2010年10月22日

明治時代の地政学、戦略論的発言

(1) 海軍水路部長であった海軍少将肝付兼行は、読売新聞1900年の正月の連載インタビュー記事で、米国海軍アルフレッド・セイヤー・マハンが地中海とカリブ海の地勢を対比しつつ、大陸沿岸の地中海の制海権を論じたのを踏まえて、台湾海峡以北・津軽海峡にいたる海域の地政学的理解を語る。 (2) 慶應義塾の創立者で時事新報の経営者であった福沢諭吉の1879刊『民情一新』第3章における発言は、中央アジアを巡る英露対立というグレートゲームの進行を目前にしつつ、シーパワーとランドパワーという語は用いてこそいないが、世界交通線の変容が両者の力関係を変化させるとの把握を示す。 (3) 海軍編修書記から日本郵船幹部社員に転じた寺島成信と、マハンを援用した「海権論」について。 他、2点。
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園田義明 Y-SONODA @YS_KARASU

明治以来の歴史を顧みれば、日本は自由を伝統とする海洋国家と協調した時代に国運興隆し、全体主義に支配された大陸国家と同調することによって国歩を誤り、敗戦の破局を招来したのである。つまり、日本国民は自由主義の伝統をとれば栄え、全体主義に走れば亡びるのである。 吉田茂

2010-10-20 23:46:58
園田義明 Y-SONODA @YS_KARASU

日本は自由国家群と運命を共にすべきである。わが国としては、むしろ堂々と親米一途に徹すべく、これを追随などと自ら卑屈に解すべきではない。これに反し、あたかも浮草のように風のまにまに、東するか西するかが判然とせぬようなことがあれば、徒らに信を国際的に失うだけであろう。 吉田茂

2010-10-21 18:33:40
SHIBASAKI Rikiei|柴崎力栄 @rshibasaki

肝付兼行海軍少将曰く、「余は最後に明言す。二十世紀に於て我帝国は如何なる事情あるもアングロサクソン人種を敵とすべきに非ず。何となれば其長所を同じくするものを敵とするは国の利益にあらざればなり」(「二十世紀の軍事(肝付兼行氏談)」、読売新聞1900年1月4日)、と。

2010-10-21 21:20:55
SHIBASAKI Rikiei|柴崎力栄 @rshibasaki

「二十世紀に於ける列国競争の舞台は支那に在りとせば、東洋に於ける地中海は果して何ぞ。東海、黄海、日本海こそ正しく東洋の地中海にして此海区に主人たる者は以て其制海権を有するを得べきなり。地中海にジブラルタル、マルタ、蘇士の三大要関あるが如く此海区にも亦自ら三大要関あり。...

2010-10-21 21:23:09
SHIBASAKI Rikiei|柴崎力栄 @rshibasaki

地中海にジブラルタル、マルタ、蘇士の三大要関あるが如く此海区にも亦自ら三大要関あり。津軽海峡はジブラルタルに比すべく、対馬島はマルタに対すべく、台湾海峡は実に東洋の蘇士運河にあらずや。」(談話「二十世紀の軍事(肝付兼行氏談)」、読売新聞1900年1月2日号)

2010-10-21 21:23:51
SHIBASAKI Rikiei|柴崎力栄 @rshibasaki

「蒸気船を作るは鉄道を敷くよりも容易なるが為に、初には船の用法のみ盛なりしかども、近年に至ては、鉄道を作ること日一日に増加して其止む所を知る可らず。若しも今後欧羅巴より小亜細亜の地方に縦横して印度及び西伯里の地に亙り、延びて支那の東岸に至るまで数条の鉄道を通じたらば、

2010-10-21 21:26:21
SHIBASAKI Rikiei|柴崎力栄 @rshibasaki

支那の東岸に至るまで数条の鉄道を通じたらば、世界中の商売に何等の変を生ずべきや。英国の如きは、従前航海の利を失ふのみならず、其本国周囲の海に妨げられて、却て大陸の国々と商権を争ふこと能はざるの勢に至るも図る可らず。」(福沢諭吉著『民情一新』、第3章、56~57頁、1879年刊)

2010-10-21 21:26:55
@akatuki_a

海洋戦略(maritime strategy)は、海洋を本質的要素とする戦争を支配する原則を意味している。海洋戦略が陸軍部隊の行動に関連して艦隊の果たす役割を決定したとき、海軍戦略(Naval Strategy)は艦隊の行動を決定する一部にすぎない。

2010-11-06 22:43:00
SHIBASAKI Rikiei|柴崎力栄 @rshibasaki

@zyesuta 海洋戦略(maritime strategy)&海軍戦略(Naval Strategy)。 それは戦時における定義ですね。平時における海洋戦略と海軍戦略についてのイデオロギーというのが、100年余前にはあったと思います。

2010-11-07 01:54:23
@akatuki_a

@rshibasaki はい、コーベットの定義です。平時における、の論争は不勉強でぞんじませんでした。何かいい資料をご存知でしたらぜひ教えてください。

2010-11-07 14:14:15
SHIBASAKI Rikiei|柴崎力栄 @rshibasaki

@zyesuta 以下、日本海軍の「海権論」イデオロギー。国会図書館近代デジタルライブラリで閲覧可能。『兵商論』(1891年)>民友社『日本国防論』への反論。『帝国海事総覧』(1900年)p.45~>マハンとコロムを援用。『帝国海運政策論』(1923年)。いずれも著者は寺島成信。

2010-11-07 14:39:58
SHIBASAKI Rikiei|柴崎力栄 @rshibasaki

@zyesuta 1880年代の日本で、陸軍の非主流派(三浦梧楼、曾我祐準)の郷土防衛軍的陸軍+沿岸小海軍という議論を打破し、1890年から開設された帝国議会議員に、海軍予算に賛同してもらうために理論構築した際のもの。徳富蘇峰『日本国防論』のネタ元は、曾我祐準。

2010-11-07 14:48:13
SHIBASAKI Rikiei|柴崎力栄 @rshibasaki

@zyesuta 研究ノート「仮装巡洋艦を提唱した寺島成信」を勤務先の紀要に載せた。1週間位のうちにウェッブに載る予定。大阪工大紀要 人文社会編55-1。→ http://www.oit.ac.jp/japanese/toshokan/tosho/kiyou/index.html

2010-11-07 14:52:29
SHIBASAKI Rikiei|柴崎力栄 @rshibasaki

(寺島成信『兵商論』第1章「緒言」) 人は言ふ兵は凶事なり軍備は不生産的なりと。是れ海陸軍任務の差別を識らさる者の言なり。苟も文明海軍任務の在る所を知了せば容易に斯る節の誣妄なるを弁ずべし。夫れ海軍の任務は戦時に於て攻撃又防守上の主働者たるに止らず、尚ほ平時に於て商業漁獵を保護し

2010-11-07 15:02:42
SHIBASAKI Rikiei|柴崎力栄 @rshibasaki

商民移住民を衛護する等、全く国益の増進を資くるに在れば、寧ろ平和の保証者にして間接には国家の生産を助長する者なり。則ち知る各国の海軍を設備する所以は啻に非常の時に準備する消極作用に限らず、亦進て平時の利益を図る積極作用に由るものなるを。合衆国現海軍卿は曰く、平和の最良なる保証は

2010-11-07 15:07:30
SHIBASAKI Rikiei|柴崎力栄 @rshibasaki

国家の必要に応ずべき正常なる海軍費を支出するに在りと。(『兵商論』第1章「緒言」より) 。福沢諭吉『兵論』(1882年)→慶應卒業生の寺島成信『兵商論』(1891年) v.s.徳富蘇峰『将来之日本』(1886年)+同『日本国防論』(1889年)、という軍備政策論の系譜の対立。

2010-11-07 15:12:03
SHIBASAKI Rikiei|柴崎力栄 @rshibasaki

海軍は商船を視ること猶ほ愛妹を視るが如く、憐愛扶翼を旨とせざるべからず。又商船は海軍に対すること恰も仁兄に対する如く、飽迄尊敬信頼せざるべからず。而して海軍が商船の後援なくんば真に其の成功を望むべからざると均く、商船も亦軍艦の保護なくば其の安全を保すべからざるは、最も見易き道理に

2010-11-07 15:25:34
SHIBASAKI Rikiei|柴崎力栄 @rshibasaki

して、列国政府が動もすれば海上貿易と海軍費との比例、又は商船と軍艦(殊に巡洋艦)との割合を計算して、海軍拡張の資料に供するも、其の旨意畢竟此に帰せずんばあらず。故に或る論者が「海軍の必要は商船の存在と共に生じ其の消滅と共に失ふ」と謂へるも、亦一種の見解として首肯すべきものなり。

2010-11-07 15:29:21
SHIBASAKI Rikiei|柴崎力栄 @rshibasaki

直前の引用は、寺島成信『帝国海事総覧』(1900年)p.45~45。その文中の引用「海軍の必要は商船の存在と共に生じ其の消滅と共に失ふ」は、明らかに、マハン『海上権力史論』が出典。

2010-11-07 15:32:45
SHIBASAKI Rikiei|柴崎力栄 @rshibasaki

日本海軍が、マハンを援用して「海権論」というイデオロギーを作り、平時における民間の海上活動や海外への移民、商業活動を支援する国家組織として海軍を定義。平間洋一「「陸奥海王国」の建設と海軍」政治経済史学370、1997年、がこの点を指摘した唯一の先行研究。

2010-11-07 15:37:53
日比野庵BOT @kotobukibune

日比野庵 本館: 日本が産油国になる日 http://bit.ly/eDknGe

2010-12-17 01:51:04
SHIBASAKI Rikiei|柴崎力栄 @rshibasaki

バックトゥザ「坂の上の雲」の時代ですね。石炭燃料の時代には日本はエネルギーを自給できる国だった。そこへ戻る @kotobukibune 日比野庵 本館: 日本が産油国になる日 http://bit.ly/eDknGe

2010-12-17 01:59:07
SHIBASAKI Rikiei|柴崎力栄 @rshibasaki

「坂の上の雲」の時代=石炭燃料の時代には日本はエネルギーを自給できる国だった。その戦略環境。→「夫れ東洋諸国局面の上海、香港に於る石炭の多量は日本の輸出に係り、今之を外国炭と比較するに九倍乃至七倍なり。故に其輸出を絶たば此受容炭量は殆ど供給の途なかるべく、況んや我近海に来てをや。

2010-12-17 11:19:05
SHIBASAKI Rikiei|柴崎力栄 @rshibasaki

此の如き事情なるが故に我を攻撃する敵国は平時如何なる盛大なる海軍の勢力を有するも到底戦時緊急の場合に及んで強大なる戦闘艦を派遣して其勢力を逞くするを得ず。」(海軍参謀部長・有地品之允海軍中将、1891年4月「海防意見書」)

2010-12-17 11:19:10
園田義明 Y-SONODA @YS_KARASU

この件でロシアがムカついてる可能性ありますね。ロシアは奪回狙いで混乱に乗じて必ず動く。 RT @strategycolum 北朝鮮、羅津港開発権を中国に移譲。東亜日報 http://bit.ly/hX0bAR

2010-12-18 14:53:12
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コメント

SHIBASAKI Rikiei|柴崎力栄 @rshibasaki 2010年10月24日
YS_KARASUさんの吉田茂の発言を加えてみました。日本における海洋国家論の伝統。
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SHIBASAKI Rikiei|柴崎力栄 @rshibasaki 2010年11月7日
まとめ「2人の明治人、福沢諭吉と肝付兼行の地政学的発言」のタイトルを「明治時代の地政学、戦略論的発言」へ変更し、日本海軍がマハンを援用した「海権論」に関する発言を加えました。
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SHIBASAKI Rikiei|柴崎力栄 @rshibasaki 2010年12月24日
まとめ「明治時代の地政学、戦略論的発言」に、2点新しい発言を加えました。1891年4月の有地品之允海軍参謀部長「海防意見書」、1895年3月の井上毅の朝鮮・台湾の比較論です。
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