「選択」 記事紹介  「電気事業連合会」

「選択」http://www.sentaku.co.jp/ 2011年6月号 より 「日本のサンクチュアリシリーズ441 電気事業連合会 まさに「国民共通の敵」」
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''政・官・メディアを見事に懐柔
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 電事連において、常勤副会長、企画部長、原子力部長、広報部長といった主要ポストは東電が固定的に押さえており、東電イコール電事連、というほどの圧倒的な存在だ。「東電の声がそのまま業界の声」(電事連関係者)になり、換言すれば、東電に牙をむくことは、全国の電力会社従業員十三万人を敵に回すのと同義なのだ。

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電事連の盤石な政治力の背後にあるのが官僚組織との癒着だ。例えば、東電はこれまで天下り、コネ入社を積極的に受け入れてきた。天下りこそ、石田徹前資源エネルギー庁長官の辞任で一息ついたが、コネで入った有力官僚の子息は今なお多数存在する。東電のある中堅社員は「わたしの同期でコネ以外は数名しかいない」とまで言い切る。

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電事連が懐柔しているのはもちろん官僚、政治家だけではない。本来なら社会の木鐸たるべきメディアさえも、電事連の籠絡の餌食になっている。大手紙の電力担当記者が籍を置く「エネルギー記者会」は、電事連の広報部の隣室にあてがわれ、マスコミ各社の電話も受付も全ては電事連持ちだ。かつては電事連自体の広報部長もマスコミ出身者が務めていた時代もあるほど、関係はズブズブだ。
 またメディア出身者には、「海外電力調査会」や「電力中央研究所」など息のかかった組織にポストをあてがう。国の電力政策を司る審議会「電気事業分科会」にある二つのメディア委員枠には、電力会社の推薦を受けた大手紙論説委員などが座る。「委員には任期を終えた後も、個人研究会などの私的な組織を作らせ、運営費など資金面での面倒をみる。ハコさえ作ってくれれば金を流す。一生面倒をみるというわけだ。こうした手厚い保護で、電事連は大手メディアに電事連シンパを形成してきた」(電力業界担当記者)。
 
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エネルギー担当記者の間では、電事連の凄まじい接待攻勢を指す、「電事連トラップ」という言葉が代々語り継がれてきた。電事連の広報部が催す接待は、「黒塗りのハイヤーが乗り付け、赤坂あたりの高級レストランに行った後、銀座で二軒、三軒流す。記者が鼻の下をのばそうものなら、ここぞとばかりに『以後、ご自由にお使いください』ともちかける。接待費は数百万円、電気料金改定時など重要な政治案件を抱えた際には数千万円に及ぶと聞いたことがある」(元エネルギー担当記者)。ここで甘い汁を吸った記者が電事連の批判記事など書けるはずもない。

発送電一体は「絶対国防圏」

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他の電力会社を巻き込む今回のスキームは東電が編み出したものだが、「東電をただ救済するだけならやりたくない、というのが各社の本音だった」(民主党関係者)という。

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その好機を自ら潰したのが、ほかでもない菅直人首相の「浜岡原発停止要請」だ。官僚、政治家、メディアすべてを牛耳り、国策は自らの振り付けで決まると思い込んでいた電事連にとって、唐突な「政治判断」はプライドを踏みにじられた瞬間であり、再び一枚岩の結束を取り戻した瞬間でもあった。さらに官邸が「発送電分離」をほのめかすに至り、電力会社の怒りは頂点に達した。発電事業と送電事業の一体は、一九九〇年代に電力自由化論議が浮上した当初から電事連が「絶対国防圏」として守り抜いてきた聖域だからだ。このタブーに触れて、政治生命を保ち続けた者はいない。

''息のかからぬ選挙区なし
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電力解体を目指すには、エネルギー政策全体の議論が欠かせないが、審議会などの平場の議論を進める際にも、前線部隊である電事連が様々な抵抗をみせるのは想像に難くない。審議会に参加する有識者も難敵だ。民主党政権になってから電力寄りの学者は一掃されたかに見えるが、実際には気脈の通じた学者が多数居残っている。色のついていなさそうな主婦代表さえ、電力会社から給料を支払われていたケースもあるのだ。
 何より発送電分離の最終決断をする政治家は政治生命を賭ける覚悟がいる。ある電事連関係者は「国策で原発をやってきたのに裏切られた。こうなれば、いろいろ議論するより政権交代させる方が簡単だ。官邸にも選挙応援をしてやった議員がいるが、これからは考えないといけない」と吐き棄てる。
 ユニバーサルサービスを掲げる日本の電力会社の管轄は、全国津々浦々に及ぶ。即ち、電事連の息がかからない選挙区は、この日本には存在しない。

以上

iPatrioticmom @iPatrioticmom

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2014-01-09 21:16:10