くみかおる、『星の王子さま』を語る

フランス語の時制について、私なりに考えを整理したくなったので『星の王子さま』を題材に語ってみます。
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It happens sometimes @ElementaryGard

『星の王子さま』の第一章原文。http://t.co/IOSEOBJV1y きちんと読んだのはおとなになってから。この出だしに既視感があった。太宰の匂い。子どもの頃、枕カバーは装飾品だと思っていたら、実用品であることを後で知って人間のつましさに暗然とした、というあそこ。

2014-02-03 13:49:50
It happens sometimes @ElementaryGard

"Lorsque J'avais six ans J'ai vu, une fois, une maginifique image"(六つのとき、ある強烈な挿絵をぼくは目にしたことがある) 時制に注目。avaisは半過去形で、ai vuは複合過去形。

2014-02-03 13:54:34
It happens sometimes @ElementaryGard

フランス語の時制は英語より凝っているので慣れるまで時間がかかる。ただこの場合は前者がbe動詞の過去形、後者が動詞の過去形と思えば飲み込めます。無論本当は違うけどここは感覚的に。

2014-02-03 13:56:45
It happens sometimes @ElementaryGard

不安になったので文法書を確認。半過去形は、過去の進行形、状態、習慣を表すとある。この説明はどうだろう。私なら「英語でいうbe動詞、状態動詞にあたる」とするのですけど。

2014-02-03 14:14:39
It happens sometimes @ElementaryGard

さてこの大庭葉蔵くん、ではなくて「Je」さんが六つのときに出会った挿絵とはどうなのかというと、このページのhttp://t.co/IOSEOBJV1y右上のようなのだったそうです。かなり脚色入ってるようですが。

2014-02-03 14:20:43
It happens sometimes @ElementaryGard

この第一章の時制は、すべて半過去か複合過去形。

2014-02-03 14:22:42
It happens sometimes @ElementaryGard

あ、現在形も混じってる。読者に呼びかけるときはそうです。

2014-02-03 14:25:03
It happens sometimes @ElementaryGard

「六歳のとき本を読んだ。『本当のお話』という題で、原生林についてだった。」 ところでこのページではla Forêt Viergeと、大文字で表記されていますね。おかしいな。私の持っている本では小文字なんだけど。冠詞がついているのは「その原生林」ではなく「原生林というもの」の意。

2014-02-03 14:35:54
It happens sometimes @ElementaryGard

"Les serpants boas avalent leur proie tout entière, sans la mâcher." ここ、ある訳書では「ボア大蛇は獲物を丸呑みするのでいちいち噛み砕かない」となっていましたが、これは△。「原生林に生息するボア大蛇は」と訳す。

2014-02-03 14:44:16
It happens sometimes @ElementaryGard

なぜなら冠詞lesが付いているから。複数形です。「原生林には大蛇がたくさん生息していて、そこの大蛇どもは」のニュアンス。それをあっさり「ボア大蛇は」と訳してはイメージ喚起力が半減してしまいます。

2014-02-03 14:47:11
It happens sometimes @ElementaryGard

「Je」くん(当時六歳)は想像を膨らませ、象を丸呑みした大蛇の絵を描いてみた。まわりの大人たちに見せた。「帽子じゃん」と言われてしまう。誰も怖がらない。そこで今度は解剖図を描いた。「つまらないことに精を出さず、もっと役に立つことを習いな。算数とか地理とか」と言われた。

2014-02-03 14:52:15
It happens sometimes @ElementaryGard

第二章です。http://t.co/kE41h2iB7O 単独飛行中にエンジン不調で砂漠に不時着したJe氏。修理せねば生きては帰れない。焦る。そこにひょっこり現れたのが「星の王子様」でした。原文はLe Petit Princeだから「幼い王子」ですね。

2014-02-03 14:56:33
It happens sometimes @ElementaryGard

砂漠のどまんなかで、いきなり男の子がそばに立っている。Je氏は度肝を抜かれる。"Je regardai donc cette apparition avec des yeux tout ronds d'étonnement."(すっかり目を丸くしてこの闖入者をぼくは眺めた)

2014-02-03 15:04:21
It happens sometimes @ElementaryGard

ここで動詞regardaiが単純過去形になっていることに注目。単純過去形は英語にはない時制なので説明しにくい。小説時制と呼ばれることもあります。映画のなかで誰かがお話を始めて、やがてそのお話のなかの世界にカットが切り替わる・・・あの感覚です。回想シーン時制。

2014-02-03 15:07:03
It happens sometimes @ElementaryGard

この文に続く文では、語り手「Je」が読者を意識して呼びかける形式なので再び現在形に戻る。"N'oubliez pas"(改めて念押しするけど)

2014-02-03 15:09:54
It happens sometimes @ElementaryGard

"je me trouvais à mille milles de toute région habitée."(ぼくはこのとき、人間が誰も暮らしていない辺境のまた辺境にいたんだ) ここは半過去形。英語でいえばbe動詞や状態動詞(haveとか)の過去形とほぼ同じ。

2014-02-03 15:13:52
It happens sometimes @ElementaryGard

私の大好きな映画『アマデウス』で説明します。主人公がモーツァルトの生楽譜を見る機会があって、その完成度に驚愕。 http://t.co/06B0g3mEso

2014-02-03 15:19:49
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It happens sometimes @ElementaryGard

このシーンはですね、回想シーンなんですよ。この後、このシーンを回想している姿に切り替わる。 http://t.co/WMer2l4g4W

2014-02-03 15:21:16
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It happens sometimes @ElementaryGard

この映画、基本的に回想シーンを主体に進んでいきます。『タイタニック』もそうでしたね。で、ときどきそこに回想する本人のナレーションが挟まる。「楽譜を見て驚嘆した。一箇所の書き直しもない。頭の中で既に完成していて、それをただ書き綴っているのだモーツァルトは!」

2014-02-03 15:25:45
It happens sometimes @ElementaryGard

『星の王子さま』も同じ構成です。砂漠から生還した「Je」氏が、かなり経ってから当時のある体験を語り出す。そのうち回想シーンに切り替わって、それが物語の主体になる。途中で単純過去形に時制が変わるのは、回想シーンに切り替わったからなのです。

2014-02-03 15:29:55
It happens sometimes @ElementaryGard

たまに「現在」に戻る。『アマデウス』でいえば「現在」とは、サリエリおじいちゃんが熱弁してる時のこと。

2014-02-03 15:34:34
It happens sometimes @ElementaryGard

第三章。http://t.co/DklgHKxmWU 時制が入り乱れる。冒頭では"Il me fallut longtemps pour comprehendre d'où it venait."(この子がどこからやって来たのか把握するのには時間がかかった) 単純過去形。

2014-02-03 15:46:37
It happens sometimes @ElementaryGard

単純過去形は、映画でいえば回想シーン。この文の最後に出てくる動詞は半過去形ですがなぜそうかはここでは省略します。語りたいもっと大切なことがあるから。

2014-02-03 15:48:11
It happens sometimes @ElementaryGard

"Le Petit Prince, qui me posait beaucoup de questions, ne samblait jamais entendre les miennes."(王子様はぼくに質問はどっさりするけれど、ぼくの話にはほとんど聞く耳持たずだったから)

2014-02-03 15:53:01