サンキュータツオ @39tatsuo さん、年末に「文七元結」を考える。

学者芸人・サンキュータツオさんは落語家(立川志の輔さん)を卒論のテーマに選ぶほどの落語好き。そんなタツオさんが年末の江戸の風景を描いた落語「文七元結(ぶんしちもっとい)」http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%96%87%E4%B8%83%E5%85%83%E7%B5%90 について疑問がわいたそうです。
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サンキュータツオ(米粒写経) @39tatsuo

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サンキュータツオ(米粒写経) @39tatsuo

落語『文七元結』に関してここ最近考えていた。今月頭の立川春吾さんのツイートを見て「文七はなぜ旦那にウソをついたのか」という問いに触れてからである。たしかにそうなのである。旦那にウソを言っていいものかどうか。見ず知らずの人からもらったお金、それをそのまま報告してしまっては、

2013-12-17 22:56:28
サンキュータツオ(米粒写経) @39tatsuo

その人に報いることもできないので、やはり黙っているという選択肢なのだろうが、それにしても、噺終盤に登場する旦那は、酸いも甘いも噛み分けた気前がよくまた理解もある旦那である。正直に言えば許してくれそうな旦那なのである。何年もお世話になっている旦那よりも長兵衛?命を救ってくれた

2013-12-17 22:59:03
サンキュータツオ(米粒写経) @39tatsuo

とはいえ、旦那を裏切るとは…そんな細かい指摘はこの噺は拒絶している、あるいはファンタジーなんだからそこは真剣に考えるなというロマン派の反論もありそうだが、圓朝作なのでそこは設定がきちんとしていると信じたい。そこで考えるべきは、旦那ではなく、近江屋番頭の平助である。

2013-12-17 23:01:16
サンキュータツオ(米粒写経) @39tatsuo

文七は旦那ではなく、まずお金の管理をしているこの番頭に言いにくいがため、あるいは失策の責任を取らされるかもしれない番頭がどのような仕打ちをするのか知れぬ恐怖のために、正直に言えず、また旦那を前にしたときも言えなかったのではないだろうか。文七は告白する機会を二度も逸しているのである

2013-12-17 23:02:55
サンキュータツオ(米粒写経) @39tatsuo

だが、そこは「文七がパニックに陥っていたから」という理由で深く考えるなという意見もわからなくはない。あとは、お世話になりすぎている近江屋の主人に対して、「いい子ぶる」文七(=正直に言えない)というのが見え隠れするのだが、そこはのちにお久と一緒になり、まっすぐなお久に修正されるかも

2013-12-17 23:05:57
サンキュータツオ(米粒写経) @39tatsuo

お久という女性は、だらしない父親(=長兵衛)のためにも自己犠牲をいとわぬ芯の強い女性で、文七を尻に敷くのは間違いない。「文七元結」が繁盛するのならば、この噺の後、文七はお久によって成長することになるのだろう。ということを12月は考えた。はい、さびしいです。

2013-12-17 23:08:46
どどめ色の何か @shintkt

「サンキュータツオ @39tatsuo さん、年末に「文七元結」を考える。」をトゥギャりました。 http://t.co/H2k8jEpE09

2013-12-31 17:41:00
サンキュータツオ(米粒写経) @39tatsuo

うお、ありがとうございます! 「文七元結」に関しては、以前WOWOWぷらすとにてその構造に関しても考察しました RT @shintkt 「サンキュータツオ @39tatsuo さん、年末に「文七元結」を考える。」をトゥギャりました。 http://t.co/d2ES26S5Yh

2013-12-31 17:48:49
サンキュータツオ(米粒写経) @39tatsuo

2012.4.17の「WOWOWぷらと」にて、「立川談春と、その落語」というテーマで話した時に、個人的に疑問に思っていた「文七元結」の構造的な謎についても考えてみました。動画は以下です。 http://t.co/XZmmHVjdg1 … (このころのぷらすとは貼付けできる!)

2013-12-31 17:51:32
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サンキュータツオ(米粒写経) @39tatsuo

「文七元結」の山場は大きく二つあって、 ①長兵衛が女郎屋にいき娘のお久と変わりに50両借りる ②長兵衛が吾妻橋のたもとで身投げしようとする文七をみつけて助ける この二つなのだが、長編にも関わらずこの二つの山場が異様に近い場所にある、ということである。

2013-12-31 17:54:56
サンキュータツオ(米粒写経) @39tatsuo

「業の肯定」史観で捉える「文七元結」は、<①長兵衛が女郎屋にいき娘のお久と変わりに50両借りる>の次に、長兵衛は心を入れ替えたと思いきや、そのままちょっとだけはと思ってそのまま娘を売った金で博打やったり酒呑んだりして使い果たしてしまうパターン。このあたり、おなじ圓朝作の「芝浜」

2013-12-31 17:57:07
サンキュータツオ(米粒写経) @39tatsuo

とも連続的で、実は「ダメな男」が主役な噺の類別かと思うのだが、実はこの直後に「文七元結」は<②長兵衛が吾妻橋のたもとで身投げしようとする文七をみつけて助ける>が入る。つまり、「金は使う」の方法が、②によって酒や博打ではなく「人のため」になったのだ。ただしそれもその場の流れで。

2013-12-31 17:59:07
立川 春吾 @tatekawashungo

文七は最初から死ぬつもりはなかったんですかね。長兵衛が通らなかったらどうなってたのか。飛び込んでないんじゃないかという気がして来ました。

2013-12-31 18:00:44
サンキュータツオ(米粒写経) @39tatsuo

こんなに忙しい噺はないのだが、談春師匠版だとこの二つの山場をひとつといっていいくらいの展開に収縮し、文七に言っていること=自分に言っていること と重ねて、「金は使うがおなじことは繰り返さない」という「最後の業の肯定」的な儀式にしてしまうのだ。これにはうなった。

2013-12-31 18:01:10
サンキュータツオ(米粒写経) @39tatsuo

「文七元結」を聴いて、私が抱いていた従来の演出などの不満であったポイントというのは、この二つの山場を連続的に捉えていない点にあり、だからこそただ冗長で緩慢な美談だという印象だったが、はじめてここに納得に行くものがあるとすら感じたのだった。えらそうに言いますけれど。

2013-12-31 18:03:31
サンキュータツオ(米粒写経) @39tatsuo

長兵衛に見つかるためにあそこにいたんだよね。「途方に暮れていた」んです。暮れ方を知らずに。RT @tatekawashungo 文七は最初から死ぬつもりはなかったんですかね。長兵衛が通らなかったらどうなってたのか。飛び込んでないんじゃないかという気がして来ました。

2013-12-31 18:04:45
サンキュータツオ(米粒写経) @39tatsuo

しまったまた落語ノイローゼ発症してしまった。もう「寿限無」の旅で充分だろうと思っていたのに。

2013-12-31 18:07:21
立川 春吾 @tatekawashungo

@39tatsuo あ、なるほど。通らなかったら小一時間で帰った気はします。一応飛び込もうとはした、という言い訳を抱えて。

2013-12-31 18:23:25
サンキュータツオ(米粒写経) @39tatsuo

@tatekawashungo あそこも実は、文七も江戸っ子なので「引っ込みがつかなくなった」と考えることもできますよね。さほど本気ではなかったにせよ、長兵衛に飛び込もうとしたところを見られて止められたので、引っ込みがつかなくなって飛び込もうとし続けるという。

2013-12-31 18:26:55
立川 春吾 @tatekawashungo

@39tatsuo 旦那に嘘をついた文七の人格から逆算すると、それが腑に落ちますね。

2013-12-31 18:39:33