岩波『科学』HP《「東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康管理のあり方に関する専門家会議」への資料・情報提供》

岩波出版社の雑誌『科学』がHPで 「東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康管理のあり方に関する専門家会議」委員・事務局に対して、 「資料・情報提供」を公開しました。 それに関する宗教学者 島薗進氏のツイートをまとめ、合わせて当該の「資料・情報提供」の文章を掲載しました。
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島薗進 @Shimazono

1岩波『科学』HP《「東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康管理のあり方に関する専門家会議」への資料・情報提供》http://t.co/BrvBEc9V9K の要点。1)2011年3月末に行われた甲状腺初期ヨウ素被曝調査におけるBG測定の妥当性への疑問。

2014-01-22 23:23:45
島薗進 @Shimazono

2岩波『科学』HP《「東電福島原発…健康康管理…専門家会議」への資料・情報提供》http://t.co/BrvBEc9V9K の要点。2)それを裏付ける今中哲二氏の発言と原子力安全委員会の2011年3月23日の文書とその25日の改訂内容。

2014-01-22 23:24:21
島薗進 @Shimazono

3岩波『科学』HP《「東電福島原発…健康康管理…専門家会議」への資料・情報提供》http://t.co/BrvBEc9V9K の要点。3)測定の仕方とその妥当性についての長瀧重信座長、中村尚司委員の発言の無責任さ。事態をよく調べずに適切に調べたことにしようとしている。

2014-01-22 23:24:52
島薗進 @Shimazono

4岩波『科学』HP《「東電福島原発…健康康管理…専門家会議」への資料・情報提供》http://t.co/BrvBEc9V9K の要点。4)中村直司氏は2011年7月の文科省文書でも原発事故による降下放射性物質の量についてとんでもない過小評価発言を行っている。

2014-01-22 23:25:26
島薗進 @Shimazono

5岩波『科学』HP《「東電福島原発…健康康管理…専門家会議」への資料・情報提供》http://t.co/BrvBEc9V9K 参考・以下の私のブログ記事「甲状腺の初期被曝線量をどのように…災害時の科学者・研究者の責任・続(1)(2)」http://t.co/RUhZPTC5Gs

2014-01-22 23:31:21

島薗進氏 ブログ
http://shimazono.spinavi.net/

甲状腺の初期被曝線量をどのように(なぜ)調べ(なかっ)たか?――災害時の科学者・研究者の責任・続(1)――
http://shimazono.spinavi.net/?p=424#more-424

甲状腺の初期被曝線量がよく分からなくなってしまった経緯――災害時の科学者・研究者の責任・続(2)――
http://shimazono.spinavi.net/?p=431

小児甲状腺被ばく調査に関する経緯について
平成 24 年 9 月 13 日
原子力安全委員会事務局
https://www.nsr.go.jp/archive/nsc/info/20120913_2.pdf

「東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康管理のあり方に関する専門家会議」への資料・情報提供
 このページでは、岩波書店・雑誌『科学』より「東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康管理のあり方に関する専門家会議」委員・事務局各位への資料送付と情報提供についてお知らせします。

 以下の書面を2014年1月22日に発送しました。

送付状
 「東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康管理のあり方に関する専門家会議」でのご議論に敬意を表します。
 先般の第2回会議において、1080人の初期被ばく調査の信頼性について事務局から資料の説明ならびにご議論がございました。
 とくに飯舘村での調査の信頼性について、情報提供させていただきます。ご議論の参考にしていただければ幸いです。
 同封の資料Aは、岩波書店発行の雑誌『科学』2013年12月号(別途献本いたします)のなかの1ページです。ここで今中哲二氏は、2011年3月末の飯舘村実地調査時の空間線量率(屋外と役場内)について述べています。
 この証言は、飯舘村での初期被ばく調査の有効性について根本的な疑問を投げかけるものです。
 「スクリーニング検査が行われた場所の周辺線量等量率は、飯舘村の測定において0.1μSv h-1と報告されている」(第2回資料1-2、資料1の通しページで20ページ)の根拠と実際の計測データを詳細に検討する必要があります。
 なお、長瀧座長が「この次までに具体的に、バックグラウンドをどう測ったのかということを、事務局として調べてご報告する」と引き取られましたので、調査に期待・注目しております。

 当時のバックグラウンド測定については、原子力安全委員会(当時)が2012年9月13日付で公表した「小児甲状腺被ばく調査に関する経緯について」(https://www.nsr.go.jp/archive/nsc/info/20120913_2.pdf)のなかに、当時(2011年3月30日付)の考え方を記載した内部文書が含まれております(同封の資料B)。
 ここには、
「現地のBG測定状況を確認したところ、測定場所の空間BG測定値ではなく、被験者の着衣表面のBG測定値であることが判明した。従って、従来の平均BG値を用いるのではなく、個別のBG値を用いて正味値を算定し直した」(下線引用者)
と書かれています。
 この文書は、
 ・バックグラウンドの測定は、空間BG(バックグラウンド)測定が想定されていたこと、
 ・当初、「被験者の着衣表面のBG測定値」が用いられ、それは不適切とされたこと
を示しています。なお、「個別のBG値」とはどのような測定によるもので、具体的な数値はいくらであるのか、明らかにされる必要があります。

 今中氏の測定の詳細については、『科学』2011年6月号に報告記事を掲載しております(同封の資料C)。今中氏の測定は2011年3月28日の夕刻(初期被ばく調査とほぼ同時期)で、ALOKA 製サーベイメータPDR-101により、飯舘村役場前で6.5μSv/h、コンクリート製の役場庁舎内で0.5μSv/hでした。(なお、今中氏の報告が貴重であるのは、同時に土壌サンプルを採取し、沈着した短寿命核種の実測値を得ていて、より精密な被ばく計算を可能にしている点にあります。)

 東京電力福島第一原子力発電所事故による、広大かつ深甚な放射能汚染事件の被害を国民は被り、事件はなお継続中です。事実と論理にもとづく科学者・専門家の評価と行政の判断が切に求められています。
 ここで付言しておきたいのは、第2回会議での委員らのご発言を受けて、国民から、委員の資質や会議のあり方そのものに対して、つよい批判と疑念の声が挙がっていることです。そうした声のなかには、「議論の内容がこれまでに明らかにされた事実関係をふまえておらず、会議に値しないので、解散すべきである」、「中村尚司委員は委員としての資質に欠けている」という声がございますので、あえて申し添えます。
 これらの意見の背景についてご説明申し上げます。

 中村委員と長瀧座長は第2回会議での、衣服の上からバックグラウンドが測定されていなかったかどうかの議論の中で、次のように発言されました:

中村委員 ふつうはですね、ふつうこういう放射線測定するときは、必ずその、表面を汚染していないかどうかは確認するのがふつうなんですね。それが常識ですから、それはたぶんしておられたと。それで汚れていないことを確認してそういうこと。これはあの、放射線測定をやる人にとってはもう常識ですから。こういう非常にあの、混乱している状況でも、それはやっておられると、私は。
長瀧座長 ま私はその、ふつう、ふつう、人がやるとすれば、洋服の上からですね、ゴミのあるのを測って、付着物があるのをふくらんだり(ママ)するという、ありえないと思うんですけれども。
(声が重なる。)
中村委員 …やっておられる方は専門家…

 事実として、前出の原子力安全委員会の文書が示しているとおり、「着衣表面」でバックグラウンドは測定されていました。中村委員と長瀧座長の発言は、初期被ばく測定の実際の経緯についてご存じなく、また、初期被ばく調査について原子力安全委員会がまとめた上述の文書をご存じない、ということを明白に示しています。

 中村委員が「常識」「専門家」といわれることについても、つよい疑問の声が挙がっています。同封資料Dの本誌掲載記事(2012年10月号、2012年3月号より再掲載)にあるように、中村委員は2011年7月8日付の自治体への助言「東葛6市第1・2 回空間放射線量測定結果に基づく見解」において、基本的事実の誤認や基本知識の欠如を示す発言をなされています。この助言は自治体に対してなされたものであり、影響は深刻といわねばならない事態と考えられます。

 前述の原子力安全委員会文書は、甲状腺被ばく量計算について、驚愕すべき変遷を記録しています。これらのことが、日本における「専門家」の「常識」とどのような関係にあるのか、心の底からの疑念と怒りを国民が感じるのは、当然のことといわねばならないでしょう。
 2011年3月23日付で、原子力安全委員会緊急助言組織および放射線医学総合研究所の名において発出された文書では、
「正味値が1.0μSv/hの時、甲状腺残留放射能は約22kBqである。これは1歳児の場合であり……即ち、安全方向である。……正味値が2.0μSv/h以下であれば、問題となるレベルではないと答えて良い」(強調引用者)
と書かれてありました。しかし3月25日に、
「本測定は、バックグラウンドが0.2μSv/h以下の場所で行うこと」、
「バックグラウンドが0.2μSv/hを超える場合、有意な測定は困難である」、
「正味値が0.2μSv/h以下であれば、問題となるレベルではないと答えて良い」(強調引用者)
に改訂されたのです(この改訂版が第2回資料1-1-2です)。つまり、スクリーニングレベルを当初は10倍高く示していました。そして実際に、3月24日に山木屋で2.0μSv/hを超えるバックグラウンドのなか、川俣町保健センターで0.2μSv/hを超えるバックグラウンドのなかで測定され、その測定値一覧が残されています。そして、
「バックグラウンドと大差なく……問題となるレベルではない」
と結論づけられたのです。
 さらに、3月25日のスクリーニングレベルの修正を受けた、川俣町での2回目の検査についてのメモでは、
「・……前回(24日)実施した方も歓迎するとしてアナウンス。
 ・前回の調査につき、不正確であったなどとは言わない。」
とし、調査を修正するのではなく、あくまで自主参加に任せる態度を示していました。
 さらにまた、4月3日付のERC原子力被災者生活支援チーム医療班から原子力安全委員会への照会においては、
「本件(引用者注:放射性ヨウ素半減期を考慮してスクリーニングレベルを0.2μSv/hからさらに精密に変更する可能性)について指摘を受けた場合、対外的に説明する際には、放射性ヨウ素の半減期を考慮した上で等価線量を計算したとしても問題となる値を示した者はいなかったことを説明する必要があり」
と書かれています。具体的な測定・シミュレーション・数値から発想されず、問題がないという結論を先取して発想されていたことがうかがわれます。
 原子力安全委員会は4月7日に調査委員から、「小児甲状腺被ばくのモニタリングにおけるシンチレーションサーベイメータ正味値0.2μSv/hと甲状腺等価線量100mSvとの関係」の資料提供を受けており、そこには、
「甲状腺部にI-131が4400Bq存在していた時に、その正味値(=実測値-バックグラウンド値)が0.2μSv/hとなる関係であることが分かりました。」
「例えば、12日間I-131を摂取し続けた1歳児の甲状腺部に4400Bq存在していたとすると、その時の等価線量は1×102mSvとなります。」
とあります。これらの数値は、前出の数値と比して、極めて深刻な対照をなしているといわざるをえません。

 なお、資料Bの文責者山田裕司氏は、放射線医学総合研究所に所属しています。第2回会議において、放射線医学総合研究所から出席した委員・参加者から、上述の経緯、ならびにバックグラウンドについての明確な説明がなかったことに対しても、不審の声が挙がっております。
 また、上述の経緯に対する事務局の認識を問い、その姿勢を疑うつよい声が挙がっています。
 以上のようなことから、会議を解散すべきであるという声を含み、根本的な疑問が発せられていることをお知らせ申し上げます。