『戦場のメリークリスマス』を分析しよう―坂本龍一の作曲技法
- ElementaryGard
- 18429
- 6
- 1
- 81
http://t.co/oiPBhRsaFL これも名曲『メリークリスマス・ミスターローレンス』。『シェルスカ』と同じくこの曲も、右手と左手が異なる調で音を奏でていることに気がついた方、世界に何人いるでしょうか。おそらく作曲者本人が気がついていない。
2014-02-01 17:27:27分析のために例によってイ短調に移調して語りますね。原曲は変ニ長調。D♭メジャーともいいますが。
2014-02-01 17:29:46導入部の旋律は♪ミレミラミレミレミラミレ♪ いちいち書き出すと面倒なので以下省略。これ実はイ短調(=ハ長調)ではなく二短調(=へ長調)なのですよ。♪シラシミシラシラシミシラ♪ 右手は二短調(=へ長調)で左手はイ短調(=ハ長調)。『戦メリ』と同じ仕掛けです。
2014-02-01 17:34:59あの超有名な旋律♪レミレラレ、レミレミソミ、レミレラド♪も、実は♪ラシラミラ、ラシラシレシ、ラシラミソ♪なんですね。これ指摘するのひょっとして私が世界初?
2014-02-01 17:39:26この曲、途中でハ長調からへ長調に変わって♪ミレミレ、ミッミ、ミレミレ、ミレド♪と音がなる(http://t.co/oiPBhRsaFLの1:58のところから)。ここ、ハ長調で考えると♪ラソラソ、ラッラ、ラソラソ、ラソファ♪
2014-02-01 18:03:39念を押しておくとこの曲は本当は変ニ長調です。分析にあたってハ長調に移調して音を呼称しております。
2014-02-01 18:04:40この曲、出だしからずっと左手はハ長調で、右手はニ長調を維持してきました。ただ一瞬「シ」(ハ長調)が右手で鳴ってしまう箇所があります。ニ長調では「ファ♯」だから本来鳴らない音なのですが鳴ってしまう。(続く)
2014-02-01 18:11:10これは和声(左手)がミm、つまりミ・ソ・シと縦に連なるので、その「シ」が「うっかり」旋律(右手)に混じってしまった、と理屈を付けることで、右手はへ長調であるとする右手国の主張は維持されるわけです。
2014-02-01 18:15:08右手と左手が複調でせめぎあい、ときおり左手が右手にちょっかいを出してくる。そんな関係で進んでいたところに、転調が来る(http://t.co/oiPBhRsaFL の1:58のところから)。はっきりとへ長調。つまりこのときは左手が右手に屈服しているのです。
2014-02-01 18:19:02それが2:16のコンマ数秒前で、左手が右手から主導権を取り戻しにかかる。右手はへ長調で歌い続けるけれど、左手はこのときイ短調(=ハ長調)ならぬイ長調に切り替わっており、それがさらにイ短調に切り替わって2:22であの超有名旋律部に戻る。右手と左手のせめぎあい状態に戻るのです。
2014-02-01 18:28:29右手が左手を完全に乗っ取ってしまうものの、途中で左手が謀反を起こして再独立し、再び右手にちょっかいを出す関係に戻るまでの部分をハ長調(=イ短調)表記した楽譜(というか簡略楽譜)があるので紹介しておきます。 http://t.co/Nq4U7dAtjp
2014-02-01 18:48:55「複調」をキーワードに坂本龍一の楽曲に切り込んだものを私は見たことがありません。ご本人がNHKでときどきやっている『スコラ 音楽の学校』で『戦メリ』を解題していたときも、不十分なものに留まっていました。http://t.co/pnjeRQcFAb 作曲者本人がわかっていない。
2014-02-01 18:59:50ふたつの調がせめぎあう美が堪能できる坂本の曲としては、もうひとつあります。『パースぺクティヴ』。YMO時代の終期の曲です。http://t.co/uGV7X2MgQf これは後日改めて分析しますね。
2014-02-01 19:00:33あ、私が「右手」という場合、原則として「旋律」のことだとご理解ください。右手で和声も付けることがあっても、その和声は「左手」として考えます。そのほうが比喩表現がラクだから。
2014-02-01 19:06:16