宇宙酔2013秋

ゲスト:金木利憲(明治大学文学部助手) テーマ:「宇宙」という言葉の成り立ちと変遷について
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宇宙酔 @space_drunk

本日のゲスト:金木利憲さん。明治大学文革部助手。専門は日中比較文学。日本人がどう やって漢文を読んで、どう理解して日本語の中に取り入れ ていったのかを解明することが研究テーマ。

2013-09-21 18:37:03
宇宙酔 @space_drunk

金木:以前出した研究ノートでは「宇宙という単語は一時期消滅した、と書いたがその後研究が進んだ。『宇宙』という語は滅んでいなかった。今週気づいたw」

2013-09-21 18:38:10
宇宙酔 @space_drunk

(すみません、宇宙酔の今回の概要でも「一時期途絶えた」と書いてしまっておりました……:[すばる])

2013-09-21 18:38:55
宇宙酔 @space_drunk

(以下、特に断りのない限り金木さんの発言サマリです)現代における「宇宙」の意味。『日本国語大辞典』(国文学系がよく使う辞書)では  1あらゆる事物を包括する広大な空間。天と地の間。天地と天空(続く)

2013-09-21 18:42:28
宇宙酔 @space_drunk

2)哲学的には、秩序ある統一体と考えられる世界全体、物理学的に は、物質と輻射エネルギーが存在する限りの空間、天文学的には、 全ての天体を含む空間  / 現代よく用いられるのはこの 2)の最後の意味。

2013-09-21 18:42:57
宇宙酔 @space_drunk

です。ご指摘ありがとうございます QT @Noriori_fighter: 文学部ですよね?  RT @space_drunk: 本日のゲスト:金木利憲さん。明治大学文革部助手。

2013-09-21 18:44:58
宇宙酔 @space_drunk

「宇宙」の語源:誕生   「宇宙」という熟語が文献に現れるのは中国の春秋戦国時代。孔子の時代。B.C.4~3C成立の『荘子』に出るのが金木さんの調べた限りでは「宇宙」の初出。ここでの「宇宙」の意味を調べるために古い辞書を引いてみる。

2013-09-21 18:46:07
宇宙酔 @space_drunk

後漢・許愼 著『説文解字(せつもんかいじ)』(A.D.100)を引くと「宇」の原義は「屋根の縁。軒先」、 「宙」の原義は「循環して元に戻ってくる原点」(更に古くは「宙」の意味は「屋根の棟木」)。これらが拡張されて「宇宙」は「この世界(広さと時間)」という意味になる。

2013-09-21 18:49:10
宇宙酔 @space_drunk

g「原義が残ってないじゃないか!」  金木「宙、が時間なのは原義残っています。古代中国では時間は『循環するもの』です。(そうでなければそれは皇帝が良くないということになる) "由" という字は「軸を中心に回るもの」ですからね」

2013-09-21 18:51:10
宇宙酔 @space_drunk

いつ「宇宙」が日本に入ったか:  『古事記』・『日本書紀』では和邇(わに)吉師(王仁)による漢字伝来の際、『論語』・『千字文』を携え てきたとなっている。この『千字文』に「宇宙」が入っている。ただし歴史的には千字文が入ったのは和邇吉師の渡来より後と思われる。

2013-09-21 18:52:55
宇宙酔 @space_drunk

「国家珍宝帳」(751年。正倉院宝物目録のようなもの)には明記されているので、奈良時代には入っていたと考えて良い。『千字文』は日本のいろは歌のようなもので、重複しない文字1,000字で作られた漢詩。漢詩はちゃんと韻を踏まなきゃいけないのにアホか!(褒め言葉)

2013-09-21 18:55:15
宇宙酔 @space_drunk

(guicheng と金木さんが「俺、正倉院展でこんないいモン見てきたぜ」自慢大会中。guichengさんは瑠璃杯、金木さんは蘭奢待をご覧になったそうで)

2013-09-21 18:56:47
宇宙酔 @space_drunk

日本での「宇宙」最古の用例は?: 『日本書紀』神代上。「……汝甚だ無道(あづきな)し、以(も)ちて宇宙(あめのした)に君臨(きみ)たるべからず。 固當(もとより)遠く根の國へ適(まか)れ」

2013-09-21 18:58:42
宇宙酔 @space_drunk

ただし、「宇宙」を「あめのした」とよむようになったは江戸時代の研究の結果。奈良時代にどう読んでいたかは厳密には不明。妥当ではあると思われる。

2013-09-21 19:00:08
宇宙酔 @space_drunk

日本(平安時代):  「宇宙」は漢文で使われる語彙なので、有名な平安文学(源氏、古今集、竹取、伊勢など。これらは「かな」で書かれている)に「宇宙」は出ない。その代わりに平安文学で出て来るのは「せかい」の語。

2013-09-21 19:02:45
宇宙酔 @space_drunk

会場「この当時の『せかい』の意味は?」  金木「だいたい現代と一緒。世界と世間を合わせたくらい」

2013-09-21 19:03:35
宇宙酔 @space_drunk

日本(中世):  「宇宙」より「世界」のほうが用例が多い。小学館『新日本古典文学全集』に基づき用例を調査すると「宇宙」は『太平記』中の1例(天皇への上奏文という最高の格式を求める文章の中に出てくる)、『世界』は『平家物語』など72例。 (ここで江戸時代の『太平記』写本現物登場)

2013-09-21 19:06:26
宇宙酔 @space_drunk

日本(江戸時代)  「世界」「宇宙」ともに用例あり。(以前は「宇宙」は絶えたと思っていたのだが……)滑稽本『りくつ上戸』や人形浄瑠璃『碁太平記白石噺』に搭乗。両作とも大衆向け作品なので「宇宙」は一般に知られた語と思われる。

2013-09-21 19:13:36
宇宙酔 @space_drunk

日本では「世界」と「宇宙」の意味が同じだった。「世界」は仏教用語。平安時代の貴族は仏教を篤く信仰。一方で「宇宙」は漢学方面。漢学は(基礎教養ではあるが)菅原家などの「代々漢学をやる家」の者しか熟知しない。よって馴染みのある「世界」がより使われるようになったと思われる。

2013-09-21 19:17:26
宇宙酔 @space_drunk

ここまでのまとめ:  江戸時代までは「宇宙」と「世界」は同じ意味。

2013-09-21 19:19:59
宇宙酔 @space_drunk

日本(明治時代):  文明開化で西洋の言葉を翻訳する必要が発生。「space」「universe」「cosmos」の3語に注目し、当時の新聞や雑誌などの印刷物から金木さんは用例調査。  (閑話休題。ただいま明治初期の単語帳 [現物] のご開陳)

2013-09-21 19:24:57
宇宙酔 @space_drunk

universe は「宇宙」と訳されているが「この世界」のニュアンスを強く残す。 spaceは「空間・隙間」の意が強く、やや時代が下って「celestial space」の例が出る。 江戸後期〜明治の英和辞典で space, universe の訳し分けが出てくる。

2013-09-21 19:30:39
宇宙酔 @space_drunk

なぜ訳し分け(意味の住み分け)が起きたか: 西洋の異なる概念を日本語にする時に発生している。「世界」「宇宙」は日本では同じ意味だったが、「世界」はそのままの意味として残り「宇宙」は別の単語の訳語として扱いが変わった。

2013-09-21 19:39:05
宇宙酔 @space_drunk

明治8年の教科書に(現在と同じ意味での)「宇宙」が登場。学校教育によって「(universe としての)宇宙」が一般化していった。明治32年の新聞にしし座流星群の説明の中に「宇宙」が使われる。記事中に使われるということは、その単語の使い方が一般的だと考えて良い。

2013-09-21 19:43:24
ぜろすぺ~す @0space0

@space_drunk 現代の中国語と日本語において≪宇宙≫の意味に違いがあるとするとどこでしょうか?

2013-09-21 19:58:39