石巻の今

佐藤友亮 Yusuke Satoh🇺🇦🇺🇦 @Satoh_kun

【石巻の今の四季】みなと荘館長だった阿部慶吾さんは、大震災後に湊小学校避難所のまとめ役の一人になられた。私は震災から4ヶ月後の2011年7月に医療支援チームの一員として同避難所で阿部さんに初めて会った。今回、神戸から盛岡に年末の帰省をする機会に石巻に立ち寄り、阿部さんと再会した。

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【石巻の今2】阿部さんは支援学校の教諭から校長をつとめられた方。2011年10月に湊小学校避難所が閉鎖した後は法務局で人権相談の仕事をしつつ、自治体の要請で、宮城県下の5つの小中学校でスクールカウンセラー（SC）をしている。宮城県では震災後、中学校には各校最低1名のSCを配置。

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【石巻の今3】SCは臨床心理士が勤める場合が多い。しかし人材不足の状況から、豊富な教育経験を有している阿部さんに白羽の矢が立った。中学校には週に一度訪れて、問題を抱えた生徒と面談をしている。教師からの相談も受けている。子供達と同様に、先生達もまた被災者である。

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【石巻の今4】肉親を無くした子供達は深い悲しみを抱えている。多くの子供はあまりそれを表に出すことなく学校に通っている。先生達は懸命に子供をサポートしている。心の問題が表面化した場合にSCとして相談にのっている。阿部さん自らが被災者であるという立場から、問題を一緒に考えている。

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【石巻の今5】決して頭ごなしにならないように、子供達と同じ目線で考えるようにしている。このやり方には、支援学校での30年以上にわたる指導経験が生きていると感じている。相談を受けた後で元気になった子供達には特別な関わりを持たず、遠くから見守っている。今の子供達が抱えている問題は、

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【石巻の今6-修正】仮設住宅という特殊な状況が深く関係していると感じている。震災から3年近くが経過した今でも、厳しい生活環境で子供たちは暮らし続けている。学校では明るく振舞っていても、家庭で「居場所のなさ」を感じている子供がいる。

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【石巻の今7】子供達と目線を合わせることを大切にしているが、家を失い、家族を失い、いまだに仮設住宅からスクールバスに揺られて遠くの学校へ通う子供たちと、自分（阿部さん）が当事者性を共有することは難しい。同時に先生達もまた、個人的に厳しい状況を抱えながら生きている。

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【石巻の今8】そのような状況にある子供達が「人の役に立てること、良いことをすることが、自分のエネルギーになる」と言ったりすることがある。子供達が本来持っている力の強さを感じる。また 阿部さんは、SCなどの仕事と同時に地域の町会長（湊小学校に隣接した海に近い地域）もされている。

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【石巻の今9】地域では、人口流出が進んでいる。震災前と比較して、元の場所に戻って生活している世帯は30%強にとどまっている。仮設住宅での生活から、他の地区や他の市町村に移り住むケースが多い。 多くの支援のおかげもあり、「もの」はある程度充足する状況になってきた。

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【石巻の今10】これからは教育、雇用、仮設住宅からの移動など、政治と行政の力がいよいよ大切になってくると感じている。そのような状況で町会長としてできることは限られているが住民の意見を行政に伝えることを意識している。住民からの、行政の迅速な対応への謝意をきちんと伝えるようにしている

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【石巻の今11】避難所でまとめ役をしていた際に出会った全国の医療施設の方とは今でも交流があり、時々招かれて、震災のこと避難所生活のこと等をお話させてもらっている。特に（南海トラフ地震を想定している）和歌山の方々の関心の高さが印象に残っている。急性期はとにかく水の確保が重要！！

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【石巻の今12】仙石線の完全復旧も実現しておらず、復興への道は険しい。しかし、町で事業をしている古くからの友人たちもなんとか頑張っている。それぞれが一人きりだったら決してできないことだと思う。先日、校長会で岩手県沿岸部の先生と話したが、「石巻はまだいいほうです」と言われた。

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【石巻の今13】自分で役にたてることがあるかぎり、頑張って行こうと思う。

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【あとがき】再会した阿部さんは以前のイメージと全く変わらない方だった。物腰に高圧的なところが一切なく、この温かさ、慎み深さで、多くの人をまとめてきたのだろう。ごく自然に情報を集め、人を信じ、つなげて、他の人間では容易にはなし得ない重要な仕事を淡々と続けている。

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【あとがき2】このような「大人」が、この国の土台の良質な部分を作ってきたのだろう。そう思いたい。地域における、教育OBの重要性も痛感した。阿部さんは優しいだけではなく、「大変な時に全ての意見を一本化することなど不可能」というような決断力も持っている方である。いずれまた

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【あとがき3】神戸にお招きして、お話をお聞かせいただきたい。阿部さんのすごさを、わたしがここで表現できたかは全く自信がない。媒体の制限から表現の「押し出し」が強く感じられるかもしれませんが、これは私の拙さによるものです。阿部さんごめんなさい。そしてありがとうございました。

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【あとがき4】お読みいただいた皆様もありがとうございました。東日本大震災の被災者の方々のことを思いながら、この年末年始を過ごします。ご健康をお祈りいたします。良いお年を。（写真は、承諾を得て掲載） http://t.co/UOewtKPyp6

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