【第一部-玖】誰かを見つめる時雨と能代と阿賀野 #見つめる時雨

能代×阿賀野
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誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

「炬燵っていいよね~。阿賀野、ずっとここで暮らしたい…」 阿賀野が炬燵に埋もれている。こういうのなんて言うんだっけ? …そうだ、こたつむりだ。 「ちょっと、阿賀野姉!だらしないわよ!せめて体は出してよ!」 能代がそう言うと、阿賀野はますます奥へ潜っていった。

2014-01-06 21:31:22
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「炬燵が阿賀野を離してくれないの…ゴメン、能代…抗えない阿賀野を許して…!」 能代はため息をつくと、阿賀野の反対側へ移動し、炬燵に足を入れた。 「…いたい!やめて能代!お姉ちゃんを蹴るのはやめて!?」 能代が中で足蹴りしてるみたい。僕も一緒に蹴られないかと、少しヒヤヒヤ。

2014-01-06 21:35:50
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

「…私も入りたいから、少し空けてよ」 「なぁんだ、能代も入りたかったのなら最初からそう言えばいいのにぃ」 「ずっと立ってたら冷えてきたの!阿賀野姉のせいなんだから…もう」 …こんなやりとりを眺めてると、この二人って本当に仲良いんだなぁって思うよ。ふふ

2014-01-06 21:39:41
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「能代~、蜜柑取って~」 能代がすごい呆れたような顔をする。でも、それでも蜜柑を取ってくれる辺り、優しいな、能代って。 「はい、時雨もよかったらどうぞ」 「うん、ありがとう」

2014-01-06 21:43:08
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「阿賀野姉、口に筋がついてる」 そう言って能代が阿賀野の口元に人差し指を伸ばした。 「ん~…ありがと!能代」 と、そのとき、提督室の扉が開いた。 「阿賀野いる?ちょっと資材の点検に付き合って欲しいんだけど」 提督が顔を出した。手には資材表らしきものが握られている。

2014-01-06 21:47:09
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「ええー…寒そう……」 阿賀野が渋る。もう、阿賀野は今日秘書艦なのに… 「阿賀野姉、ダメでしょ。阿賀野姉は今日秘書艦なんだから…私も手伝うから、早く終わらせちゃおうよ」 「うー…」 阿賀野が机の上に顎を乗せて唸る。もうちょっと頑張ろうよ、阿賀野…

2014-01-06 21:51:11
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少し待つと、阿賀野が渋々と炬燵から出てきた。 「あ、提督、僕も手伝うよ。人数は多いほうがいいでしょ?」 「そう?じゃあ、お願いするわ」 そうして提督たちと廊下に出る。…あれ、能代がいない?まだ中かな。 「能代?行くよ」

2014-01-06 21:54:41
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提督室を覗くと能代がまだ中にいた。何でだろう、少しぼーっとしている。 「能代?」 「あ!?ごめんなさい、すぐ行くわ!」 能代が慌てた様子で出てきた。…能代、人差し指を口につけてたように見えたけど、何をしていたんだろう? 人差し指…さっき能代は…そうか、そういうこと……かな?

2014-01-06 21:59:35
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

能代っていつもテキパキと仕事をこなしていくしっかり者なんだけど、たまにいつものテキパキさがなくなって、どこか上の空になる時があるんだ。そうなるのって、決まって阿賀野が長期遠征に出ているときなんだよね。能代はよく「阿賀野姉は私がいないと…」って言うけど、本当は…

2014-01-06 23:03:34
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今日は阿賀野が妙に上機嫌で張り切って仕事をしてるなって思って「何か良いことあった?」って聞いてみたんだ。そしたら「能代に好きな人がいるんだって!能代が胸を張れるように、阿賀野もしっかりしないとって思ったの!」って。当の能代はそんな阿賀野を悲しそうな目で見てるんだけど、大丈夫かな…

2014-01-07 10:16:01
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

阿賀野がハキハキと行動し始めた(たまにドジ踏んでるけど…)一方で、能代の元気がどんどんなくなっていってるように感じるんだよね…。ぼーっとしてることが増えて、何だか寂しそうな…心配だな…

2014-01-07 21:49:27
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

「あれ、どうしたの? 能代」 食堂を訪れると能代がひとりで座っていた。 「阿賀野姉とここで待ち合わせしてるの。昼間ケーキ買ってきたから、一緒に食べようって。でも、そろそろ待ち合わせの時間なんだけど…今日も遅刻かぶっちかしら?」 能代が時計を眺めながら言う。

2014-01-07 23:07:59
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

「ふふ、しょうがないわね、阿賀野姉は。今度の埋め合わせは何かしら?」 何だろう、能代は今、呆れているというよりは、阿賀野が遅刻してくるのをむしろ期待してるように見える。 「しっかりする!なんて言ってもやっぱり阿賀野姉は阿賀野姉ね。私がいないと…」

2014-01-07 23:13:44
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「あ……」 能代の背後に誰かが近づいた。…まぁ、僕の方からはばっちり見えてるんだけど。 「だーれだ?」 阿賀野が能代を背後から目隠しした。能代は相当ビックリしたようで、体が跳ね上がっていた。 「あ…阿賀野姉…!?」

2014-01-07 23:17:18
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「せーかい!お待たせ、能代!」 時計を見ると、待ち合わせ時間ジャストだった。 「あ…阿賀野姉、ちゃんと来たんだ…」 「しっかりするって言ったでしょ?これからも能代に迷惑かけないよう、頑張るからね!」 阿賀野が満面の笑みで言う。…それに対して、能代の表情は何処か曇っていた

2014-01-07 23:23:06
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

「……能代? どうしたの? 元気ない?」 阿賀野が心配そうに能代の顔を覗き込んだ。 「…え!? え…やだ、そんなことないわよ。じゃ、じゃあ早速ケーキ、食べましょう」 能代が冷蔵庫へと向かう。阿賀野はそんな能代を不思議そうに眺めていた……

2014-01-07 23:27:55
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

最近能代が具合悪そうにしてるんだよね…ここのところずっと元気なかったけど、今度は体調にまで影響が来たみたい。阿賀野が提督に知らせて、しばらく休養にしてもらったみたいだけど…

2014-01-10 23:16:32

次の日…

誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

「能代、大丈夫?」 体調を崩した能代はドックの療養部屋で休養をとっていた。気になって様子を見に来ると、阿賀野が部屋にいた。 僕と同じく、お見舞いみたい。 「阿賀野姉こそ…ちゃんと、大丈夫…?」 能代の弱々しい声が聞こえてきた。

2014-01-11 18:01:13
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

「うん、阿賀野は大丈夫。朝もちゃんと起きれてるし、演習にも遅刻してないよ。だから能代は安心して体を治すことに専念してね!」 阿賀野が能代の手を握る。……能代はその手を払い、阿賀野と反対側を向いた。 「ごめん…阿賀野姉…少し、寝かせて…」 「……うん、早く元気になってね」

2014-01-11 18:06:09
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

阿賀野は椅子から立ち上がり、僕に軽く手を振ると部屋から出て行った。 「能代……?」 僕は壁側を向いてしまっている能代を覗きこんだ。表情はわからないけど、僅かに嗚咽が聞こえた。

2014-01-11 18:12:16
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