野家啓一氏「3.11以後の科学技術と人間」

島薗進氏のツイートをまとめました。 マンハッタン計画で、科学と技術は国家主導のものとなり、英国BSE問題、3.11を経て、科学技術への信頼は崩壊した。~中略~ 結論:3.11後は科学技術と人間の関係を根本から考え直すべき時。
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島薗進 @Shimazono

1野家啓一氏「3.11以後の科学技術と人間」総合人間学会編『3.11を総合人間学から考える』2013年6月(学文社)は、原発災害後の科学技術について、また専門家の信頼喪失を考える上で参考になる。私ほどひどく怒っていないが、現状への冷静な批判。巨視的展望により要点はつかみやすい。

2013-12-30 08:23:02
島薗進 @Shimazono

2野家啓一「3.11以後の科学技術と人間」1.神話の崩壊―「(東電福島)原発事故は、これまでわれわれが自明のものとして安住してきた幾つかの「神話」を崩壊させるにいたった」。科学技術の「価値中立神話」、「安全神話」、「信頼神話」などが砂上の楼閣にすぎなかったことが明白になった。

2013-12-30 08:23:23
島薗進 @Shimazono

3野家啓一「3.11以後の科学技術と人間」「科学と技術」が19世紀後半に「科学に基礎を置いた技術」となり、2度の大戦を経て国家主導のものとなった。マンハッタン計画はその集大成。20世紀後半には産業基盤を支えるものとなり国家の命運を左右するものに。その間に科学技術諸神話が形成。

2013-12-30 08:24:24
島薗進 @Shimazono

4野家啓一「3.11以後の科学技術と人間」まず「価値中立神話」「現代の科学技術は使用者の善意・悪意に拘わらず、否応なく社会的リスクと表裏一体のものなのであり、その意味で「価値中立的」ではありえない。」科学技術というモンスターを最悪のシナリオを想定して統御しなくてはならない時代。

2013-12-30 08:24:49
島薗進 @Shimazono

5野家啓一「3.11以後の科学技術と人間」次に原子力の「安全神話」「もともと「安全神話」は「安全であるべし」という当為を「安全である」という事実とすり替え、事実判断と価値判断を意図的に混交することによって形作られたもの」しかもその神話に自縄自縛になり安全対策をサボってきた。

2013-12-30 08:25:13
島薗進 @Shimazono

6野家啓一「3.11以後の科学技術と人間」最後に「信頼神話」英国BSE問題で露わになった政治と科学への二重の不信。「福島原発事故によって生じた科学技術に対する国民の意識の変化は、まさに二重の不信以外の何ものでもない」科学技術に依拠する現代社会では「信頼神話の崩壊」は放置できない。

2013-12-30 08:25:43
島薗進 @Shimazono

7野家啓一「3.11以後の科学技術と人間」2.「トランス・サイエンス」と「リスク社会」―『ラベッツ博士の科学論』が述べる「ポスト・ノーマル・サイエンスとは、科学研究が科学者コミュニティの内部でもパズル解きに留まらず、新たな社会的課題に直面しているような問題状況を意味する。

2013-12-30 08:26:03
島薗進 @Shimazono

8野家啓一「3.11以後の科学…」市民参加による「拡大ピア・コミュニティ」の形成が必要。「科学の専門家といえども社会問題については素人であり、専門家の知識が最良の解決を与える、という前提はもはや維持できない。」「解決に科学は必要だが、科学だけでは十分ではない新しい政策の時代」と。

2013-12-30 08:26:43
島薗進 @Shimazono

9野家啓一「3.11以後の科学技術と人間」以上のラベッツの論とベックのリスク社会論は対応関係に。「リスクを伴う科学技術を社会がどう受け入れるかについては、専門家の科学的合理性のみっで決めるわけにはいかない。そこにはステークホルダーである市民および地域住民による社会的合理性を」

2013-12-30 08:27:04
島薗進 @Shimazono

10野家啓一「3.11以後の科学技術と人間」「基盤とした「シヴィリアン・コントロール」の視点が必要となる。われわれが直面しているのは、科学の不確実性と技術の不完全性という条件のもとでの社会的な意志決定である」「専門家の科学的知識と市民の社会的判断力の結合がなされねばならない…」

2013-12-30 08:27:24
島薗進 @Shimazono

11野家啓一「3.11以後の科学技術と人間」3.未来世代の責任―「通常の人間社会の倫理は顔の見える現在世代の間の「双務性」を特徴とする。すなわち、自分が殺されたくなければ、他人も殺してはならない、というわけである」それに対して世代間倫理は不在の未来世代への「片務性」を特徴とする。

2013-12-30 08:27:53
島薗進 @Shimazono

12野家啓一「3.11以後の科学技術と人間」未来世代に不利益をもたらす決定は見過ごされやすい。だが後続世代への配慮は年金問題や医療問題でも意識されてる。「他者危害原則」を未来世代にまで拡張していく想像力の問題。結論:3.11後は科学技術と人間の関係を根本から考え直すべき時。

2013-12-30 08:28:12
島薗進 @Shimazono

13野家啓一「3.11以後の科学技術と人間」私の読後感:すぐれた展望で事態を見やすくさせてくれる。科学技術が社会問題、価値・倫理問題と切り離せなくなったという点が重要「専門家の科学的知識と市民の社会的判断力の結合」が必要。だがその具体化はきわめて困難―原発後の日本の経験の肝では?

2013-12-30 08:28:42
島薗進 @Shimazono

14野家啓一「3.11以後の科学技術と人間」専門家が国家・産業と連携して進めていく科学技術による「革新」ドライブを「市民の社会的判断力」で留めることが可能なのか?またこの問題を政官産学連合が受け入れていくことができるのか?そこに制御困難な国際競争や超国家勢力という問題も関わる。

2013-12-30 08:30:22
島薗進 @Shimazono

15野家啓一「3.11以後の科学技術と人間」野家氏は東北大理事・副学長を務めた日本の現代哲学会の重鎮。物理学を学び科学史・科学哲学にも通じてる。吉川弘之元日本学術会議会長や野家氏のような哲学的、人文学的素養のある人材がチームを作って科学技術政策に影響を及ぼすようでなくては…

2013-12-30 08:36:18