。ぼうと、虚ろな目が周りを見渡すように彷徨った。白と緑、白詰草があたり一面を覆っている。ほう、と息をついた。鮮烈な色は、先ほどまでいた庭に欠けていたものだったから。やはり、青々とした鮮やかな景色は良い、と。
2013-12-25 21:06:04さく、と、緑を踏みしめる感覚がした。 青々と広がる空に、花畑。そんな色彩豊かな世界がそこにあって。 「ミリューも、似たような所に行ったんでしょうね」 笑みを零せば、さぁ、と風が通り過ぎていく。 暖かなそれに流される髪を直しながら、視線を漂わせれば、遠くに背の低い人影を見つけて。
2013-12-25 21:45:29既に人がいたことに驚きながらも近寄る。子供かと思っていたが、どうやらその背の低さは車いすのためだったようだ。 黒髪を風に揺らすその相手まで、あと5歩ほど。そこで足を止めて、 「あら、先客がいたのね。こんにちは?」 青年に向けて、言葉を投げる。
2013-12-25 21:48:29音が、聞こえて。緩慢に首を巡らせた。音の形を思い返して、ゆっくりと口を動かす。その声の響きに病理はまだ載せず、乗らず。 「……こんにちは」 声は届いただろうか。はっきりと発声することは、最近していなかったから。風の音に紛れてしまったかもしれない、なんて考えながら、
2013-12-25 21:58:02首を巡らせた先、陽射しに煌めく金の髪、黒い服のひとを見つめ目を細めた。 「…きれい、だなあ」 零れたのは吐息混じりの囁き。
2013-12-25 22:00:57気を付けていなければ風に攫われてしまいそうな、小さな挨拶だった。弱々しい声をなんとか耳が拾う。 「素敵な場所、ね」 きれいという青年の言葉に、再度周辺を見回しながらそう返した。 ゆるく此方を振り返った顔、黒の間から見える薄藍を据え。ふわり、笑んで。 「貴方は、どうして此方に?」
2013-12-25 22:19:10場所を指しての賛辞に、ああと曖昧に頷いて。小さく、こっそりと秘密を打ち明けるみたいに。 「…聞こえて、しまったかな。…貴女を、指してのことだった」 こちらへ向けられたほほえみに、少々照れを滲ませながら。問いには、すこし考えて。 「…どうして、かぁ。…どうして、だろうねえ。」
2013-12-25 22:42:15「…特に、目指す場所があったわけでも、なかったし。……偶々、と。表すのが、一番、かなあ」 どうだろう、と。返答は緩やか、曖昧として。ただ声には幽かに、すぐにでも紛れて消えてしまうそうな病理が滲む。
2013-12-25 22:48:00「そうでしたの?やだ、勘違いしてしまって」 少し気恥ずかしそうに目をそらして、口元を手で隠す。 ごめんなさいね、そしてありがとう。しゃがんで目線を合わせてから、同じように照れを浮かべる彼へと笑いかけ。 貰った問いへの返答。曖昧としたその言葉には、今までとは違う何かの響きを感じる。
2013-12-26 01:57:24けれどそれは漠然とした感覚で、何かは見当もつかない。今は特に気に留めることはせず。 「…そう、偶々なのね。でも、」 「貴方、今にも死にそうね?」 その言葉には、普通なら心配が含まれるべきだろう。 ――しかし、それは一切なく。代わりに恍惚とした響きで、その言葉は放たれる。
2013-12-26 01:59:06「…こちらも、どのようにも取れる、言い方だったから。」 構わないよと、目線を合わせて笑いかけてくれた彼女に、目を細めた。 続けられた、うっとりとした声音と言葉の内容とのちぐはぐさに、僅かに首をかしげたけれど、ふ、と。淡く笑んで。 「…うん、そんな調子で、言われたのは初めてだ」
2013-12-26 18:27:46喜色に満ちた声は艶やかで、くすぐったさすらある。ああこえもきれいなのだとぼんやり考えて、それが問いの形をしていたことを思い出した。 「…そうだね、うん、ひとから見たら、死にそうな部類に、入るのだろうねえ。」 言葉を一旦切って。目を己の右手へ落とす。血色の悪い肌。す、と目を伏せて。
2013-12-26 18:28:06「死にそうに見えているの、だろうけれど。きっと実際、死んでいる。…でも。…死んでいるけど、死んでいない。生きているけど、生きていない。どっちつかず、なんだ」 少しずつ、少しずつ。曖昧な言葉には病理が滲んで、澱のように沈んでいく。
2013-12-26 18:28:13静かに語られる言葉に黙って耳を傾け、言い終わる頃にほぅ、と息を吐く。 「まぁ、とっても素敵ね?」 生きていないのに生きていて。死んでいないのに死んでいて。 ――この人ならきっと素敵な恋人に成ってくれる。 歓喜と期待に支配されて、相手の言葉が更に不思議な色を帯びるのには気付かず。
2013-12-27 00:24:23更にうっとりと声を漏らし微笑んだ。その頬は僅かに紅潮して。 「そうね、でもどっちつかずなら、」 ――私が、誘いましょう。 囁くように、艶やかな厚い唇から零れたその言葉は、熱と妖しさを孕んで響いた。 どちらに、とは敢えて伝えない。それは直ぐに解ることになるだろうから。
2013-12-27 00:27:44青年の問いで、まだ名乗っていなかったことを思い出し。そうだったと、けれど焦る素振りもなく、ゆっくり口を開いた。 「私は『色欲(ソーユィ)』、またの名を『グラナート』と申します」 首をこてり傾けて、言い聞かせるように答える。 見つめてくる薄藍を、問い返す代わりにじぃと見つめ返して。
2013-12-27 00:29:10艶然とした声を、やはりきれいだと、聞き惚れて。しかしひとつの疑問が浮かぶ。 「…どうやって?」 生憎と、私にはどうすればいいか、わからないから。 灰色が見つめ返すのを、まるで射抜くようだとひとつ瞬きをして、名乗りに頷くかのように、また瞬いた。ソーユィ、色欲。グラナート。
2013-12-27 19:10:18「…では、私も。そうだね、『怠惰(ペレサ)』と。それと、もう一つは、」 名乗ろうとして、つっかえた。名乗ることも、呼ばれることもなくなって久しい名前だったから。どうにか朧な形だけを思い出して、音を付けた。 「…未明、と。」
2013-12-27 19:10:26