シマウマ(f_zebra)さんと考える『全原子炉の長期運転停止と脱原発の未来』
米国で、福島第一原子力発電所の事故を受けて地震や洪水などの外部事象への対策、全電源喪失後の冷却維持能力の記録を義務付けた命令と情報請求について、全ての発電用原子炉で2016年末の期限までに実施が見込まれていると発表された。
2014-01-17 19:07:47これらの対策には多額の費用を要するものもあるが、工事のため必要な期間以上に発電を止めることなく実施できるため、消費者への影響はほとんどない。原子炉の段階的廃止を決めているドイツやスイスも、すぐに全廃することはせず影響を緩和している。
2014-01-17 19:09:24一方日本では、2011年3月の震災で被災しなかった原子炉は運転を続けたが、定期検査のために停止すると、その後再起動ができないという状態が続いた。検査を終え、安全対策工事も実施して安全性が向上した原子炉は起動できず、検査前の原子炉は運転を続けていたのだ。
2014-01-17 19:11:07この歪な状態は、法的根拠を欠いていただけでなく、安全上の合理性からも全く意味がない。ところが当時はとにかく原子炉を止めるのが正義という風潮で、手段の正当性や合理性、理屈といったものは脇に追いやられたのだ。
2014-01-17 19:12:41やがて原子炉等規制法が改正され、新規制基準ができたことで新たに審査に合格するまでは再起動を阻む法的根拠が後付けで追いついた。そうして、大飯3、4号の例外を除いて全ての原子炉がずっと「冷温停止状態」にある。
2014-01-17 19:14:06諸外国と比べるとずいぶん歪な対応を取ってきた我が国の原子力行政だが、その結果はどうなるのだろうか。まだ不確定要素はあるが、今年中には複数の原子炉が再稼働すると見られ、電気料金や製造業の生産計画など、色々なことがその前提で動いている。
2014-01-17 19:15:22機械というのは何でもそうだが、プラントのような大規模な設備も、継続して運転している方が良い状態を保てる。長期間止めているものを動かせば、必ずいくらかは「初期不良」が発生するものだ。2年間も止まっているプラントでは、再起動直後にはトラブルが避けられないだろう。
2014-01-17 19:16:36新基準に適合するための改修で、原子炉の安全性が改善した面はある。ところが、その改修工事は必ずしも長期間プラントを止めて行う必要があるわけではない。長期停止のために発生するであろうトラブルについては、安全性や経済性を損なうものだ。
2014-01-17 19:18:23もちろん、継続して運転している原子炉にもトラブルは起きる。大規模な自然災害等が発生した場合のリスクも、運転中の方が高くなる。ただし、統計的なトラブル発生頻度や自然災害の発生頻度を考慮すれば、リスクとしては継続運転の方がずっと小さくなるのだ。
2014-01-17 19:19:47結果的に、アメリカのように原子炉を運転しながら安全性向上を図った場合に比べると、停止している間の経済的な損失だけでなく、安全性という面でも意味なく損なってしまったことになる。長期停止に伴うリスクの上昇は、全くの無駄だ。
2014-01-17 19:21:40「不安」や「憤り」のような感情に流されて合理的な検討を軽視すれば、経済的に損をする(これも安全への脅威だが)だけでなく結局「安全」すらも失ってしまうのだ。そうは言っても、多くの人は結局感情で動いてしまう。どうすればいいのだろうか。
2014-01-17 19:22:50夕方の連続ツイートで書き忘れていたことを思い出した。日本が本気で脱原子力、あるいは少なくとも原子力への依存度を大きく下げる選択をするのであれば、まずはその代替手段を確保しておく必要がある。つまり、新たな電源の確保だ。
2014-01-17 23:07:56火力発電に過度に依存するのもリスクが大きいので自然エネルギーを大規模に導入するとすれば、変動の大きな電源を活用するためには電力系統、つまり送配電網の容量も増強する必要があり、そうした投資も必要になる。
2014-01-17 23:08:32ドイツの脱原子力政策が必ずしも順調に進んでいるわけではないが、少なくとも彼らはチェルノブイリ事故の後で脱原子力を決めたとき、全ての原子炉を停止するような愚は犯さなかった。既存の原子炉を運転しつつ、新電源や電力系統への投資を戦略的に進めたのだ。
2014-01-17 23:11:06その結果、太陽光や風力など自然エネルギーの比率は飛躍的に伸びた。ただ、電力系統の増強は不十分で、自然エネルギーの変動を吸収しきれず連携している他国の系統に負担を掛けているとして批判されている。島国の日本では、そもそも隣国に頼ることもできない。
2014-01-17 23:11:25不十分な制度設計による拙速な導入のため国内の太陽光パネルメーカーが中国勢に駆逐されてしまったり、電気料金の高騰で産業界の競争力に影響が出たりはしているが、それでも原子炉を運転しながらでなければここまで到達することは到底不可能だった。
2014-01-17 23:15:36さて日本だが、色々あって結果的に震災後1年ちょっとでそれまで電力供給の3割を担っていた原子力発電所が全て止まってしまった。電力各社は当座の供給力確保が精一杯で、戦略的な投資はおろか、最低限の設備維持に必要な定期点検すらおぼつかない状態だ。
2014-01-17 23:17:10ドイツやスイスを含む他国のように、原子炉を運転しながら安全性向上の対策を実施していたなら、資金にも供給力の予備率にも余裕があるので、新電源の開発や自然エネルギーの増強を見越した電力系統の容量増加の投資もできただろうし、料金を上げる必要もなかっただろう。
2014-01-17 23:18:43ところが実際には非効率な老朽火力発電所を無理やり再稼働して急場を凌がざるを得ず、定期検査の先送りで設備は痛み、人材の流出で系統運用のノウハウ維持さえ危うい。結局、長期停止後のトラブルを覚悟した上で原子炉を再稼働しなければ、料金の大幅値上げをせざるを得ない状態だ。
2014-01-17 23:19:52つまり、この2年間以上原子炉を止めてきた結果として、将来の脱原子力、あるいは原子力依存を下げた電力供給体制の実現は確実に遠のいてしまったのだ。冷静に考えれば誰でも分かる当然の結果であり、だからこそドイツもスイスも今でも原子炉を運転し続けているのだ。
2014-01-17 23:20:34国のエネルギー政策をどうするかという問題は、わが国のように他国との貿易に依存して生きていながら、生産活動にも国民生活にも欠くことのできないエネルギーのほぼ全てを輸入に頼っている国にとっては死活問題であり、本来熟慮を重ねた議論が必要なテーマだ。
2014-01-17 23:24:41ところが、需要期の度に稼ぎ頭の製造業に節電要請をしなければならないような綱渡りを続けていては、目先の需要を満たすのが精一杯で、将来を見据えた冷静な議論などとてもできない。この3年間に日本が失ったものは、とてつもなく大きい。将来を担う子供達には、申し訳ないことをした。
2014-01-17 23:24:56