#twnovel　「不思議な魔女」その2

しーな@GO2完走 @xsheeenax

この薬を毎夜欠かさず飲めば、生きながらえるよ。受け取ったちいさなケースには、常に白い錠剤がひとつ。本当は落とす筈だった命の緒を、細いながらも繋ぐもの。これは一体何なのかと尋ねると、不思議な魔女は闇夜を背負ってにんまり笑みを浮かべる。ああ、それは。「自分自身さね」 #twnovel

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10分後かもしれませんし、ひと月後かもしれませんが。記述はそこで途絶えていた。重い革張りの本を下ろすと、その向こうに不思議な魔女が笑みを浮かべている。願いごとが叶う呪文はたった今不思議な魔女から買ったばかりだ。なのに、効果がこんなにも曖昧だなんて。 #書き出し #twnovel

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不思議な魔女は、気まぐれに魔法をかけた。「さみしい」という感情を集めて甘さ控えめなキャンディを作ろうと考えたのだ。しかし、困った。思ったより少ししおからい。思ったより沢山出来た。「この街にはさみしい人が沢山いるんだねぇ……」用意した瓶から溢れた飴玉を摘み上げた。 #twnovel

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日が落ちる前からそわそわしている。身につけるものを決めかねて、あれでもないこれでもないとクローゼットを引っ掻き回す。土産はとっておきの一升瓶。箒の充電もばっちりで、現地まではひとっ飛び。斯様に不思議な魔女も心が躍る。今夜は年に一度のお祭り騒ぎ、ワルプルギスの夜。 #twnovel

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空から恋石が落ちてきた。 #twnvday 不思議な魔女は空一面に仕掛けた網をせっせと回収する。細かい網目にひっかかった恋石の欠片はきらきらと星屑のように煌めいて。このままじゃあ効き目が強すぎるからね。不思議な魔女は呟く。恋に身を焦がすのは、この石だけで充分だ。 #twnovel

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「明日の金環を指輪に」というカップルたちに不思議な魔女は微笑ましいねぇと目を細める。きっといくつもの環が彼ら彼女らの指に輝くのだろう。本物は空に浮かぶたった一つだけでも。雲を抜けて箒から身を起こし、晴れたらいいねと口ずさむ。こればかりは不思議な魔女にも判らない。 #twnovel

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不思議な魔女はこんな日も紅い唇にうっそりとした笑みを浮かべている。カードも水晶も、救いようのない未来を示しているというのに。それでも。それを告げるのが仕事だからねぇ……と聞きようによっては楽しそうな声音で独りごちる。繊手が、どうしようもない未来を愛しげに撫でる。 #twnovel

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うん？ 今呑んでるのは何だって？ ……まぁ所謂「命の水」ってやつだよ。お前さんだって仕事の後の一杯で「生き返った」りするだろう？ 何、一口寄越せ？ やめた方がいいよ。 #twnovel #twnvday そう言って不思議な魔女は手にしたグラスを高く掲げた。中身がとろりと光を放つ。

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不思議な魔女は空を飛ぶ。頬を撫でる寒風がかえって心地良い。雲を切って星の海へ躍り出る。箒に座り直し、着込んだマントの襟元を寄せて、白い白い息を吐く。眩い月光もいいけれど、新月の夜になんて贅沢な酔い覚まし。「だめだねぇ、こんなに気分がいいと呑み直したくなっちまう」 #twnovel

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不思議な魔女は夜に溶ける。ゆるゆると微睡み、ゆらゆらと浮かぶ。十六夜を浮かべた杯を飲み干し、ほんのりと紅くなった頬を夜風で冷ましながら、「箒も、飲酒運転になるのかねぇ……」とひとりごちる。白い指先がそっと滑る。星が金平糖のように落ちる。ゆっくりと日付けが変わる。 #twnovel

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不思議な魔女の前に見知らぬ少女が立ちはだかる。まだ新しい箒に汚れのないマントから察するに、娑婆に出て来たばかりの新米なのだろう。「あたしはあなたみたいな魔女を認めないわ！」何処で何を吹き込まれたのやら。溜息一つ。「呪いは言霊になって返ってくるよ」我ながら親切だ。 #twnovel

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不思議な魔女の部屋に出入りする、不思議な猫を見たことあるかい？ 黒いペルシャ猫だよ。野良猫のように自由気ままで、不思議な魔女も数日見かけないことがあるらしい。魔女の使い魔じゃないかって？ そうかも知れないね。え、私はただの通りすがりだよ？ #twCATnovel #twnovel

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凍てつく夜に不思議な魔女が円を描く。水面に浮かぶ魔法陣の向こう側は、寸分違わぬ鏡の世界。ぬらりと伸びる白い腕を掴み、不思議な魔女は口許を緩める。 #twnovel #twnvday 今の世界から逃げたいそこのアンタ、入れ替わるなら、今のうちだよ。但し、二度とは戻れないけれど、ね。