東京慈恵医科大学 糖尿病・代謝・内分泌内科准教授 西村理明Dr.による講演「持続血糖モニター(CGM)について」

2014年1月12日(日)開催・YOKOHAMA VOXにおける西村Dr.の講演「持続血糖モニター(CGM)について」のまとめ。 能勢なりの補足・解釈を入れた上で、「意訳・再構成」してあるので、「講演そのもの」ではありません。 あくまで個人的備忘録として書き留めたものであり、本件の文責は能勢謙介個人にあるので、この内容について西村Dr.には質問・照会はしないようよろしくお願い致します。
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能勢謙介 @nose_kensuke

糖尿病の血糖コントロール指標であるHbA1c。ただしこれは過去約2カ月の血糖コントロールの「平均値」に過ぎず、「変動」を表している訳ではないので、HbA1cが同じでも血糖コントロールの「質」は異なるのではとの指摘がある。 YOKOHAMA VOX 01 #type1 #iddm

2014-01-13 17:01:44
能勢謙介 @nose_kensuke

合併症抑制には、この変動を極力小さくする必要がある。このとき血糖変動を正確に把握するには、HbA1c以外の適切な指標も併用するべきではないだろうか。その指標とは…実は1型糖尿病の多くの方にはおなじみの「血糖測定」である。 YOKOHAMA VOX 02 #type1 #iddm

2014-01-13 17:02:24
能勢謙介 @nose_kensuke

血糖測定の歴史は1964年から。最初は血糖に反応して変色する試験紙を用いたもので、色調表と照らし合わせてその血糖を読み取るものであった。その後Ames社から分光輝度計を備えたリフレクタンスメーターが1971年に発売された。YOKOHAMA VOX 03 #type1 #iddm

2014-01-13 17:03:33
能勢謙介 @nose_kensuke

その後1974年には、リフレクタンスメーターをさらに小型化したDexter(デキスター)が発売された。当時の価格を時価換算すれば、今ならさしづめ「プリウスが買える値段」である。 YOKOHAMA VOX 04 #type1 #iddm

2014-01-13 17:03:48
能勢謙介 @nose_kensuke

第一世代・水洗方式、第二世代・拭き取り方式の世代を経て(この字面だけ見ればトイレと何か関係あるのかと見紛うが(笑))、今では5秒で測定が完了する第三世代のワンタッチ方式になったことは皆さんもご存じの通り。 YOKOHAMA VOX 05 #type1 #iddm

2014-01-13 17:04:02
能勢謙介 @nose_kensuke

これからの登場が期待される第四世代は、無侵襲あるいは低侵襲の血糖測定器。ただし、測定部位や季節、さらに人種などの違いを超えて精度を確保するのが難しく、製品化するまでには相当の困難が予想される。 YOKOHAMA VOX 06 #type1 #iddm

2014-01-13 17:04:16
能勢謙介 @nose_kensuke

さて、この血糖を連続的に測定することで、血糖変化の動態を把握する方法がある。血糖測定装置・CGMSがそれで、アメリカに10年遅れること10年、2009年10月に認可されたのがMedtronic社のCGMS-Goldである。 YOKOHAMA VOX 07 #type1 #iddm

2014-01-13 17:05:01
能勢謙介 @nose_kensuke

CGMS-Goldは、血液中ではなく、細胞内の間質液中のブドウ糖濃度を測定している。センサーを皮下に穿刺・留置して、5分ごとに糖濃度を測定・記録し、1日最大288回測定可能。ただしリアルタイムの測定結果は表示されない。 YOKOHAMA VOX 08 #type1 #iddm

2014-01-13 17:05:59
能勢謙介 @nose_kensuke

西村Dr.の所属医大でこのCGMを導入した際、CGMの結果(血糖の終日動態)が、SMBG(ピンポイントの測定値)に基づく推定とかけ離れていたため、糖尿病科トップの教授は、研修医や若手医師に不備を謝りまくっていたという…。 YOKOHAMA VOX 09 #type1 #iddm

2014-01-13 17:07:04
能勢謙介 @nose_kensuke

現在、このCGMはiPro2という穿刺部貼り付け方式のコードレス測定器に変わったため、有線のコードで絡まることもなく、非常に簡便に持続血糖値(間質液中ブドウ糖濃度)を測定・記録することが可能となった。 YOKOHAMA VOX 10 #type1 #iddm

2014-01-13 17:07:22
能勢謙介 @nose_kensuke

さて、このCGMを用いて健常者(耐糖能正常者)の血糖変動(24名)の平均値を見てみると、ほぼ90から120の間に収まっている。平均値は100mg/dlであり、標準偏差(SD)15となっている。これは覚えておいてほしい。 YOKOHAMA VOX 11 #type1 #iddm

2014-01-13 17:08:17
能勢謙介 @nose_kensuke

一方、内服無し(=インスリンのみ)糖尿病患者の血糖変動を見てみると、HbA1c未満7で116(SD29)、7以上8未満で134(SD36)、8以上9未満で166(SD32)、9以上で234(SD50)と、変動幅が大きい。 YOKOHAMA VOX 12 #type1 #iddm

2014-01-13 17:11:29
能勢謙介 @nose_kensuke

ここで、多くの1型糖尿病患者の1日の血糖変動を見てみると、夜中から明け方にかけて低血糖状態となり、そのあとの反動であるソモジー効果(低血糖から回復するための肝糖新生)が起こり、朝食の前後に高血糖になっている例が非常に多い。 YOKOHAMA VOX 13 #type1 #iddm

2014-01-13 17:12:01
能勢謙介 @nose_kensuke

これは、夜中に「基礎インスリン切れ」を起こしているためであり、また夕食前にも小さな「基礎切れ」の時間帯がある。このパターンを繋げると「鼻を前に高く掲げた象を横から見た形」に見えないだろうか。 YOKOHAMA VOX 14 #type1 #iddm

2014-01-13 17:12:14
能勢謙介 @nose_kensuke

本当は常にCGMを使うのが理想だが、全員に毎日は難しいので、「0123」をキーワードに挙げておきたい。これは血糖のピークがどこにあるのかを知るため、食後0時間、1、2、3時間…と、時間帯をズラしてSMBGを行う方法である。 YOKOHAMA VOX 15 #type1 #iddm

2014-01-13 17:13:09
能勢謙介 @nose_kensuke

また、日中の血糖変動の中で押さえておきたいポイントを挙げるとすれば、夜中3時、朝食後10時、夕食前18時である。そして、朝食前から朝食後の血糖上昇の幅が、最大でも150を超えないように注意していただきたい。 YOKOHAMA VOX 16 #type1 #iddm

2014-01-13 17:13:22
能勢謙介 @nose_kensuke

そうすれば、象の背が低くなり、鼻が真っ直ぐに伸びた状態、すなわち「伏せ」をしたようになるので、皆さんもこの象をいかにして「伏せ」をさせるか、自分でよく考えながら血糖コントロールに取り組んでほしい。 YOKOHAMA VOX 17 #type1 #iddm

2014-01-13 17:13:38
能勢謙介 @nose_kensuke

理屈としては、基礎インスリンが切れないようにすること。基礎がしっかり入ると、ソモジー効果が起きないので、夜間の血糖がフラットになる。レベミルやランタスを使っている場合、1日1回では24時間持続しないことに注意したい。 YOKOHAMA VOX 18 #type1 #iddm

2014-01-13 17:14:32
能勢謙介 @nose_kensuke

レベミルやランタスを昼夜2回に分けて打っているにもかかわらず、血糖のプロファイルが「鼻を掲げた象」になっている場合、昼の単位数を増やし、夜の単位数を減らすと、象が「伏せ」をしてくれる可能性がある。 YOKOHAMA VOX 19 #type1 #iddm

2014-01-13 17:14:45
能勢謙介 @nose_kensuke

また、注射で基礎切れを防ぐ上で今後非常に有効と思われるのが、2013年3月に製造認可が下り、9月に薬価承認された、超持効型インスリン「トレシーバ」である(新薬のため認可後1年間は2週間処方のみ。14年3月に解除予定)。 YOKOHAMA VOX 20 #type1 #iddm

2014-01-13 17:14:59
能勢謙介 @nose_kensuke

トレシーバは、日本人対象の試験結果では約26時間、海外での試験結果では約42時間の持続時間があるとされ、ほぼ全くピークのない状態を維持できる。したがって毎日1回注射をしていれば、事実上基礎切れを防ぐことができる YOKOHAMA VOX 21 #type1 #iddm

2014-01-13 17:15:14
能勢謙介 @nose_kensuke

一方、トレシーバでも血糖のプロファイルが安定しない場合は、インスリンポンプ(CSII)を使うことをお奨めしたい。インスリンポンプなら、自分用プログラムを作成すれば時間帯毎に基礎注入量が調整できるからである。 YOKOHAMA VOX 22 #type1 #iddm

2014-01-13 17:15:25
能勢謙介 @nose_kensuke

そして現在欧米では、CGMとCSIIを連動させた閉鎖循環系(クローズドループ)のデバイスが実用化されており、今後日本にも入ってくる可能性が高い。 YOKOHAMA VOX 23 #type1 #iddm

2014-01-13 17:15:39
能勢謙介 @nose_kensuke

これと同様に、低血糖を検知すると自動的に2時間基礎注入が停止する「MiniMed 530G with Enlite」なども上市されており、こちらも日本への早期導入を期待したい。http://t.co/sXzQkRloYW YOKOHAMA VOX 24 #type1 #iddm

2014-01-13 17:17:45
能勢謙介 @nose_kensuke

なお本件について、抜け・漏れ、間違いなどを見付けられた方は、FacebookまたはTwitterで能勢までご連絡いただきますようm(_ _)m YOKOHAMA VOX #type1 #iddm

2014-01-13 17:18:05