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Latina_tan
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日本語で「プラトン」として知られるあの方は、英語だと Plato です。nがないですね。あの方のお名前はギリシア語です。ギリシア語ではPlatonという形です。ラテン語は… Plato なんです。はい、ラテン語がやりました。
2014-01-22 23:26:48
やりましたというか、「なりました」というか、「なっちゃいました」というか…。 ラテン語にはこうした、「ホントは -n で終わってるけど n が消えて見えるよ!」というケースが少なくありません。
2014-01-22 23:27:38
皆さんよくご存知の nation や station, leon なんていう言葉も、ラテン語では natio, statio, leo といいます。
2014-01-22 23:29:24
「あれ、じゃあ、最後のエヌはどこで加わったの? 現代イタリア語? フランス語? それとも中世の英語…?」 いいえ、すいません。それもラテン語です。
2014-01-22 23:30:11
leo という言葉を例に挙げると、主格「ライオンが」は leo ですが、それ以降の格になると、 leonis, leone, leoni, leonem, leone と変化してまいります。nが入ってるんですー。
2014-01-22 23:32:02
「主格だけ-nが落ちる」というのはよくあることですが、こういう単語がイタリア語やフランス語に自然に継承されていった場合、nazione, nation など、n のついた形で継承されます。それは何故か?
2014-01-22 23:33:35
ラテン語たんのこのツイートですが、逆もまた然りです。 有名な著述家・弁論家・政治家の名前は"Κικέρων"(キケローン)ですし、 有名なローマ皇帝の名前は"Νέρων"(ネローン)です。 主格で落ちているはずの"n"("ν")をギリシア語は勝手に補っています…
2014-01-22 23:34:20
たいがいにおいて、「モノの名前」というのは生活上、「対格(目的格)」で出てきます。考えてもみてください、電動で動く機械もない時代、無生物は基本的に動きません。「机が」と動作主体になるよりも、「机を」と目的語にすることのほうが多かろうなー、とは思えます。
2014-01-22 23:36:25
文法書を読んで「辞書に載っている基本形は主格」と覚えた私たちと違い、変容してゆくラテン語をナマで話していた当時の人々は、そこまで「主格が絶対」ではなかったのではないか、とも…私見ではありますが、思ってしまいますね。まあ、日本人の子供だって「来る」の前に「来た」を覚えたりしますし。
2014-01-22 23:38:34
で、主格以外の形で -n が復活するのは、先に述べたとおりです。 leo 「ライオンが」 よりも leonem 「ライオンを」の形で脈々と受け継がれ、「語末の -m の消失」します。 leonem > leone ですね。ここまでで終わればイタリア語。
2014-01-22 23:40:13
leonem > leone ときて、最後の母音も消えてしまうのがスペイン語形。leon ですね。 語末のスペルは一緒ですが、発音を更に変化させて鼻母音にしたのがフランス語の lion 。ついでにe > i も起こしています。このまま英語に輸入されたので英語もlionなんですね。
2014-01-22 23:43:42
英語をはじめ、フランススペインイタリア辺りにみられる -tion, -cion, -zione というのもこの形式に従う接尾語でして、決まって女性名詞を作るので、「女性名詞は原則-aで終わる」としているロシア語やポーランド語は、-tsion ではなく -tsja になってます。
2014-01-22 23:46:11
なお、 natio(n) は、「生まれる nascor」という動詞に -tio をつけて派生させたものでして、「生まれ、出生」から、「人種、門地」(日本語でも『高貴な生まれの』なんて言い回しがありますね)、そして出生のルーツを同じくする集団としての「国民」、その集合の「国家」。
2014-01-22 23:49:36
さて、非常に良い質問をいただいております、皮肉とかじゃないですよ、本当に良いのです。語彙の重層性とか、社会言語学たんにつなげられそうな内容になります。
2014-01-22 23:51:21
@Latina_tan 横から失礼します。英語ではratioもrationもどちらも存在する(かつどちらも同語源ですよね?)のですが、ここでの継承はどのように起こったのでしょうか?ご教示頂けると嬉しいです、よろしくお願いします。
2014-01-22 23:38:50
結論から言えば、 ration のほうは長い年月を経て、ラテン語からフランス語を通って英語にやってきた、「正攻法でやってきた単語」です。 ラテン語の reor 「計算する」から、 ratus 「計算された」、ratio(n) 「計算された結果」 という道をたどって…
2014-01-22 23:56:20
ratio(n) は 対格の rationem で継承され、 rationem > ratione > ration とフランス語のなかで姿を変え、英語にたどり着きます。計算された「量」という意味ですね。
2014-01-22 23:57:16
しかし一方で、ratio という単語があります。こちらはいわば、歴史を飛びこえて直接やってきた、「直輸入モノ」です。 「比率」を示す用語として――こんな単語、市井の民はそうそう必要としないですから、学者さんが――ラテン語からじかに持ってきたのです。
2014-01-22 23:59:19