茂木健一郎氏 @kenichiromogi 第1139回【自虐史観もその否定も、外が見えていないことは同じ】連続ツイート

茂木健一郎 @kenichiromogi

連続ツイート第１１３９回をお届けします。文章は、その場で即興で書いています。本日は、このところ、思っていること。

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じそ（１）いわゆる「自虐史観」ということを言う人たちがいる。第二次大戦の敗戦に至る日本の指導部のふるまいが、間違ったものであったとか、反省すべきだという意見に対して、それは「自虐史観」であると反論する。今朝は、この「自虐史観」という言い方について、考えてみたい。

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じそ（２）日本の役所とか、会社が、コンプライアンスだとか書類主義とかで効率が悪い、という言い方はしばしばされる。では、例えばアメリカのオフィス環境が、そのようなものと無関係であるかと言えばそうではなくて、Dilbertというカートゥーンがそのことをずっと描いている。

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じそ（３）たとえば、Dilbertの２００５年９月１０日の一コマ。「今日からは、我が社のパスワードは、文字、数字、落書き、手話、そしてリスの鳴き声を含まなければならないことになりました」と上司が部下に伝える。バカらしく面白い。 http://t.co/WURy0KXMZ0

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じそ（４）会社の情報セキュリティが、どんどん意味のない、面倒くさい手続きを増やしていくことは誰でも経験することだが、それは、日本だけの問題ではなくて、アメリカのオフィス環境も同じである。グーグルのMt. Viewのキャンパスに行ったとき、広報担当の人は、ちょっと官僚的だった。

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じそ（５）軍の上層部が、時に部下の兵士の命を重く考えないで軽薄な決定をするというのは、イギリス軍も同じことで、そのことは、ＢＢＣのローワン・アトキンソン主演のコメディ「ブラックアダー」に見事に描かれている。この中で、貴族出身の上司は、自分は安全なところにいて部下を前線に送る。

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じそ（６）いわゆる「自虐史観」の問題点は、日本の反省点を、日本固有のものと考えるところにあると私は考える。確かに、日本人は時に愚かな行動をした。しかし、それは日本人だけが取り立てて愚かであるというよりも、人間は世界の至るところで、いつでも愚かだったのであり、前に進むためには

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じそ（７）人類は時に愚かな振る舞いをするという認識が必要である。世界に、愚かな国と、賢い国があるのではなく、どの国も指導部は時に愚かな意志決定をして、国民に犠牲を押しつける、という認識が必要である。たとえば、ベトナム戦争におけるアメリカの行動は、愚かだったであろう。

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じそ（８）日本の軍部だけが愚かだったという「自虐史観」は、日本だけを見ていて外を見ていない点において、ダメである。しかし、その裏返しで、日本の戦争中の指導部の決定は正しかった、問題がなかったと見るのも、逆に「外」が見えていない点で、「自虐史観」と変わらないと言えるだろう。

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じそ（９）戦前の日本の指導部の判断だけが、世界史の中で取り立てて愚かであった、という「自虐史観」からは、脱却した方がいい。しかし、だからといって、それを全面的に正当化するのも、結局は外が見えていないことでは変わりがない。世界史の中における人類の振る舞いを、全体として見る必要がある

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以上、連続ツイート１１３９回「自虐史観もその否定も、外が見えていないことは同じ」でした。