日米の戦没者慰霊のありようの違いについて

「個々の英霊」を祀る靖国神社に詣でる日本人と「無名戦士の墓」アーリントン墓地を尊ぶアメリカ人の視点の違いについて。
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OGAWA Kandai @grossherzigkeit

以前、全日本南北戦争フォーラムの会報に書評を書いた本なんだが、『 アメリカは戦争をこう記憶する』 http://t.co/SVeA4cwBEB … は、ちと靖国神社をめぐって日米間がガタガタしてる今、この問題をきちんと整理して考えてみたい人にはかなりオススメかと。

2014-01-25 23:40:30
OGAWA Kandai @grossherzigkeit

『アメリカは戦争をこう記憶する』は名の通り、独立戦争以来のアメリカにおける戦没者慰霊のあり方を解説していく本で、政治思想の本でも、ましてや靖国神社に関する論評も一切ないが、アーリントンはじめ、アメリカの戦没者慰霊に対する考え方は日本の「靖国式」とは非常に違うことが一読して分かる。

2014-01-25 23:43:54
OGAWA Kandai @grossherzigkeit

これは当方自身がアーリントン墓地に行って感じたことだが、アーリントンの核はあくまで「無名兵士の墓」であり、周囲に広がる個々の軍人墓地地域は、「オマケ」までとは言わないが、本当にその親族や戦史マニアみたいな人しか参拝をしていない。

2014-01-25 23:46:18
OGAWA Kandai @grossherzigkeit

この辺、「個々の英霊」が眠る靖国神社にばっかり人が集まり、「無名戦士の墓」である千鳥ヶ淵がガラーンとしている日本の状況とは真反対で、靖国とアーリントンは、決して世間で言われるような、単純な比較対象物として並べていいものではないと個人的に感じている。

2014-01-25 23:48:41
OGAWA Kandai @grossherzigkeit

アーリントンの「無名戦士の墓」がどのようにできたのかの事情は前掲書を読んでもらうのが一番だが、当方がそこから感じた「アメリカ人の考えるあるべき戦没者慰霊」の姿は、本当に靖国とは大きく異なる。アメリカ人は「個々の名前がついた戦没者」をやたら顕彰することに、なにかためらいがあるのだ。

2014-01-25 23:51:54
OGAWA Kandai @grossherzigkeit

非常に興味深い事実として、アメリカ人は独立戦争直後、個々の軍事的英雄や政治家の銅像などを記念碑として建てることを猛然拒否した。理由は「そのようなものを建てると個人崇拝が生まれ、独裁者が現れて、アメリカがイギリスのような圧制国家になってしまう」というものだった。

2014-01-25 23:54:25
OGAWA Kandai @grossherzigkeit

よって独立戦争から南北戦争くらいまで、アメリカにおける戦争の記念碑とは、ほとんど「オベリスク」と呼ばれる細長い四角錐のような石柱なのである。何の個人の名も現れない。南北戦争以降になるとポツポツ人間の像も出てくるが、それも多くは無名の兵隊像で、個々の将軍などの像は少なかった。

2014-01-25 23:56:36
OGAWA Kandai @grossherzigkeit

このあたりが、アーリントンの核はあくまで「無名戦士の墓」であり、実は個々の軍人墓地ではないという事情の裏付けなんじゃないのかと、当方は前掲書を読みながら思った。前掲書にそういう考察はほぼ書いてないのだが、それは逆に「あまりにアメリカ人にとってそれが常識的過ぎるから」ではないかと。

2014-01-25 23:59:51
OGAWA Kandai @grossherzigkeit

そう考えると、日本人があまりにも「A級戦犯」をはじめとする、「個々の英霊」を祀る靖国神社にこだわる姿勢は、「個々の戦死者より無名戦士を尊ぶアメリカ人」からは、何かすさまじく悪辣な軍事独裁主義者の行為のように見えてしまうのかもしれない、と。

2014-01-26 00:04:21
OGAWA Kandai @grossherzigkeit

無論それはアメリカ人があまりに日本の事情を知らないからだが、それと同様に日本人もアメリカを知らない。さっき書いたように、アーリントンは、実は靖国と対比できるものではないような気がするし、ましてやリー将軍の顕彰は奴隷制の擁護ではない(これは以前に詳しく書いた)。

2014-01-26 00:06:05